「プロットのアイデアに頼りすぎ」グッドライアー 偽りのゲーム 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
プロットのアイデアに頼りすぎ
オスカー女優のヘレン・ミレンが出るというだけで、簡単な詐欺師物ではないとは思っていた。そもそも原題が「The Good Lier」である。詐欺師の話なら、長澤まさみ主演の邦画と同じく「Confidence Man」でなければならない。しかしタイトルはGood Lierである。ということはつまり、この物語はコンマン(詐欺師)に対峙するライヤー(うそつき)という構図であることが解る。であれば、結末も凡その予想がついてしまう。邦題に「偽りのゲーム」という副題をつけてしまったから、もはやタイトルがネタバレさせている映画なのである。
従って興味はイアン・マッケラン演じるロイとの掛け合いがどれほどかということになるのだが、これは両者とも流石にベテランの名優だけあって、台詞のひとつひとつに裏の意味を含ませているようで、それなりに面白い。暫く観ているうちに、登場人物が嘘ばかりを言い合っているという前提で観客に鑑賞させるためのタイトルであることが解る。おもしろい試みではある。
気になるのは登場人物の年齢である。通貨がポンドであり、インターネット・バンキングが一般に浸透していたりスマートフォンを持っていたりするということは舞台は現代のイギリスということになるが、75年ちょっと前の大戦時に20歳前後だとすれば老人たちの年齢は95歳くらいとなる。どう計算しても辻褄が合わないが、これも作品のネタなのだろうか。
疑問を抱かれたときのロイの咄嗟の言い訳も微妙で、詐欺師らしく見事に切り抜けるとまではいかなかった。またベティの動機に関する伏線がひとつもないから、ラストシーンの唐突感は否めない。まさに詐欺師が下手な言い訳をしているようなラストである。
プロットのアイデアに頼りすぎた作品で、ネタバレを前提にした名優二人の台詞のやり取りは楽しめたものの、人物への掘り下げがないから登場人物の誰にも感情移入できず、なんとなく鑑賞してしまったというのが正直な感想である。★ふたつが精一杯だ。