「同棲を経験したことのある人にこそささる作品」花束みたいな恋をした ameさんの映画レビュー(感想・評価)
同棲を経験したことのある人にこそささる作品
まさにタイトル通り、花束のように美しく、儚く枯れてしまう。そんな恋を見守る映画でした。
「恋をした」というタイトルから過去形なので、何となく察しはつくが、やはり従来の恋愛映画とは違い、最後には別れてしまう。
一見バッドエンドに見えるが全然後味は悪くない。むしろ別れをハッピーエンドにまで昇華させていて温かい気持ちになりました。
ただ個人的には、最後の別れたあとの3ヶ月間を見る限り結婚しても上手く行ったんじゃない?と麦くん寄りの考えになってしまいます。別パターンのエンディングも見てみたかった。
しかし、ハッピーエンドにしてしまっていたら作品的には普通の映画に成り下がっていたと思うので、これで正解なのだと思う。
個人的に大好きで特に印象に残っているシーンが付き合っていた当時の姿がストリートビューに写っていたラストシーン。小説版から引用すると
「ストリートビューの画面に、多摩川べりの歩道を花束とトイレットペーパーを持って歩く男女の姿が映り込んでいる。顔にボカシが入っているが、間違いなく麦と絹だった。
「バロン! 見てこれ」
麦は嬉しくて、バロンを PC画面の前に抱き上げた。六年前の学生時代の興奮よりも、二度目の奇跡はじんわり温かい。
「ハハハ、すごいねー」
笑いながら画面をずっと見ていた。画像の中の麦と絹は永遠にあの時間の中に静止したまま、よく晴れた多摩川べりの歩道で仲良く手をつなぎ、顔を見合わせている。ボカシで見えないが、きっと笑顔だ。」
—『ノベライズ 花束みたいな恋をした』坂元 裕二, 黒住 光著
この終わり方が繊細で美しすぎて大好きな作品になった。
麦と絹の思い出の中では花束の1番綺麗な瞬間の記憶のままなのだろうなと勝手に想像している。
別れても尚、お互いを思いやりあっている2人を見て、本当にいい恋をしていたんだなと少し羨ましいとも思いました。
少し含みのある終わり方だったので、続編を期待しています!30歳になった絹と麦が見たい、、
映画を見た人は小説版もぜひ読んでみて欲しいです。映画より繊細に詳しく心情が表現されているので、物語の世界観により深く浸れます。