劇場公開日 2020年6月5日

  • 予告編を見る

「【#BlackLivesMatter】」ハリエット ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【#BlackLivesMatter】

2020年9月13日
iPhoneアプリから投稿

大坂なおみさんは、更に強くなった気がする。
前回のトーナメントで、棄権を表明したところ、主催者が彼女の行動に賛同の意を示し、他のスポーツ競技でも中止や延期の動きが広がり、彼女の(彼女は自分の行動は全体からしたらちっぽけといっているが)大きな勇気を世界は評価し、彼女の背中を後押ししたこともあるのだろうか。

ハリエットは、奴隷制度と戦った。大坂なおみさんとは異なる。更に、命がけであったし、後の南軍として敵対する兵士の命を、南北戦争の中で奪ったこともあるだろう。

ただ、映画は、暴力的で凄惨な場面は極力抑えられているように思う。

ハリエットが神々と交信しているように見える場面も実は、白人の度重なる暴力で脳に障害が残ってしまって、幻影や幻聴を見たり聞いたりしていたからというのが後世の分析だ。

僕が興味を持って過去に見聞きした、或いは読んだアメリカの奴隷史は、映画より、もっと残酷で悲惨だったように覚えている。

映画を客観的に、より多くの人たちに見てもらいと思ったから、凄惨な場面を手控えたのだろうか。
暴力を憎むあまり、逆に報復としての暴力を看過しかねないからだろうか。

アメリカの歴史は、この奴隷制度をずっと引きずっている。

それは、#BlackLivesMatterのムーブメントでも明らかだ。

今は簡単にスマホで映像記録が残り拡散するが、昔はもっと酷かったということはないのだろうか。

大坂なおみさんの前のトーナメントの行動に、日本でもSNSの書き込みに、

「アスリートが政治に口を出すな」という書き込みがあった。
この差別は、政治の問題ではなく、人権の問題だ。人間として無知な書き込みだ。

「そんなにアメリカが嫌ならアフリカに帰れ」というのには、アメリカの問題だ、余計なお世話だと言いたくなる。

「黒人である前に日本人として行動しろ」とか、「スポンサー第一だろ」というのもあった。
この問題は国籍の問題ではないだろう。大坂なおみさんは、アメリカで主に育ったが、日本で生まれた日本国籍者であると同時に、人権を考える人間として行動したのだ。
お前のひとつ上を行ってるだけだ。

アメリカの多くの企業は、今、差別と距離を置くどころか、差別に厳しく対抗しようとしている。
アメリカの企業は、トランプの考えているようにアメリカだけで営業活動をしているのではない。
顧客はグローバルに広がっているのだ。

そのなかで、「ムーラン」のように、人権弾圧をする団体や国家に対して謝意を示すようなケースにも、人々は抗議の意を示しているのも、人権の重要性は、差別主義者の理解を超えたところで拡大しているのだ。

日本の差別大好き主義者は、ネットの付け焼き刃ではなく、もっとちゃんと勉強した方がベターだ。諸外国にバカにされる。

ここで。差別主義とさも思想の一部のように書いてしまったが、フランスの思想家で経済学者のジャック・アタリは、差別は、思想などではなく、その人の特徴なのだと言っている。
まさに、その通りだ。

映画は、ちょっと観客を広くターゲットにしすぎて、逆に盛り上がりに欠けるような気がしたが、大坂なおみさんがUSオープンで勝利したので、加点しました。

ワンコ