「俳優○映像○シナリオが……」サイレント・トーキョー Berthさんの映画レビュー(感想・評価)
俳優○映像○シナリオが……
日本人の危機感の薄さをテーマにしているが、シナリオがすでに平和に浸りきった人間側が書いているシナリオなのでどうしても妄想の域を脱していない。
例として作中では戦争帰還者が負うPTSD(心的外傷後ストレス障害)を扱っているがその体験がとんでもなくズレている。
このPTSDを取り扱っている映画で名作アメリカンスナイパーがあるので比較してみると
・サイレントトウキョー
地雷撤去ボランティア中に自衛隊を戦争当事国と勘違いした子供が自衛隊を巻き込もうと自爆テロを行われた。善意できた男性に叩きつけられた戦争の憎悪に苦悩する自衛隊員。作中の言動から一般人を巻き込んだ責任等を追求されているかもしれない。
・アメリカンスナイパー
軍が進行している進路上に女性と少年が現れ、対戦車用の爆弾を投げようとするが一歩間違えば民間人殺害の刑罰を受けるプレッシャーと仲間を守らなければならない重圧、決意して発砲するも爆弾が投げられた緊張感。進行中の味方に届かずひと安心するも女性と子供を射殺してしまった事へ苦悩する主人公。
この両者はそれらを何でもない日常を送る男性が非日常にいたという非現実感に悩まされる事になるがサイレントトウキョーとアメリカンスナイパーでは文字通り体験した世界が違う。
作中の人物はサイレントトウキョーの自衛隊エピソードが戦争と思っているようだがそもそも戦争ですらない。手段が爆弾であっただけで復讐先を間違われた事故であり、アメリカンスナイパーのように人を殺めていないし保身と仲間を天秤にかけることもない。善意だから好かれて当然と戦争で傷ついた国に安易に来てしまったただの世間知らずだ。
作中の人物が首相よりは戦争を知っていると発言しているがこれほど滑稽な言葉はない。戦争すら体験していない人伝てから聞いた者が戦争を語り、爆弾の知識だけ教えられた一般人が首相に話をしたいといっているのだ。
世間知らずな登場人物(キャラクター)があっても、シナリオ作家と監督が世間知らずではダメだと思う。
佐藤浩一さんの行動はミスリードを誘うため?なのか作中では説明ができていないと思う。爆弾の場所と範囲は犯人しか知らないはずなのになぜ息子に教えられたのか、なぜ教えたのか作中では説明できていない。
爆弾の被害も警察の立ち入り禁止区域の設定も被害の逆算したご都合展開に思えるし、ノイズとなる箇所がちらほら……
シナリオ以外の俳優、映像が高レベルであるにも関わらずシナリオで損をしている作品。星2つは俳優と映像スタッフへ