すばらしき世界のレビュー・感想・評価
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役所さんの演技はすばらしい
役所さんはさすがの演技の連続でさすがだなと思いました。
感情移入してましたが最後の最後、
ラストのラストで考えさせられてしまいました。
自分としては素晴らしき世界でがんばって生きているんだという形で終わって欲しかった。
なぜ死なせなければならなかったのか?とても残念に思いました。
持病があるのは分かっていたのですが、生かせてほしかったなあ・・・。
西川美和に外れなし
ほとんど西川美和監督の作品見てるけど、どれも見終わった後あれこれと考えさせられる。人間のわからなさ生きることの難しさなどぼんやりと見せてくる。ですが今作の新しき世界は他作品に比べて三上のようにwわかりやすく心情が読み取れる内容だと思います。
個人的に好きなシーンはケンカし終わった後の清々しい三上や、老人ホームでふざける先輩に向ける目線 怖かった〜 孤狼の血の役所より怖かったです
それでも世界はすばらしい?
懲役10年を宣告されていた三上が刑期を終えてなんとか現実社会で生きようと悪戦苦闘する話。
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私の中でいいなと思う映画のポイントは2つあって、登場人物が善でも悪でもなく色んな面を持ってることと、自分の中の価値観が更新される/自分の持ってる価値観がひっくり返る、こと。この映画ちゃんと当てはまってました!.
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1つ目の人物描写について。この映画、ほぼ全ての登場人物が話が進むにつれ、第一印象とは違う行動に出る。例えば、あんまり助けてくれなさそうな区役所の職員に、見た目だけで三上を万引き犯と疑うスーパーの店長に、介護施設で働く優しげなお兄さん。どっちも良い方にも悪い方にも転ぶ。
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この手法を私は『スリービルボード』方式と呼んでるんだけど、人には悪い所も良い所もある、現実社会に完全な悪人っていないんだよね。誰でも善意の人であり、悪意の人。
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もう1つの価値観について。長澤まさみ演じる遥が三上がチンピラに暴行する姿を見て逃走する龍太郎に、「あんたみたいなのが何も救わない」と言い捨てるところ。結局私だって映画たくさん見て、社会の底辺に生きる人の気持ち分かってますみたいな顔してるけど実際あんなんみたら逃走するかもしれん。
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結局こんなとこで感想書いてあれがだめだこうするべきだなんて言ったところで、私は何も救ってない。社会の不条理を見逃せない瞬間湯沸かし器三上を、引き止めるために見て見ぬふりして逃げろとなだめる龍太郎たちだって結局三上を救えなかった。
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社会のレールからはみ出さないように生きていくには、つまづいて転ばないようにいろんなトラップを上手く交しながら生きていかなきゃいけない。少しでも空が広いところに行けるようにこのクソみたいなすばらしき世界を生きていかなきゃね。
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涙腺崩壊でした・・・
主人公の不器用ながらも懸命に生きようとする姿を丁寧になぞりながら、ストーリーが進んでいくので、とても感情移入でき、涙腺崩壊でした。
長いこと社会から隔離された人が、やり直すことが難しい社会構造であることや、児童養護、障がいのある人、虐待の問題、など社会の抱える課題を複合的に考える良い映画でもありました。
最後に、別れた妻との再会を果たし、探してたお母さんに会うことがでるなど、ハッピーエンドで終わることをどこか期待していたが、ハッピーエンドではない悲しく切ない終わり方が、またこの映画の魅力になっているように思えた。
誰もが安心して、ありのまま自分らしく生きられる世の中が良いに決まってると誰もが思うのに、それが難しい現実社会。身近なところから、その人に寄り添っていければと思いました。
タイトルなし(ネタバレ)
親兄弟ですら縁を切る今、本当の意味で懇意にしてくれる奴なんかいない、人間なんて所詮そんなもんと思っていた私の心を溶かしてくれた。
表面だけの付き合いが多いこの世の中、ヤクザの方が人情深いのかもしれない。
出所して、東京で燻っていた三上を優しく迎え入れ、警察が押しかけてきた日には彼を逃してあげる。
みんな本当はカタギとして生きたかったのかもしれないですね。その想いを三上に託したのかもしれない。
役所さんが素晴らしいのは言わずもがな、今回も太賀さんが素晴らしい役所でした。
長澤まさみさんが出ているからと観に来ましたがあまり役ではないのにも関わらず、あの短い出演時間であそこまで印象を残せるのはさすがと言ったところです。
最後は、悲しいけどとても彼らしい美しい最期だった気がします。
介護施設の人間共が憎すぎて、私が手をかけそうなくらいでしたが、心が綺麗な人が1番美しいです。
この世で生きづらい思いをして生きている人々がみんな幸せになれますように。
この世が捨てたもんじゃありませんように。
タイトルに偽りなし
道を外れた元殺人犯三上を演じた役所広司が本物にしか見えず改めてその凄さに圧倒されました。
先日観た『ヤクザと家族』に続き寛容さを無くした今の日本社会で過ちを犯した人間の社会復帰がどれだけ難しいかを痛感させられます。
私達にとってヤクザ=悪です。しかし本作の三上も『ヤクザと家族』の山本も幼少期の家庭環境に大きな問題を抱えています。
彼らは加害者でもあり被害者でもあると言えます。私達が同じ境遇で育ったらどうなっていたか?一概に否定出来たでしょうか?全ては彼らの責任なのでしょうか?
本作では正しさについても考えさせられました。二人がかりで一人の中年男性に執拗に絡みカツアゲする輩を三上は暴力で捩じ伏せます。
三上の暴力は正しいか?間違いか?
身元引受人の奥さんから今の社会では無関心や無視する能力も大切と諭された三上がやっと決まった就職先の介護施設で目撃したスタッフの虐め。三上は見て見ぬフリをします。
三上の行動は正しいか?間違いか?
正しいの尺度は人や状況により変わるし善と悪で明確に区別出来ることなど殆どありません。後悔しない選択をすることがベストですが簡単ではありません。
それでも三上はたくさんの彼を支え社会復帰する為に親身になってくれる人達との出会いがありました。彼の死に駆けつけ涙してくれる大切な人達との出会いが。
それはきっと、すばらしき世界。
それぞれの正義
登場人物の生き方や彼らのセリフにはそれぞれの思いや背景を感じる。誰が正解か誰が正しいかと簡単に言うことはできないなと思った。
いじめていた老人ホームの職員でさえ、彼らなりの事情を考えると頭ごなしに批判はできない。やってることや態度はとても感じ悪いけど、弱いものいじめをしてしまう職場の環境にも原因があるのかもしれない。距離をとってちょっと飛躍して考えるとそう考えることもできるのかなと。
主人公はじめ、役所職員、店長さん、津野田くん、ヤクザ、、、それぞれ、はじめに感じる印象と、話が進んでいくにつれて見えてくる印象が少しずつ変わっていくように、主人公と彼らを取り巻く登場人物の誰が正義かと簡単にいうことはできない。
それぞれの正義が話の流れの中でそっと顔を出していく。ムダなシーンが一つもないなと思った。
見せ方も秀逸だった。
ポスターに騙されて電話をかけるシーンでは、階段を登る女性のシルエット、直後に男性のシルエットが映るから、女の人が怖いお兄さんと一緒に来たと思った。
津野田くんが、主人公のケンカ姿に恐怖して逃げて、叱責された後に気持ちが揺らいでしまう。そのときに、泣いてる子供を見て、勢いのまま主人公のトラウマを直面化させるシーン。この男の子も捨てられてかわいそうと、こっちが思った隙をついてすぐに母親が優しく寄り添ってくる。
店長さんに対して「達に悪い客がきたら俺に任せろ」と主人公が言うシーン。思わずクスリときてしまったが、よくよく考えればその暴力で解決しようという生き方こそ、彼の生き辛さや今まで起こしてきた問題の根底にあるのだと気付かされる。一見ユーモラスなシーンだけど、それがユーモラスであるほどできるこちらの隙を、のちのち効果的に揺さぶってくる。彼の持つ暴力性がいつ問題になるのかと、最後はハラハラせざるをえなくなる。
そんな鑑賞者の想像からできる心の隙をさりげなーく与えながら、それに寄り添うようにその隙をガッチリと突いてくる。そんな見せ方がなんともいえず秀逸だなぁと思った。
皮肉?なのか?
自分なりの正義に従って生きてきたヤクザ者が、"広い空"の下で生きようとする話。
男が目の前の悪意を歯を食いしばって見て見ぬふりをしたその夜に死んで終わります。
西川監督は明確なイメージと練り込んだ脚本で知られるけど、今回ばかりは名優役所広司の演技を撮ることで手一杯だなと思いつつ観てました。
そうしたら空から降る雨に濡れた洗濯物が、取り込まれず残っているショットから続くラストシーン。
"広い空"をバックに表題「すばらしき世界」!!!
全ては監督の掌の上だったのかと。
もう降参ですよ。
ハッピーではないがバッドエンドではない。
役所広司の演じる主人公は決して良い人とは言えない。短気で粗暴で喧嘩っ早く、キレると見境がない。しかし出所後、周りの人に助けられて真面目に生き始める。そこで死んで映画は終わる。悲しい終わり方だけれども主人公が真っ当な人間になってから亡くなるのはバッドエンドではないと思った。中途半端に描かれた線だけの刺青は主人公の辛い半生(親に捨てられヤクザになるしかなかった)を象徴しているようだ。
印象的なシーンが多い。「孤児院で園歌をおばあさんと一緒に口ずさむ」「孤児院でサッカーをして子どもにすがって泣く」「雨に濡れ続けるランニングシャツと風になびくカーテン」
考えてみれば脳卒中(おそらく)で死ぬことは映画の初めから予想できるように伏線がある。物語の中で何度も発作(?)が起こり、病状が悪くなっていることが分かる。最後、花を握ったまま死ぬというのはこの映画のテーマを表しているように思う。役所広司の演技は素晴らしい。実際の三上さんはどんな人だっただろう、役所広司の演じた三上と似ているだろうか。
隣の席のおじさんが声をあげて泣いていた。僕も少し泣いた。エンドロールが終わり、照明が点いてもしばらく誰も立ち上がらなかった。
今日、思い出してまた泣いた。
愛すべき存在、三上正夫
本作は今の社会を炙り出した傑作。
三上正夫、彼は幸せなのか、不幸なのか。。
三上の生い立ちは不幸である。結局母にも会えぬままだった。人生のほとんどを刑務所の中で過ごし、まともに社会で生きたことがない人がやっと、やっとまともに生活できそうになったところのラスト。
ーーシャバは我慢の連続よ
社会は不条理で溢れている。長澤まさみ演じるテレビ局社員、介護施設の職員、あぁいう嫌な奴いるいる、あるある。
劇中の言葉通り、シャバは我慢の連続である。
そしてレールに乗って生きている人もたいして幸せでわない。だから皆んな適当に流して、そこそこ適当に生きているのだ。
私生児として生まれ母親とは生き別れ、施設で育ったという三上。本作では「愛着障害」についても触れられている。
三上正夫は優しくて真っ直ぐでいい奴。なのに暴力性、カッとなっるとすぐに手が出るなどの性質の二面性を持ち合わせている。
この悪い部分は幼い頃の環境が要因であるようなことが劇中でも出てくる。
三上も「愛着障害」によって社会にうまく適応できなかった一人であるのだ。
この世は三上のような男には生きづらすぎる、むしろ刑務所の中の生活の方が性に合っていたのかもしれない。
だけど、世の中悪いことばかりでもなく三上の人懐っこさや憎めない性格に周りの人は気付き、手を差し伸べる。
社会の不条理と矛盾とほんの少しの人々の優しさで成り立っているということを描いた作品である。
それにしてもキャスト陣が実力派ばかりだ。役所広司はもちろんのこと、伊藤太賀の演技が素晴らしかった。お風呂のシーン、あれは泣ける。
そして現在公開中の『ヤクザと家族』にヤクザとして出演中の北村有起哉、今回は反社を拒絶する役所の職員として演じていることにちょっと笑ってしまった。
誰にでも起こりうる日本の現実、だからこそ色んな人に観てほしい
元ヤクザの物語。
でも、鬱になった私からすれば身近に感じられた話でした。
瞬間湯沸かし器みたいな性格の主人公だから。元ヤクザだから、と一言で片付けられない現実が描写されています。
もし病気や事故で、社会的な時間に空白が生まれてしまったら…社会復帰に対する現実があります。
誰にでも起こりうる現実。
この映画の中にあるセリフに
人と関係を持つことの重要さを説く言葉がありますが、本当にその通りだと感じました。
フィクションな部分はありますし、めちゃくちゃ盛り上がる!という映画ではありません。
良い描写ばかりではありません。
でも、この映画を観て良かったと思います。
人は完璧ではなく、それぞれの事情があり、色んな人がいる。
それでもお互いに優しくし合えたら…と考えさせられる映画でした。
見上げてごらん夜の星を
男の背中
裸の付き合いから
人と人 ってなるよね
後半は泣けて泣けて…
なんやかんやゆうても
すばらしき世界に。。。
観た後いろいろ考えてまう なぁ、、
圧巻の役所広司やったね!(ファンになった)
エンドロール最後…
あ! 監督さん女性なんやぁー
【"人生のレールを外れた人”も、”真っ当に生きる人”も、この不寛容な世の中は生き難い。だが、それでも”広く青い空”を見上げて、上を向いて生きていこう・・。】
◆西川美和監督の、人間を見る”冷徹な視線”と”温かい視線”のミックス具合が、絶妙な作品である。
ー人生のレールを外れた人ー
・元ヤクザ三上(役所広司)の周囲の人々、
兄弟の契りを交わしたヤクザ(白竜)とその妻(キムラ緑子)が”反社”として、追いつめられている状況描写を絡ませつつ、
この作品が、観る側に”人生の生き難さ”を訴えかけ、イロイロと考えさせられるのは、
1.真っ当に生きる市井の人々の姿
・三上を支える身元引受人の弁護士夫婦(橋爪功・梶芽衣子)
-”趣味だ”と言っていたが、殺人者の身元引受人になるのは、並半端な覚悟ではできないであろう。立派であるし、この夫婦の存在が久しぶりに世間に出てきた三上を支えて居る。夫婦から供されたすき焼きを前にして、涙する三上の姿・・。ー
・非情なジャーナリストに徹しきれない、若者(仲野太賀)
- ”非情”、冷徹”になり切れない青年を好演している。流石である。
そして、彼が三上の身上について、”純粋な思い出で”書き始める姿。三上の姿に触発され、彼自身も成長していくのである。-
・役所の真面目な三上のソーシャルワーカー(北村有起哉)
- 「ヤクザと家族 The Family」に引き続いての”抑制した”熱演である。-
・ひょんなことから知り合った、スーパーの心優しき店長(六角精児)
- 良いなあ。三上を殺人者と知りながらの、あの接し方。彼の人の良さが染み出ている温かい表情、言葉に涙する。 ”今日の三上さんは、虫のいどころが悪かったのかなあ・・” ナカナカ言えないよ。-
今作の魅力の一つは、上記の市井の人々の”日々を懸命に生きる姿””が、キチンと描かれている点であろう。
そして、その人々を演じた、役所広司を始め、仲野太賀、北村有起哉、六角精児の存在感ある見事な演技であろう。
又、非情な女性ジャーナリストを演じた、長澤まさみさんの姿は、「MOTHER マザー」を思い出させてくれた。この方は、新境地を開拓しつつあると思う。
2.三上が、母と会う情報を得るために赴いた、且つていた孤児院で、孤児たちとサッカーを楽しんだ後、泣き崩れるシーン。
- 戸籍が無くても、母は恋しい・・。-
3.三上と別れた妻(安田成美)の”決して裕福そうでない”家を訪れた時に会った聡明な女の子。三上が指折り数え、”自分の娘”ではないか、違うな・・と思うシーン。
・妻と電話で交わす話。妻の優しい言葉・・。
-苦労を掛けたな・・-
4.そして、”真っ当に生きる人々”が、三上の介護施設への就職を祝い、集まるシーンで、”ホロリとし・・”
5.知的弱者を苛める、施設員達に対する三上の態度の”西川監督の描き方”に唸らされ、
6.知的弱者の若者が、台風が近づく中切り取った、三上に渡した花束。
その花束を、”真っ当に生きる人々”から、就職祝いで送られた自転車の籠に入れ、嬉しそうに家へ向かう、三上の笑顔。
<あのインパクトある ”三上が、花束を手に横たわる画” の手のフォーカスシーン。
母に捨てられた三上の人生は、厳しく報われない人生だったのだろうか?
彼は様々な犠牲を払い、罪を償い、”青い空が広がる世界””に、自らの努力で出てきた。
そして、”厳しき毎日”を”真っ当に生きる人々”の温かさに、僅かな時間ではあったが、触れる事が出来た。そして、彼らに対して何らかの影響を与えた。
彼は、確かにこの世で、必死に生きたのだ。
私は、彼の波乱万丈な人生の最後年は、幸せな日々ではなかった・・かと、思うのである。
今作は、西川美和監督が、”人生のレールを外れた人”、”真っ当に生きる人々”を取り巻く社会の厳しさ、不寛容さと、温かさを、見事に描きだした作品であると思う。>
結局
死ぬんかい。生きてて欲しかったー!
てか死ぬなら絶対ここで終わってくれ!て思ったら終わった🤣アウトローなひとが社会に馴染めなくて死んじゃうの、野生で生きてた動物が人に飼い慣らされるのになれなくて弱っちゃうみたい🤣
タイトルなし(ネタバレ)
三上正夫(役所広司)は殺人事件を起こして服役していたが13年の刑期を終え出所した。直前の刑務官とのやり取りで、三上が全く反省していないことが分かる。分厚い書類が机上に積まれファイルを開くと多数の押印が見えた。DXや働き方改革などで悪となった押印文化が公的機関には沢山あるのだろう。ゾッとする。
三上の生い立ちは父に認知されなかったため社会的に存在しなかった。母にも4歳の頃に捨てられている。それから非行に走り14歳で初めて少年院に入る。罪を犯す人間の根底は大体同じで家庭環境に恵まれていないようだ。
三上の体には左胸から左腕にかけて筋彫りがある。また、左胸には刀傷がある。
殺人を犯した三上の人間性は残虐ではなくてどちらかと言うと純粋で真面目に見えた。服役中の規律正しい生活は体に染み込んでいて出所後にもそれが出てしまって笑いを誘う。そう振る舞ってしまうのも根が真面目だからに他ならない。
三上は出所後にチンピラに絡まれるオッサンを見かけると制止しチンピラを倒してしまった。正義感が強いというよりスルースキルが無くておかしい事はおかしいと行動する純粋さが三上にはあると思う。
三上が暴力を奮った(奮おうとした)のは①服役の原因となった殺人(女を守ろうとした)②階下の住人の騒音③チンピラにオッサンが絡まれている④介護施設でのイジメ、の4つでありいずれも三上の方が正しいように見えた。
しかし、社会で真っ当な生活を送るにはこのような事象に目を向けないような『普通』にならなければいけない。『普通』とは?
三上は『普通』になるため努力していた。スーパーで万引きを疑われた時は込み上げる怒りを上手くコントロールした。周囲の助けがあって徐々に社会に馴染むのでハッピーエンドを迎えそうであったが最後は自決してしまう。死の直前、イジメられていた介護士からコスモスを受け取ると三上は泣いた。社会的弱者に涙した。介護施設でハサミが出た時に何に使われるか緊張したが、それを使って自決したのだろう。
三上は抵抗しながらも生活保護を受給した。しかし、金銭の受給だけでは社会に戻れない。生活を立てるには仕事が必要だが、出所後の職探しは困難だ。殺人を犯した者を受け入れる人は少ない。三上に手を差し伸べないのは『普通』なのかもしれないが、どうあるべきか考えさせられた。
満足感は高い。が、少し物足りなさもある。
「ヤクザと家族」とほぼ同時期に似たようなテーマ性を持った作品なのでどうしても比較してしまうが、西川美和監督独自のあたたかい視点を感じられるし、社会に対する問題意識や大衆性も感じられるので、こちらはこちらで鑑賞した満足感は高かった。
両者を比べて一番感じた違いは、「ヤクザと家族」は目を見張る演出やカメラワーク、キレイな画がたくさんあるが、「すばらしき世界」にはそれがほとんど無いことだ。
ただ、これはあれば良いという問題ではない。
派手な演出やカメラワークはどうしても監督やカメラの存在を意識させてしまう。そうなると、観客がキャラクターに感情移入することを邪魔してしまう。
そのことを西川監督はちゃんと知っているから、演出やカメラワークが抑えめなのだろう。
やはり是枝監督の一番弟子だけあると感心させられた。
難点をあげるとすれば、ラストで主人公が病死することだ。
怒りやすいせいで血圧が高いという伏線は何度もあったが、病気なら監督の都合でいつでも主人公を死なせられるわけだから、それで観客を感動させるラストを、というのはちょっと安易だなと思った。
知的障害のある同僚が職場で虐められるが主人公は怒らずにぐっと我慢したシーン、主人公が変わったというカタルシスがあったので、あの辺をもっと粒立てれば別の形でキレイに終われたような気がする。
「ヤクザと家族」はラストシーンでの磯村勇斗と綾野剛の娘のやりとりが素晴らしかったので、その点でこちらの評価を少し下げさせて頂いた。
しかし、監督の自己顕示欲のような演出やカメラワークは一切なく、あくまで訴えたいテーマといった社会性、観客を楽しませようとする大衆性、観客にキャラクターに感情移入させるために存在する演出やカメラワークは素晴らしかった。
やはり、切ない
折しも先日「ヤクザと家族」を見たばかりだったので、主人公の境遇に似ているところもあり、どのようなラストになるのか見守っていました。
どちらも殺人の罪で、14年、こちらでは13年の刑期を終え、出所してカタギの暮らしを真面目に取り組もうとするけれど、なかなか思うようにはいかず、それでもようやくなんとか穏やかに暮らせるかもしれない、カタギの仕事も見つかった矢先、それぞれの理由で亡くなってしまうのが辛かったです。
映画の中での主人公が戦う理由は、大切な人を守るため、通りすがりでも、絡まれてひどい目に遭いそうな弱い人を助けるためでした。でも最初の相手は死なせてしまったし、真面目すぎる受け答えのせいで情状酌量が認められない供述をしてしまう。出所後に弱い人を助けてあげた時は、2人相手に凄い怪我を負わせ、味方になってくれてた小説家を怖がらせてしまうほどだった。
単に大事な人、通りすがりの弱い人を助けるために襲ってきた人を振り払うだけなら、いわゆる「やっつける」だけなら正義のヒーロー達はみんなやってること。アニメの世界なら悪いやつをコテンパンにやっつけるのは良い行いだけど、現実にはケンカっぱやい危険な恐ろしい人にしかならない。でも本当は、きっかけは誰かを守ろうとしただけだったのにな、とやるせない。
激昂しやすいのは、育った境遇からなのか分からないけど、つい昔の、大声だして脅すような言葉も出てしまう。それでも生活保護担当の役所の人や、スーパーの店長?さん、小説家の人とかは、諦めずに更生を見守ってくれた。きっと、主人公の根っこの部分はそこまで腐ってない、駄目な人なんかじゃない、と感じられる部分があったんだと思う。
小説家の人は、主人公が安易に昔の仲間のところに身を寄せた時、本気で叱ってくれたし、もう戻っちゃだめですよ、と涙ながらに訴えてくれた。そういう人に出会えたことは本当に良かったと思う。
途中からは、何かで激昂するたびに「駄目だよ血圧高いんだから、そんなに興奮したら体に悪いよ」って心配して見てました。
テレビ局の人を演じた長澤まさみさん、視聴率を取れそうな人物かどうかだけを気にしてて、見事に「いかにもそれっぽい業界人」を演じていて、良かったです。多分彼がテレビに出てたら、うまいこと編集でお涙頂戴の内容にすり替えられたりしたのかな、とか穿った見方をしてしまいました。長澤さんはコンフィデンスマンでもキングダムでも良かったけど、今回も良い演技でした。
最後、主人公があと1つの洗濯物を取りこまないままなかなか窓に姿を見せず、それが彼の最期となるようにした演出はとても切なかったです。ほんの少しの時間でも元奥さんと、彼女の娘にもう一度会わせてあげたかった。
生活保護申請や、失効した運転免許証の再発行とか、現実に暮らしていくためにしなくてはいけない諸手続きがリアルで、なるほど、と思いました。
13年ぶりに出所した主人公が、「剣道の胴着なら縫えるからそれを仕事にする!!」と意気込んでいた時、身元引受人の奥さんがぽつりと「今の時代、そんな仕事ある?(それで食べていけるほどそこまで受注あるとは思えないけど。。)」という言葉が、時代に取り残されている主人公の境遇を表していて、切なかったです。
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