「坂元作品の真骨頂」花束みたいな恋をした よっちゃんイカさんの映画レビュー(感想・評価)
坂元作品の真骨頂
冒頭、カップルが一つのイヤホンで2人で曲聴くという王道の場面から始まる。
しかし、そのイヤホンを2人で聴く現象に対して音楽制作の立場からツッコミが入る。
ここら辺が「最高な離婚」を見ていたものとしては、「うぉぉぉ坂元作品だ!!」と言ったような妙な興奮を覚える。
そこから坂元節が出るは出るは。
ここで一気に引き込まれた。
そのあと、主役2人の出会いが描かれる。
話の大筋、それぞれの話が明大前で交錯する構成は他の作品でもかなり見受けられるが、随所に坂元節が仕込まれていて飽きさせない。(映画ファンだという男性がマイナーな作品といってショーシャンクの空にをあげるところなんかはかなり皮肉が効いていて面白かった。)
兎にも角にも、2人が出会い、デートを重ね、告白、そして付き合う。
この告白がまた憎いくらいドキドキする。
2人に残されたタイムリミットまで刻々と迫ってくるその感じ。
そして意外とあっけない、しかしキュンキュンする告白。
そこから2人で夜の道を歩いて初めてキスするまで。
とても良い。
そこから2人がすれ違い、別れるまで描かれる。
この作品には2人の恋の象徴ともいうべき小道具が数多出てくる。
2人の若さを表していた「イヤホン」
2人のすれ違いを演出した「靴」
等々
個人的に印象に残ったのはゼルダの伝説ブレスオブザワイルド。
最初は大体どのくらいの時期の話かを表すための小ネタかと思っていたのだが、麦の社会人としての忙しさを「(ゲームの進行度が)ゾーラの里で止まっている」というナレーションで表現したのには驚き入った。
別れのシーンは過去、今まで見てきた失恋のシーンで一番泣いたかもしれない。
そもそも恋愛にとことん縁がない僕は恋愛映画を見てもあまり共感することもなければ、感動することもない。
しかし、この作品の別れは唯一と言っていい。
お互いに笑顔で別れようとするもののかつて自分たちが座っていた席に座る若いカップルたちを見て泣きながら「別れたくない」という菅田さんの演技に心打たれた。
2人の出会いがかなり運命的でファンタジー寄りに描かれているからこそ、その後の現実的な別れがかなり心にくる。
そして、この後オープニングのシーンに戻る。
別れた後、再び2人がばったりカフェで会う。
その後の去り際2人が背中合わせに去るとき後ろ向きに手を振る。
このワンシーンがあることによって、それぞれがまた新たな恋を見つけたことが示されて見ている人を清涼感がさっと包む。
かなり綿密に練られた脚本でこれぞ坂元裕二作品といったところだった。