「米国視点の太平洋戦争を知れる貴重な映画」ミッドウェイ 臥龍さんの映画レビュー(感想・評価)
米国視点の太平洋戦争を知れる貴重な映画
米国目線の真珠湾攻撃、ミッドウェイ海戦を描いた映画…ではあるが、決して『米国こそが正義』『悪(日本)を倒した米国最高!』という単調な内容ではなく、日本側の言い分、たとえば日本が石油を絶たれたことで追い詰められ、やむなく米国に喧嘩を売らざるを得なかった事情などについても触れられているし、冷静沈着で極めて統制の取れた日本軍の強さなどもしっかり描かれている。
太平洋戦争というと、とかく最新鋭の装備を揃え、圧倒的な軍事力を持つアメリカの前に、前時代的な装備の日本が成すすべなく踏み潰された、というイメージを持たれがちだが、米国にとって日本はそう容易い相手ではなかった、ということがこの映画からはよく分かる。
それどころか日本の海軍は物量的には圧倒的であり、質も米国と同等かそれ以上、かつ、日本側の軍隊は極めて訓練が行き届き、統制も取れていた。対する米国は真珠湾攻撃により主力の軍艦や将兵を数多く失い、経験不足の未熟な人員をかき集めた寄せ集めに近い集団だった。
そんな太平洋戦争の勝敗を左右したのは情報戦であり、日本はそこで大きく後れを取ったことで、重要な海上戦で致命的な敗戦を喫してしまう。米国は断片的ながら日本側の暗号解読に成功し、日本の作戦は米国側にほぼ筒抜けだった。それがミッドウェイ海戦の勝敗の大きな分岐点となり、ミッドウェイの勝利により米国は一気に日本本土までなだれ込むことができた。
鑑賞前にレビューを見ると、『アメリカ寄りでけしからん!』というナショナリストの感情論や、『この軍艦の配置はおかしい』というミリオタの能書きレビューも散見されて少々不安だったが、確かに映画だから多少なりとも脚色はあるし、米国寄りにもなってはいるが、日本人や日本の戦いぶりにも少なからず敬意が払われていたし、個人的にはそれほど極端な脚色や偏りがあるとは思えなかった。
映像は最高にリアルで迫力があるし、日米司令官の頭脳戦は見応えがあったし、後半の迫力ある戦闘シーンはエンタメとして純粋に楽しめた。『映画はエンタメなんだからそれでよくね?』って思う。
太平洋戦争なんてもう70年以上前の話なわけで、完全な資料が残っているわけでもなければ、それぞれの国が自分に都合のいいよう記録を残すことも少なからずあるわけだし、100%真実だけで映画を構成しろ、なんてそもそも無理難題なんだから。バランス取りたいなら、米国視点と日本視点の映画を両方見ればいい。