「アカデミー賞作品賞を取らせたかった。」1917 命をかけた伝令 Mr.C.B.2さんの映画レビュー(感想・評価)
アカデミー賞作品賞を取らせたかった。
2025.12.1(月)
劇場鑑賞以来5年ぶりにNHK-BSで「1917」を。
全篇ワンカット風に撮影されているが、塹壕に入る所、壁を抜けて行く所、塹壕内で爆発する所、飛行機が落ちる所、狙撃兵に撃たれて気を失う所、川に落ちる所等、上手く編集で繋がれている。
ワンカット風で撮る事で緊張感と臨場感が持続して、1600人の友軍兵士の命を救うために限られた時間内に伝令の任務を遂行しなくてはならないスコフィールド上等兵(ジョージ・マッケイ)とブレイク上等兵(ディーン・チャールズ・チャップマン)に観客は同化する。
カメラは最初二人の前を行きひたすら引く。そして後ろに回り込んだ後はひたすら二人を追うのだ。
ロジャー・ディーキンスのカメラが素晴らしい(アカデミー賞撮影賞受賞)。カメラの動線が完全に計算され尽くされている。
塹壕の中に仕掛けられた罠で爆発に巻き込まれた時にはブレイクに助けだされ、そのブレイク上等兵を墜落したドイツの飛行士に殺されて失い、残っていた独軍の狙撃兵と戦い、街中で敵と交戦しながらも前進するスコフィールド。照明弾が作り出す光と影の演出も見事である。
川に落ち桜の花びらが舞い落ちる川面を流されて行くとおびただしい数の死体が川面に浮かんでいる。累々とした兵士の屍の上を越えて行くスコフィールド。
木の根元で眠って休んでいる所を起こされて伝令を命じられたスコフィールドは、ラストで伝令の任務を果たし、ブレイクの兄に遺品を渡す。
そして、木の根元で休息するスコフィールドは、胸に入れていた缶から家族の写真を取り出しながめる。
彼は、明日からも続く戦闘を生き延び、無事家族のもとへ帰る事が出来たのだろうか。
1917年から100年以上経った今でも、人類は地球上で戦争を続けている。
今日も戦地ではスコフィールドのような若者が戦っているのだ。彼らの無事を祈らずにはいられない。
2020.2.14劇場公開初日にTOHOシネマズ新宿にて鑑賞済。
