劇場公開日 2021年1月29日

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「私が思う坂元裕二の究極のラブストーリー」花束みたいな恋をした アッキーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 私が思う坂元裕二の究極のラブストーリー

2025年5月29日
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公開からもう4年が経過してしまい、これまでも坂元裕二の作品が大好きだったが、今になってようやく見る事ができた。

結論を先に言っていくが、私が思う坂元裕二の究極作だと思う。
この作品に限っては見るタイミングを何度も見送っていき、いつしか見ようと思っての今回であったが、決して「なんでこんな最高な作品を見なかったのだろう」と後悔するのではなく、これからの人生を考え始めた状況下で見たからこそ考えや捉え方、刺さり具合は今初めて見たからこそとてつもなく大きいのだろう。
大豆田とわ子は何周もしてるし、何回見ても飽きない程の面白しさ、素晴らしさそして何よりも人生の勉強ができた。
ただ、こんな最高純度の作品は後にも先にもないかもしれない。こないだのファーストキスも最高な作品であり唯一無二ではあるが、今の状況においての自分と比べたらこっちの方が刺さりまくった。久しぶりの恋、どうやってアプローチすればいいのか、どうやって歩んでいっているのだろうか、どうやって別れてまた次の人生に繋げていっているんだろうか。そう思ったらとんでもなく考えさせられる作品であった。

全くとして今まで想像してたイメージと異なっていた。見ていなかったから当然であるが、もっとラブストーリーをやっていたと思っていた
大学生の良くある恋で社会人になったらそこで終わりです。そう思っていたがそんなじゃなく最初から最後までの流れや展開が究極すぎた。

出会い
物語としての始まりは坂元裕二の作品で良く見られる自分語りやナレーション。この技法が自分が大好きな坂元裕二の世界観である。
坂元裕二の作品に菅田将暉と有村架純が主演であるだけで鬼に金棒だろう。キャラクターのアイデンティティ、常日頃思っていることや考えていることがナレーションとして語られているだけでこの作品への評価及び高精度はとんでもない。そうしてこの2人がとてつもない程に上手く演じていき、冒頭だけでそのキャラクターの性格や惹かれ具合、アイデンティティを知れる機会であるだろう。

出会い
物語の大きな展開となっていく出会いではこれまで同じような価値観を持った2人が交われば上手くいかない訳がない。映画や小説、好きなことなど持っている趣味がとことん被っていき、話がとことんに噛み合っていく。こんな感じで意気投合でき、こうやって結ばれていくんだろうという表現や背景を味わうことができあ
そして3回目のデートまでお互いのナレーションによって相手への思いが語られていき、徐々に歩んでいく。そしてすんなりと好きという気持ちを伝え、2人は付き合っていく。
そこで余計に考えたのは趣味を多く持つことも重要であり、自分の知っていることを出し合うことで会話は盛り上がっていき、上手く進んでいく。それに関してはいくら趣味を持っていようが、今まで思っていたことを素直に出すことができようが、話を簡単に持ち出すことができようが、比較対象で考えて全然まだだなと思っていても全くとして障害や課題にはならない。
だからこそ恋愛することによって自分の好きなものを手放すべきではなく、趣味があるからこそ自分の良さが作りあがっていくだろう。
素直にかつ自然体に自分の良さやアイデンティティを出していけば相手も自ずと乗っていき、会話や距離感は盛り上がっていくのだろう。

愛情
こうして冒頭と出会いで結ばれていった2人は
付き合うことによって互いに好きなライフスタイルになっていき、デートや家での過ごし方、帰りの電車で会えば家までの帰り道にコーヒーを飲みながらあぁだこうだ語り合い、愛は徐々に育まれていく。こんなことを自分もいつしかできるようにしていきたい、恋がしたい、そんなことを多いに思えるような展開や流れであっただろう。そして2人が同棲するようになれば持っている価値観で生活するようになっていき、インテリアや好きな本、映画、漫画、ゲームなどお互いの好きが共有できるようになり、ライフスタイルが構築されていく。これでこそ2人の同棲、恋愛は流石二大俳優による演技は誰もが恋したいなと思える程の完璧なラブストーリーが作られていくのだろうと考える。

すれ違い
絹ちゃんが好きなコラムニストの死や生き方、作品を通じて次第に恋ははじまりではなく
終わりの始まりであるとナレーションで語っていたように次第にすれ違いが生まれていく。
これまで大好きだったものがそうではなくなってしまい、次第に今の生活を保たなければいけない為の就活、そして就職。これは誰もが共感できる様に仕事やライフスタイルの変化によって自然に価値観や趣味も変わってしまっていく
見る前まで想像していた別れ方への流れは大学生だから就活や就職によって別れていくのかと思っていたがそうではない。今の幸せな生活を守る為に仕事をしていきお金を稼ぐ。それはどうしても考え方や進み方が仕事やこれからの人生によって大きく左右されていく。
別れるきっかけは全くとしてどちらが悪いという訳ではない。結果的に5年も付き添ってきた関係はいつしか冷める時期は訪れていき、些細で少しのすれ違いが徐々に大きな違いを生み出してしまうのだろう。そして仕事だからしょうがないという理由、これから結婚という大きな人生のターニングポイントを無理にでも考えていかなければならない状況が自然に時間や価値観が大きくズレていき、別れへの時間へと近づいていく。
私が思うに坂元裕二の作品に共通するものといえば「別れによる学びや気付き」であるだろう。大豆田とわ子、ファーストキス、最高の離婚、カルテットのメインとして描かれるのは愛し合っていた2人の別れが大方物語は始まっていき、その時になってこその「あぁしとけば良かったこうしとけば良かった」、そしてそれまで当たり前に過ごしていた存在の大事さを知り学ぶという表現がとてつもなく多い。それが坂元裕二作品の醍醐味であり圧倒的人気の要因、離婚などはまだまだ先の事であっても、こうなるとは限らなくとも見る者が仮に恋してなくても「こういう人生歩んでいきたい」恋してる人は「こうして今いる恋する人との関係性を見つめ直し、共に歩んでいきたい」と思える人生にとっても恋愛にとっても唯一無二のラブストーリーの教科書であるのだと改めて考える。
ファーストキスは完全に冷めきった離婚当日の夫婦が急な別れによって関係性や出会いをタイムリープによってカンナと駈がまた最初から恋していくという最高な作品であっただろう。
だが、本作品の流れでは良くあるようなすれ違いや別れへの近づき方、そして若い恋人たちのこれからの人生への歩み方となっている為に見ていた若者の共感はこっちの方が大きいだろう。

別れ
再三言うが見る前までの本作品へのイメージは
最終的には別れるがそれまでの愛の歩み方を描いているんだろうと思っていたが、最高な方向に裏切られた。
すれ違いが多くなり、ズレが大きくなっていた2人に別れの日が訪れた。友人の結婚式に2人は出席した際それぞれ友人に「この結婚式が終わったら別れるから」と話していた。
「会話が生まれず、喧嘩にもならない、感情が湧かない、でもどうやって別れたらいいのか分からず、5年も続いてきたけどとにかく今日この結婚式が終わったら別れるから」という演出は幾多あるラブストーリーにおいても傑作シーンとでも言えるだろう。結婚式が終わり、2人だけで別れようとする流れは完璧だった。
まず目の前にあった観覧車に乗って、お互いの価値観やこんなことあったねと振り返っていく
そして告白した時のファミレスで別れ話しをし始めていったが、麦はこの機を逆手に取って
結婚しようと提案していく。それでもこんな良い感情は今日だけでまた明日から戻っていくと断っている絹ちゃん。そんな逼迫した空気の中あるカップルが別の席に訪れた。それは良い感じになっていく最初の2人を連想させる若い男女。最初は好きなバンドの話や次第にどうしてるかな?と惹かれあっていく若者を見て別れる寸前であった2人の心に大きく刺さっていく。
そして涙が止まらずファミレスを出ていく絹ちゃんそして追いかける麦。そうして2人は別れる決心をしたのように最後に抱き合った。
しかし、これに更なる追い込みをかけるように
2人は別れても3ヶ月同棲を続け、昔のような関わりを最後に取り戻したのだった。
あの時こうだったね、あの時こう思ってたよと自然と会話し続ける2人に関係が戻るのではなく別れたカップルではあるが、最高な友人のように最後の時間を楽しくお別れしていったのだっただろう。こんな風に終わるのは最高すぎる別れ方であり、未練が全くない状態で次の人生、次の出会い、そして笑顔で離れていく2人を見てこんなにも最高な終わり方はないだろう
、こんな究極のラブストーリーは後にも先にも生まれないのだと確信してしまった。

そうして最後のシーンは最初に流れた別れて時間が経ってからの再開。時が経っても新しい恋人ができてもなお、2人の価値観は変わらずに
会話はなかったが、自然と2人はこれからも幸せになれよとまた別々の道を歩んでいった。

こうして語ってきたが、改めて今見て良かったと心から思ってしまう。今ようやく見れたことによって後悔ではなく、人生の歩み方を次第に考えている中で見れたことで大きな参考書となってきたと言っても過言ではない。
間違いなくこんな恋、こんな経験、こんな人生を歩んでいきたいと思ったが、ここでなんで今まで恋をしてこなかったのだろうか、という後悔がよぎったが、それを考えてもなお進むことは難しい。むしろ今までの自分を大事にする時間があってこそ自分というアイデンティティは作られていき、今こうして恋をしよう、誰かと一緒に歩んでいきたいと思えるようになった。
だからこそ今からでも遅くはない。自分なりのペースで恋をしよう、経験を積んでいこう、
そして後悔が少ない未来を作っていこうと心から思えた作品になっていっただろう。

アッキー
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