「切れ目なき映像や空間設計がもたらすもの」1917 命をかけた伝令 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
切れ目なき映像や空間設計がもたらすもの
サム・メンデス監督の長回しといえば、「007 スペクター」の冒頭シークエンスでもおなじみだが、それ以上に彼は数々の舞台作品にて「(編集の)切れ目なき演技」を実践しているのを忘れてはいけない。私には今作がちょうどその中間に属しているように思えた。つまり、カメラが被写体をつぶさに追うことで生々しいまでの心象、およびその場の臨場感を克明に記録するというだけでなく、だだっ広い戦場の「何もない」空洞感というものが切れ目なく、極めて舞台的、演劇的な効果を持って訴えかけてくるのである。
片や『プライベート・ライアン』のような究極の戦争映画がある一方、本作は戦争の悲惨さを描きつつ、その画面設計や空間設計、さらにはリアルタイムで映画を紡ぐ時空間設計の面でも目を見張る芸術性に満ちていた。戦争映画の中で芸術性というものが成立するのかどうか懐疑的だったが、本作は極めて巧みな角度でそれを成し遂げていたように思う。
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