「おもしろいが、ラストがイマイチ…」サイレント・トーキョー おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
おもしろいが、ラストがイマイチ…
冒頭からテンションが上がり、緊張感を維持したまま、テンポよく展開していました。尺の短さも手伝って、駆け抜けるように一気に終幕を迎え、鑑賞後の印象は悪くなかったです。
ストーリーは、首相との対話を求めて東京の各所に爆弾を仕掛けた犯人を追うという、クライムサスペンス。犯人が誰なのかはもちろん、その狙いは何のか、どう決着をつけるのか、最後まで飽きさせない展開で楽しめました。
ネタバレになるので多くは語れませんが、戦争あるいはテロに対して、国家はどうあるべきか、国民は何をなすべきかを考えさせられました。そう思わせる原動力は、圧巻の渋谷爆破シーン!爆破予告に対して、興味本位でお祭り気分で集まる群衆を、爆風が容赦なく吹き飛ばします。目を覆いたくなるようなシーンでありながら、どこかで「自業自得だろ」と考える自分がいました。ただ、もし自分も東京に住んでいたなら、決して行かないと断言できたでしょうか。そう思うと、やはり自分も平和ボケした日本人の一人だと気づかされます。
国際協調の世にあるとともに、近隣諸国との緊張が高まる、今の日本の政府は、確かに難しい舵取りを担っています。何が正解か、無知な自分には知る由もないですが、戦争などという最悪の選択をすることなく、国際問題の平和的解決を望みます。そのためにも、一国民として政治に無関心でいてはいけません。平和は国家から与えられるものではなく、国民自らが創り上げていくものだと強く感じました。
佐藤浩市さんはじめ、石田ゆり子さん、西島秀俊さん、中村倫也さん等、主役を張れる俳優さんが顔を並べ、キャスティングは豪華です。脇を固める、俳優陣も抜かりなく、大作を感じさせる布陣です。
しかし、残念ながら、作品全体の仕上がりとしては、もう一歩といったところでしょうか。犯行の裏にある、犯人の思いや人間関係をもう少し丁寧に描いてくれたらと思わなくもないです。警察側の西島さんや勝地くんにも背景が匂わされていたのでそこも知りたいところです。そういった、作品に奥行きを与えるシーンが描かれれば、さらに犯人の心情に共感でき、作品に込められたメッセージが際立ったのではないかと思います。大切なシーンを間引いた結果、作品のメッセージ性が根底から揺らいでしまったのは残念なところです。