「考え方の違いによって作品の見方が変わる。私は結構好き」花束みたいな恋をした ハムみょんさんの映画レビュー(感想・評価)
考え方の違いによって作品の見方が変わる。私は結構好き
コメントを軽く読んでみたけど、リアリストの方には絶対共感はできない。批判ブログや批判コメントが多いのはそのせい。決して悪い作品ではない。
反対にイデアリスト(理想主義者)やロマンチストの方や似たような経験をしたことのある人、恋愛するときにこの映画と視点が似てる人はかなり心に来るものがあるのではないか。私はかなりのロマンチストなので胸が苦しくなる部分がかなり多かった。(いい意味で)
これまでの映画と比べて演出がかなりリアルで共感の嵐だった。これまでの映画のようなお涙頂戴ものや、納得のできないハッピーエンドではない。むしろかなり腑に落ちる。
ここからネタバレ
ーーシーンの感想ーー
小さな好きを積み重ねてお互いを好きになる描写はすごく共感。ただ2人とも趣味がサブカルちっくであまり中身に触れようとしない印象だったので、このジャンルが好きな俺たち!の世界観で生きてる人たちなんだなと認識して観ることにしました。
でもそれは長くは続かず、夢を見続ける学生のような恋愛から一変していく。
お揃いの靴から麦くんはビジネスシューズに。
お互いの環境が変わって現実主義になっていく麦くん。ずっと変わらない絹ちゃん。
絹ちゃんの両親は極めて【常識的な】方なので幼い頃から反発してきたであろう絹ちゃんは就職してからも変わるはずもなく。
「3ヶ月もセックスしてないのに結婚だなんてなにを考えてるんだろう」と精神的なつながりを求める絹ちゃん。
しかし、社会に揉まれて常識的な考えに変わってしまった麦くんは何年も付き合ってるのに将来を考えてないのかな…とただ常識的な形で責任を取ろうとするだけだった。
大体言葉が少し足りないだけ、歩み寄りが少し足りないだけで喧嘩に発展してしまうのもリアル。好きだからこそ本音を言うのは躊躇してしまう…でも本音が言えなくてすれ違ってだんだん嫌になっていくのが恋愛なんですよね。
最後のファミレスの自分達を回想シーン思わず涙しました。うわあこれは…こんなの見たらよりもどすよね…なんて考えてたら【こうして僕たちは別れた】
(少なくとも私の中の)普通ならファミレスで抱擁した後、あそこでまた交際スタートするでしょう…えぇ…と驚き。
最後の荷物の整理をしている時本当にお互い心底明るくて残念だった。もし、あの描写をもっとリアルにするなら、自分達はまだやり直せるんじゃないかと尾を引きながらも明るく振る舞うシーンだったな。少なくとも麦くんの方は最後にプロポーズした手前内心少し複雑だったろうに。そこは映画だな〜と思わされた。
答え合わせ。本当はあそこすごく引いた。とかミイラみて喜ぶ人だもんね!あれはちょっとなって思ってた。とか答え合わせしてくの楽しいよね〜!!とここも共感した。別れてやっと本音でぶつかり会えるってすごく皮肉だけどね。ここを乗り越えたら彼らは友達としてやっていけると思った。むしろ趣味が意気投合するなら友達で充分では?
ーーー全体を通しての考察と感想ーーーーーー
終始、絹ちゃんが割と自分勝手だったな〜と思った。変わってしまった恋人をもう愛することができないんだろうなと。麦くんは中身は絶対変わっていなくて、現実的に責任を取ろうとしてくれてる。
【キングダムも13巻で止まってるし、宝石の国なんてもう中身覚えてないよ(うろ覚え)…】と趣味が好きな気持ちはまだある。だが、中途採用で経歴もなにもない麦くんを受け入れてくれる営業会社なんてこのご時世ブラックしかない。ブラック企業に勤めながら学生の時みたいに趣味を追い続けるなんて無理なのでは?経験積んで転職して時間の余裕ができてから本番でしょうに。でも絹ちゃんにとっては今この時間に私といてくれない麦くんが全ての答えなんでしょうね。
彼女は多分、花束100本持って金もなにもない俺だけどお前を幸せにする!と多摩川でプロポーズされたいタイプなんだろうなと思った。
でもその身勝手さもすごくリアルで、学生時代から変わらん身勝手な彼女とブラック企業に入って忙しくて趣味の時間や自分の時間を奪われてしまった社会人。これに当てはまる人たくさん居るだろうな〜。
冒頭のシーンから重なる偶然の連発。
お互いの恋人を連れてカフェで同じ内容の談義。周りから見たらまたやり直せば?と言いたくなる2人の意気投合っぷり。
しかし、学生時代からの恋愛だと所属するコミュニティーが一変してそこに所属する時間が長くなるから価値観が変わるのは当然と言えば当然。
社会に出てある意味成長させられた麦くんと、ずっと変わらない絹ちゃん。
現実主義の方は、麦くんを精神的に成長した。と言うだろうし、ロマンチストの方は麦くんが変わってしまった。と言うだろうなと。見る視点が違うと思った。ここが作品の評価の最大のポイントだと思う。
どっちが悪いわけでもなく、時の流れが彼らを変えた。どんなに最初に運命だと思おうが、意気投合しようがこうやって終わる恋愛もあるよね。と私にとってはひたすら共感を呼ぶ作品だった。