「またまたタランティーノ監督にやられた」ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド エクステンデッド・カット ジョニーデブさんの映画レビュー(感想・評価)
またまたタランティーノ監督にやられた
ラスト近くになって、シャロン・テートたちの動向が時刻の表示とともに、テレビの再現ドラマ風に展開され、いよいよあの事件の再現かと思いきや、まんまと騙されました。
1969年が舞台で、その当時の映画、映画俳優、ヒットしていたポピュラーミュージック等がふんだんに使われていて、映画好き音楽好きにはたまらない映画でした。多分私位しか感動しなかった場面かもしれないが、映画「ジョアンナ」の看板が出ていたことだ。画面に釘付けになってしまった。日本ではあまりヒットしなかったと思うが、アメリカではそれなりにヒットしていたのかなあと、ちょっと感慨深いものがあった。
レオナルド・ディカプリオ演じる俳優が、以前は大スターだったが現在少し落ちぶれていても、演じることに誇りを持っている生き方が俳優魂が素晴らしかった。それを演じた彼の演技も同時に素晴らしかった。
同時進行で女優のシャロン・テートが出てくるが、シャロン・テート事件をリアルタイムで知る私にとっては、おなかの大きくなったシャロン・テートが残虐に殺されることになるのかなと、いかにもタランティーノ的だなと思いつつ見ていたところ、完全に裏切られてしまった。ただ、いい意味で裏切られたので後味は悪くはない。誰かのレビューに書いてあったけど、タランティーノ監督にとっては、シャロン・テート事件はなかったことにしたかったのかな。つまりシャロン・テートは殺されなかったと、夢であったかのように。
シャロン・テートはよく知らない女優であるが、夫のロマン・ポランスキー、友人のスティーブ・マックイーンやミシェル・フィリップス、ママキャス、ブルース・リー、チャールズ・マンソン等、実際の人物によく似ているのが笑える。
映画の中では、マカロニ・ウェスタンやブルース・リーを馬鹿にしている感じだけれど、多分タランティーノ監督は結構好きだったと思う。
この映画の全ての事をわかっているとは思わないが、すべてのシーンが何らかの意味のある事は確かなようだ。シャロン・テートが書店で夫のプレゼントのために「テス」の初版本を買うシーンがあるが、これは後にポランスキーが「テス」を監督したきっかけとなったかのかもしれない。
一つ注文があるとすれば、殺人 場面のバックで流れていた曲が、ヴァニラ・ファッジの「ユー・キープ・ミー・ハンギング・オン」であったが、できればビートルズの「ヘルター・スケルター」のほうがよかったのではないか。チャールズ・マンソンによれば、この曲が殺人を連想した曲だったと言うことであるので。