「流石、の一言」花束みたいな恋をした とまさんさんの映画レビュー(感想・評価)
流石、の一言
大好きな土井監督と坂元裕二さんのタッグということで、公開前から楽しみにしていました。
ちなみに、カップルで見るのはやめておいた方がいいように思います。
ストーリー自体は、主人公の2人それぞれに共感できる部分がいくつもあり、胸が締め付けられました。
20代前半の、社会に出る大人の一歩手前で誰もが感じる葛藤が、ラブストーリーという形でリアルに表現されています。
最初はびっくりするくらい息が合って、運命的に惹かれあった2人。
特別なことは何も起きないのに、何かが少しずつすれ違って、気づいたら違う方を向いている。
どちらが正解、不正解ということではない。
歩む道が違うという現実を受け入れて生きていく。
そのリアルな姿に、社会で生きていくってこういうことだな、と思わされました。
坂元さんの脚本力には毎回驚かされますが、
今回もそう感じるセリフがたくさんありました。
うまく説明できませんが、坂元さんの脚本は
台詞の一つ一つが登場人物のリアルな言葉なんですよね。
頭で考えた説明っぽいものではなく、
心で感じて出た言葉を紡ぎ出して動く世界。
ちょっと不恰好な部分もあるけど、
そこにこそ登場人物らしさと、役者の演技力が出ます。
作り込まれてないように錯覚してしまいますが、むしろとても作り込まれている。
そして土井監督の演出、カメラワークが素晴らしかったです。
物語の移り変わりを、細部にまでこだわって表現しているのが伝わってきます。
菅田将暉さんと有村架純さんがとても魅力的に映し出されていました。
土井監督の罪の声も観ましたが、断然この作品の方が好きです。
サスペンスとかコメディよりも、人の心を表現することにフォーカスした作品の方が、土井監督作品にはいいものが多いと思います。
ありがちなラブストーリーや、青春ものではありません。
ぜひ一度、見てみてください。しばらく余韻から抜け出せなくなります。
P.S. それから菅田将暉という役者さんは本当にすごい。
きっと役に入り込むタイプなんだと思います。
2020年頭の菅田将暉は、SNSで見かけるオフショットもどこか麦くん。
しかし現在の菅田将暉は、その頃の彼とは全くの別人で、おそらく他の作品の影響か笑顔が少ないです。
髪型とかも大きいでしょうが、ひとつ一つの表情が違います。
彼の次の作品がどんなものなのか、とても楽しみです。