劇場公開日 2021年1月29日

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「ちょっとでも本作が「刺さった」人は、パンフレット必携の一作。」花束みたいな恋をした yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ちょっとでも本作が「刺さった」人は、パンフレット必携の一作。

2021年2月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

この種の映画としては王道的な展開で、物語としての意外性はそれ程ありません。しかし「恋愛映画」の枠にはめ込んでしまうのは勿体ない傑作。もちろんデート映画として鑑賞するのもありだけど、その場合はタイトルの時制をよーく見てから判断しましょう。
また作品と同様、パンフレットもデザイン、情報量ともに素晴らしいできばえで、この値段は安すぎると思わせる力作!

いわゆる「サブカル」好きな男性と女性が出会い、ちょっと現実味の薄い共同生活を始める序盤、そして徐々に現実が侵食してくる中盤の展開は、ちょっと岡崎京子大先生の『うたかたの日々』を連想させるような夢見心地の美しさ(作中で「リバース・エッジ」と読めるTシャツが出てくるんだけど、偶然?)。洪水のように飛び交う文化アイコンや固有名詞に共感できるかどうかも、確かにちょっとは本作への感情移入の仕方に影響するかも知れないけど、菅田将暉と有村架純の表情、演技はとても自然で素晴らしく、たとえ彼らの「好き」そのものはあまり理解できない人でも(含自分)、作中世界に入り込ませる力があります。

ただ彼らが共有する世界と現実を対比させる象徴として、「ゼルダ」ではなく「パズドラ」、「文学」ではなく「ビジネス自己啓発本」を持ち出す当たり、ちょっと単純では…笑いました。これらが好きな人は、「自分って現実に妥協しているんですかー(涙)」となりそう。

 終盤のやり取り、菅田将暉の訴えは理屈としては間違っていないんだけど、その場面で言うのは…、決定的に…、という、ある種の共感と断絶を同時に示すという見事な演出・演技。そこにさらにもう一つとどめを入れるというたたみかけがすごい。これがないとここまで後味爽やかにならなかったし、下手すると『レボリューショナリー・ロード』(2009)みたいな展開になっていたかも…。

yui