劇場公開日 2020年1月17日

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「他人ごとではない」リチャード・ジュエル 祐吉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0他人ごとではない

2019年12月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

冤罪事件を“ヒーロー像”的なものをも削ぎ落し描いたイーストウッド監督の野心作。
同じ冤罪を描いた『トゥルー・クライム 』というより、『ハドソン川の奇跡』で描いたテーマを深堀している印象(そういえば、あの作品の原題“Sully”は主人公のニックネームだった)。権力を行使する者、メディアの真実ではなく"根拠のない疑惑”への関心。権力は生活を奪い、メディアの関心は大衆の興味を煽ることにより、無実の容疑者を追い詰めていく。こうした構図は日本も経験していて「松本サリン事件」(1994年)などは、その最たるものであり、他人事として観てはいけないと戒められる。

面白い映画だが、個人的にイーストウッド監督には事実を描いた作品より、創作を観たい。事実を映画にするにしても、ベッタリ(?)と脚色した作品を。事実が創作を越えてきたのか、よっぽど監督がこうしたテーマに興味があるのか。

祐吉