「リオ五輪で金、の映像がないのが物足りない」オーバー・ザ・リミット 新体操の女王マムーンの軌跡 AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)
リオ五輪で金、の映像がないのが物足りない
監督のマルタ・プルスはポーランド出身のまだ30代前半の若い女性。自身が新体操とコンテンポラリーダンスの経験者だそうで、なるほど新体操選手の動きと表現をとらえるカメラワークが的確だ。さらに、日本ならモラハラで親からクレームが付きそうな罵詈雑言を選手に浴びせてスパルタ指導するロシアの強烈なコーチ、イリーナ・ヴィネルから撮影許可を取り付け、さらに彼女の汚い言葉まで映画に収めることを納得させた交渉力、突破力にも感心する。
ただ惜しむらくは――おそらく監督のせいではなく、権利にがめついIOCが試合映像の使用を許可しなかったからだと推測するが――、作品のハイライトとなるべきマムーンのリオ・オリンピックでの演技が欠けている。それまでの国際大会での本番はたびたび映るのに。女王になるカタルシスが映像で提示されないので、マムーンが精神的に追い詰められる苦しさが残り、欝々とした印象で終わった気がした。
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