「ワンカットのことは忘れて」1917 命をかけた伝令 ニコさんの映画レビュー(感想・評価)
ワンカットのことは忘れて
ワンカット撮影というフレーズが宣伝の前面に押し出されているが、厳密には完全なワンカットではない。だが、それは瑣末なことだ。監督自身、技巧的な映画だと思ってほしくない、カメラの存在を忘れてほしいとインタビューで言っている。意識し過ぎるとかえって気が散って損をする。
もちろんかなりの長回しであることには変わりない。その撮影手法が悪目立ちせず、物語の臨場感を高める黒子として非常に効果的に働いている。
物語の中で、突飛なことは起こらない。ラッキーな奇跡もお涙頂戴もない。ただ、現実の戦場で当たり前に起こるであろう出来事が矢継ぎ早に伝令の二人を襲う。それで十分張り詰めた展開になってしまう。
彼らが歩き続けるにつれ景色が変わり、単調な絵になることもない。塹壕、焼け野原、田舎の村と、RPGのステージが変わるのを見ているようでもあった。よく考えて緩急が付けられている。終始ホラー映画にも似た緊迫感を保ったまま、あっという間に2時間が終わった。
戦争は悲惨だという感情の手前の、「現場に放り込まれた時の原始的恐怖」が後味として残った。
主演の二人は日本ではあまりメジャーではないが、長回しで緊迫したシーンの続くこの役を見事に演じきっている。
ずっと側で表情の移り変わりを見ることで、彼らが切迫した気持ちになってゆく様が手に取るように分かった。体を張ることも繊細な演技も要求される役だったと思う。
とはいえ、正直何回かは、カメラの動きが不思議過ぎるシーン(不自然ではない)などに煩悩が湧いた。バックヤードの動画が公開されているので、それをチェックして再観賞すると解脱してより没入出来るかも知れない。
メモ:撮影監督による撮影秘話 ネタバレ・カットの長さの種明かし有
https://www.gizmodo.jp/2020/02/1917-roger-deakins-interview.html
コメントありがとうございます!
「"全編ワンカット"の戦争映画の作り方」というタイトルの動画です(このタイトル自体どうなんだ。笑)。
私自身こういうキャッチコピー見て、本当かどうか確かめてやる!と懐疑的ポーズを取りつつ見に行ってしまうクチなんですが(ごめんなさい)、この映画はもうちょっと内容推しでも興味を持てたかなあと思います。
主演2人が日本でマイナーだからこういう形になったんでしょうね。
知りませんでしたYouTubeにインタビューとかあがっているんですね。
観てみます!
ホント、ワンカットとか煽らなければ余計な先入観無しで観られるのにとちょっと勿体なく感じました。
まあ、年に数本話題作を観に行くという人を惹きつけないといけなんでしょうけど…。