劇場公開日 2020年2月14日

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「美しく静かで強烈な反戦映画」1917 命をかけた伝令 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0美しく静かで強烈な反戦映画

2021年12月6日
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鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

怖い

「アウシュヴィッツ以後、詩を書くことは野蛮である」とアドルノは言ってるし、アウシュヴィッツはどんな戦争とも同じレベルで語れないことはわかっている。でも、沢山の溺死体や怪我人や延々と続く塹壕の一方で、緑したたる草花や花びらの映像や照明や音楽や詩や歌がこれほど美しい戦争映画は初めて見たような気がする。とても静かで詩のようだった。

水の中に落ちて必死に泳ぎながら力つきたウィルが、舞ってきた花びらで意識が戻り陸にあがってひとり嗚咽して泣いた。自分の感情を吐き出すことができたんだろうか。そしてまた前進していく原動力はどこから来るんだろう。

のどかな牧場とミルクの後はやはり不穏で危険だった。でもそのミルクはひとときの屋内での静けさと赤ちゃんが生きのびる為のプレゼントに繋がった。

そもそもはCumberbatch鑑賞のために見た映画なので、若い二人の兵士が目指していたマッケンジー大佐=Cumberbatchを自分も心待ちにしていた、一刻も早く大佐の所に行かなくては!そしてうなじが映る後ろ姿のマッケンジー大佐!手紙を読んですぐに「攻撃停止!」かっちょいい!

1600名の命が助かった。責任の所在と命令系統が明確で、軍や隊同士の争いも見栄の張り合いもない。先の大戦で日本が負けたのは当然だ。万が一、戦争がこれから起こっても日本は負けるだろう。というか、世界レベルの戦争が起こったら地球は滅亡する。戦争映画は苦手だけれどCumberbatch主演のTVドラマ「パレーズ・エンド」を見ておいて良かった。第一次大戦中の英国軍の鉄ヘルメットと塹壕と軍服に目が慣れてた。「シャーロック」のモリアーティ役のアンドリュー・スコットが最初の方に出ていて嬉しかった。

ディーンが息絶える前に自分を抱えてくれてるウィルに聞いた「僕は死ぬのかな」、ウィルは「そうだよ」と答えた。この場面はベルモンドの「プロフェッショナル」前半のアフリカだった。走馬灯のようにモリコーネの音楽が頭の中を流れた。

talisman
asicaさんのコメント
2021年12月6日

美しい戦争映画、なるほどですね。

asica
Bacchusさんのコメント
2021年12月6日

頂いた別作品のコメントに対してですが…
始まってしばらくは何を見に来たんだっけ?という印象でしたが、どんどん面白くなって行きました。エンタメ感が強い作品ではありませんし、共感するところが多かった訳ではないので真ん中評価ですが面白かったですよ!

Bacchus