劇場公開日 2021年2月11日

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「予告詐欺だが面白い。特殊なミステリ映画」ファーストラヴ サブレさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5予告詐欺だが面白い。特殊なミステリ映画

2021年2月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

映画の予告では、父親を殺害した女子大生が「動機はそちらで考えてください」と言い放つサイコサスペンスであるかのように描かれていた。が、その女子大生環奈と面会してすぐに「動機はそちらで考えてください…なんて私そんな挑発的な言い方してません。本当にわからないんです」とちゃぶ台返しを食らう。
予告では二転三転する供述、思い出してはいけない初恋の記憶、などとも宣伝されていたが、とてもではないが間違っていないとは言い難い。というか、この映画の紹介としては全く間違っている。

この映画はある種の推理映画であり、カウンセリングそのものである。人間は自分自身のことがよくわからない。だから無意識に嘘をつくことも、無自覚に嘘をつくこともある。その理由の根本がどこにあるのか探る、推理していくのがこの映画の特色だ。
探偵役は公認心理士の由紀。彼女が解き明かすべき真実は「犯罪の真実」というよりも「目の前にいる傷ついた少女の本心」。その本心は本人すらわかっていない。気づいていない。だから平気で噓をつく。嘘をついていることすらも自覚せずに。
由紀は環奈に翻弄されるものの、それは供述が二転三転しているからではなく彼女が”一貫して”嘘をついていたからだ。父を殺した動機がわからないのも、自分が何をしたのか何が起こったのかわからなかったからだ。その点では「姑獲鳥の夏」に似ているかもしれない。

ただ、由紀が環奈の隠された心に気づくまで彼女自身の過去話が挟まるのだが、それが長い上に物語には関係ないのが大きなマイナスだった。だが裁判シーンでフラッシュバックのように挟まる由紀のトラウマにドキッとしたのも事実。いい演出だった。弁護士との過去話をもうすこし削ってくれれば…。

サブレ