「たしかに、恋愛って花束みたいなモンかも。」花束みたいな恋をした へねみこさんの映画レビュー(感想・評価)
たしかに、恋愛って花束みたいなモンかも。
丹精に計算されつくした脚本と演出、主役二人の高い演技力が見事に現れている、恋愛映画として傑作ではないかと!
しかしながら、好みが分かれるのもたしか。
・序盤のイヤホンの話に嫌悪を覚え(言いたいことは頷けるが、他人カップルにわざわざ言うことではない)
・二人の好みのサブカルまるで知らん
・本棚、同じ作家サンに偏ってないのは逆に不自然では
・新潟長岡の花火なんぞ知らん(お父さんの話し方は長岡の人と微妙に違うし、長岡の人が花火のことしか考えてないってのもどうなん)
・社会に揉まれ、大好きだったものが手につかなくなる人もいるが、麦クンあまりにも変わりすぎ
・倦怠期から別れのシーンまで冗長に感じる
…とか言う人もいるだろうけど苦笑
それらすら、最後まで通して観ると、二人の5年間の恋
を描き切るには必要なことだったと思う。
何よりキャスティングが秀逸。有村架純-絹ちゃんの見つめる演技と、菅田将暉-麦クンの目を逸らす演技は、二人に生まれた心の距離を見事に表現している。
その他キャストも演技巧者揃いで何気に豪華。(演技力が伴っていない人への配役すら、きちんと考えられていた…)
趣味趣向がぴったりで相性も良かった二人が、社会の中で距離ができ…というのはありがちな話。だが、絹ちゃんが就活してる時点で「リアリズムな女が変わって、絵描きの夢見る男が変わらん」…という予感もいい意味で裏切られる。しかも、菅田将暉が、言いそうもないリアリズムでアナログな社会家庭的台詞を繰り返し言うとか、もうたまらない!笑
そして、二人の間の小道具やサブカル趣味嗜好も、一つ一つが丁寧に作られていたのも素晴らしい。
・白スニーカー(奇跡的お揃い…脱ぐまで気がつかない!→社会人靴→初々しいカップルの…思い出すがもう戻れない、喪失感)
・Switch(TV脇のコントローラー→携帯モード→絹ちゃんTVで一人プレイ、やんやある→傷心の麦クン一人でプレイ)
・再演された舞台(映画やイベントじゃないところがミソ! 「前に見ただろ」と麦クンは言ったが舞台好きな人はきっとツッコミ入れると思う)
・今村夏子(二人の価値観の象徴。お揃いスニーカーって『ピクニックから来てる…? 5年間て長さも今村作品スパンにぴったり笑 芥川賞受賞ネタも。)
丁寧さという点では、菅田有村の次にキャストクレジットされてる細田佳央太くん・清原伽耶ちゃんカップルの存在。作中では苗字でしか呼び合わないけど、ちゃんと下の名前まで設定されてるのね。明るい未来なのか、絹麦カップルの別れを予感させるのか…。
いずれにしろ、「あるある」と共感できるかどうか…で評価も分かれるとは思う。好みじゃないという方も、丹念に作られてる点をご覧いただきたいな。