「社会全体への重い宿題としての映画」子どもたちをよろしく t.toraさんの映画レビュー(感想・評価)
社会全体への重い宿題としての映画
見ていると辛くなる映画だった。子どものいじめ、親の貧困、ギャンブル依存、性的虐待・・など、どれも他人事とみなして自分は関わりたくないし、見て見ぬふりをしてしまうことばかりだ。そんなつらい現実がリアルに描写されるので全編にわたって暗い。
貧しい人やいじめられている人を描く映画には、そんな人たちを救おうとする優しい人や、勇気のある人が現れることを期待してしまうが、この映画ではドラマ金八先生のような頼れる人は現れず、なすすべもなく最後に悲劇を迎えてしまう。それに、中学生のいじめを取り上げながら、学校も先生も出てこない。企画者の寺脇氏によれば、いじめの問題を学校だけの責任にするのではなく、親とか地域とか社会全体で解決していくべきであり、観客一人一人にあなたならどうするという問いかけであるという。
ただ、そこまで深読みできる観客がどれだけいるか疑問である。いじめに関して言えば、むしろ学校も登場させて、例えば先生が「学校だけに責任を負わせないでください」とか率直に語らせれば、企画者と監督の真意が観客にストレートに伝わったのではないかと思う。
ちなみに群馬県桐生市で撮影されたそうだが、桐生市の地理を知っている私には、なじみ深い場面が多かった。街角のシーン、上毛電鉄の西桐生駅、渡良瀬川の橋、動物園、高台から見下ろす町並みなど、桐生の特徴をうまくとらえており、とても好ましい絵作りだった。
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