劇場公開日 2021年1月29日

  • 予告編を見る

「映画的な喜びはなかった。」花束みたいな恋をした ucさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0映画的な喜びはなかった。

2021年2月10日
iPhoneアプリから投稿

坂元裕二が好きだ。でもそれは、ドラマの脚本家としてだったよう。映画の脚本家としてではなかった。期待していたのだけど。

ドラマも映画も等しく映像作品だし、そんなジャンル分けは無意味かもしれないけれど、それでも自然と頭に「これって映画?」という疑問が浮かんでしまう作品だった。

率直に言うなら今作は、恋愛あるあるを繋いだプロットのような印象。

どのシーンも身に覚えのある、少しほろ苦い、かつての自分の恋愛を思い出させるもので、一瞬はセンチメンタルになるけれど、ただそれだけ。あるよね、とは思うけど、心は揺さぶられなかった。

二人の恋がいつか終わることが、付き合い始めから予想できてしまって、あぁ、そうそう、こうやって恋は始まり、終わっていくんだよね、と冷静に見守る感覚だった。

一瞬でも、二人の恋は永遠かもしれない、と思わせてくれていたら、ラストの別れも彼らと一緒に悲しめたのかもしれない。付き合いたてシーンもたっぷりあったが、あの描写では弱いと思う。胸が苦しくなるくらいの、キラキラ感がほしかった(例えば、妻夫木聡と池脇千鶴のジョゼ〜には、観ていて苦しくなる幸福感があった)

恋愛初期の幸福感や無敵感が感じられなかったのは、モノローグを頻繁に挟み込む演出のせいだと思う。始めから終わりまで、二人はずっと、各々の立ち位置から物事を見ていて、その客観性、個別性が恋の終わりを予感させていた。モノローグに頼る演出がなければ(つまり、2人がもっともっと直に激しくぶつかりあっていれば)、二人の恋にぐっと入り込めたと思う。

さらに残念だったのはカメラワーク。圧倒的に美しいと思えるシーンがなかった。絵だけで紡いでくれるシーンがなかった。

坂元さんの台詞は魅力的。だからこそ、その強くて印象的な言葉に負けない絵が観たかった。

今作を〝映画〟というより、ドラマ(もしくはドラマの予告編)のように感じてしまったのは、映画館のスクリーンで観て良かった!と思える映像体験がなかったからだろう。

有村架純さんは大好きだし、主演の2人の演技は素晴らしかった。だからこそ、監督、撮影、照明といった、映画的高揚感を生み出す立場の人たちの技術のなさ、工夫のなさが残念だった(もちろん、そのためには映画的な見せ方ができる脚本が必要なわけで、坂元裕二さんの脚本は台詞の妙や、ディテールの数珠つなぎに凝りすぎている。大きなスクリーンで楽しむ映画には向いていないのだと思う)

uc