「絹と麦の対比」花束みたいな恋をした ripc02さんの映画レビュー(感想・評価)
絹と麦の対比
サブカル好きの若者がお互いの趣味嗜好が一緒で惹かれあい恋に落ちる
金銭的にも精神的にも独立していない若者が、大人になる過程を経て、すれ違い別れが訪れる
あの一瞬の儚い恋を誰もが懐かしくもあり、羨ましくもあり胸をくすぐるもの
そんな簡単な話ではない。
趣味嗜好が一緒のようで、絹と麦は実は全然違うのだ。
絹は人数合わせでも呼ばれていく場所が「西麻布」
麦は「明大前」
ワールドカップの結果を受けて
大敗したブラジルに比べて自分を奮起させる絹と
ブラジルキャプテンの言葉に感銘を受ける麦
そしてエピローグ
偶然の出会いのあと、お互いが思いをはせる
麦は事象を通じて絹への思いを
絹はただ事象について
「社会人」と「学生」
「GReeeeNとセカオワとワンオク」と「きのこ帝国とフレンズと羊文学」
「たべるのがおそい」と「人生の勝算」
散りばめられた様々な対比
甘酸っぱい恋愛の物語だと思ったら、実質4年間の時間の経過の中で、半分は倦怠期が描かれている。
恋が始まった絶頂期に、絹はどこか達観していて
「はじまりはおわりのはじまり」を意識する
「白いデニムは苦手です」とはっきりと意志を伝えるとこ
花の名前を教えないとこ
コリドー街に名刺集めにいくとこ
絹の転職を巡って口論となったときに発した言葉が決定的だった
「わたしはやりたくないことしたくない。ちゃんと楽しく生きたいよ」
対照的なふたりだけど
ちょっとの交差があれば、お互いを意識することができ
そして、恋の始まりのトキメキは誰にも平等に降り注がれる。
ファミレスでの新旧カップルの、始まりと終わりの対比の演出が秀逸だった。
この時点ですでに絹は別れを決めている。
麦の気持ちはまだ吹っ切れていないまま。
ドキドキ、ハラハラ 愛おしく、照れあって
そんな凛と亘を見て、いたたまれなくなる絹
別れを決心して新たに進みだそうとする意志と
愛おしい思い出の狭間の刹那に胸が締め付けられたであろう絹
の気持ちがあの場に居続けることができなかったのだろう。
とにかく劇場でパンフレットを購入して
三浦しをんさんのレビューを読んでください。
パンフレット自体も絶品です。