すばらしき世界のレビュー・感想・評価
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役所広司がいいね。
人生の半分を刑務所で暮らした男の再生したい話。
高倉健さんとは、違い、すき焼きだったなあ。
万引きと間違われたり、役所の対応の冷たさに、やっぱりしんどいなあ。すぐカッとなり、手も口も出す。
しかし、スーパーの店長やTV撮影の大賀や保護司の夫妻の暖かさ、役所の方の面倒見の良さに救われる。
しかし、日頃の不摂生で身体はぼろぼろだ。
介護の仕事に出会い、ついに世間と同じく、流すことが
できたのに、悲しい。女優さんが、いい、梶芽衣子、キムラ緑子、長澤まさみ、ソープ嬢の茨木莉奈 ソープのシーンはしみじみしたなあ。淡々とラストまで進む。
なんか悲しいなあ。仕方ないんかなって問われている。
重い内容
幼少期の虐待、非行、ヤクザ、出所、娑婆への復帰をうまく絡めながら描く。
娑婆に戻ると、血圧が高くなるきっかけがたくさんあり、結果適合できない。
「すばらしき世界」は娑婆を皮肉としてあらわしたタイトルと思った。
令和版「幸福の黄色いハンカチ」とも言えるでしょうか?
封切り翌日の夜、仕事帰りに観ました。お客さんは結構入っていました。この映画を観て、小学生の時に観た高倉健さん主演の「幸福の黄色いハンカチ」を思い出しました。健さんの役も本作品の役所広司さん扮する三上正夫も九州出身、いずれも殺人を犯し、健さんは網走刑務所から6年の刑期を終えて出所、三上正夫は旭川刑務所を13年の刑期を終えて出所、健さんの妻である倍賞千恵子さんは6年の刑期を待っていてくれて、黄色いハンカチを掲げてくれましたが、三上正夫の元妻の安田成美さんは13年は待ってくれず、娑婆の厳しい風にさらされてしまうところが昭和と令和の違いでしょうか?それでも最後に少しだけ電話で話すことができたのが、救いですが。
身元引受人の弁護士の妻が「女囚さそり」シリーズの梶芽衣子さんというのが味わい深いです。女囚さそりに「カッとなるな、世の中に合わせろ、皆そうしている」と言われれば、僕もそうせざるを得なくなると感じました。
役所広司さんの名演は予想通りでした。ひと昔前なら三上正夫の役を誰がするだろうと想像すると、高倉健さんか緒形拳さんでは?と思いますが、役所さんも決して負けていない大俳優と思います。またスーパーの店長の六角精児さんとケースワーカーの北村有起哉さん本当に名演で良かった。二人とも大好きです。
また、お風呂屋さんの桜木梨奈さんが本当に良かった。素晴らしい!!映画のオフィシャルサイトに大きくは名前の載っていない女優さんですが、兎に角、彼女が素晴らしかった。映画の中で主人公が唯一ある種の母性的な優しさを感じることが出来た場面で、僕はこの場面で涙が流れそうになりました。この場面を女性監督が撮れたことは驚きを禁じ得ません。西川監督はすごいです。また、桜木梨奈さんはもっと有名になるべき女優さんだと思います。
タイトルの意図は?
このタイトルからして最後はハッピーエンドだとばかり思っていたが、そうではなく、まさにこれから素晴らしい世界をリスタートさせようとした矢先に亡くなって終わってしまい驚いた。では、このタイトルの意図は何だったのだろうか?
出所してもまた、はみ出しそうになったり、人との交わりが上手くできなかった主人公だが、最後には人の温かさに触れ、そして亡くなった時に心から悲しんでくれる人ができた。たとえ殺人犯であっても、元ヤクザであっても。それが、すばらしき世界なのかな?
でも、真っすぐに生きた主人公にとっては、現実社会は生きずらかったのも事実。介護施設での出来事がそうだった。すばらしき世界って何なんだろうね?そういう問いかけのラストだったようにも思う。
役所さんの演技はすばらしい
役所さんはさすがの演技の連続でさすがだなと思いました。
感情移入してましたが最後の最後、
ラストのラストで考えさせられてしまいました。
自分としては素晴らしき世界でがんばって生きているんだという形で終わって欲しかった。
なぜ死なせなければならなかったのか?とても残念に思いました。
持病があるのは分かっていたのですが、生かせてほしかったなあ・・・。
西川美和に外れなし
ほとんど西川美和監督の作品見てるけど、どれも見終わった後あれこれと考えさせられる。人間のわからなさ生きることの難しさなどぼんやりと見せてくる。ですが今作の新しき世界は他作品に比べて三上のようにwわかりやすく心情が読み取れる内容だと思います。
個人的に好きなシーンはケンカし終わった後の清々しい三上や、老人ホームでふざける先輩に向ける目線 怖かった〜 孤狼の血の役所より怖かったです
それでも世界はすばらしい?
懲役10年を宣告されていた三上が刑期を終えてなんとか現実社会で生きようと悪戦苦闘する話。
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私の中でいいなと思う映画のポイントは2つあって、登場人物が善でも悪でもなく色んな面を持ってることと、自分の中の価値観が更新される/自分の持ってる価値観がひっくり返る、こと。この映画ちゃんと当てはまってました!.
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1つ目の人物描写について。この映画、ほぼ全ての登場人物が話が進むにつれ、第一印象とは違う行動に出る。例えば、あんまり助けてくれなさそうな区役所の職員に、見た目だけで三上を万引き犯と疑うスーパーの店長に、介護施設で働く優しげなお兄さん。どっちも良い方にも悪い方にも転ぶ。
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この手法を私は『スリービルボード』方式と呼んでるんだけど、人には悪い所も良い所もある、現実社会に完全な悪人っていないんだよね。誰でも善意の人であり、悪意の人。
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もう1つの価値観について。長澤まさみ演じる遥が三上がチンピラに暴行する姿を見て逃走する龍太郎に、「あんたみたいなのが何も救わない」と言い捨てるところ。結局私だって映画たくさん見て、社会の底辺に生きる人の気持ち分かってますみたいな顔してるけど実際あんなんみたら逃走するかもしれん。
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結局こんなとこで感想書いてあれがだめだこうするべきだなんて言ったところで、私は何も救ってない。社会の不条理を見逃せない瞬間湯沸かし器三上を、引き止めるために見て見ぬふりして逃げろとなだめる龍太郎たちだって結局三上を救えなかった。
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社会のレールからはみ出さないように生きていくには、つまづいて転ばないようにいろんなトラップを上手く交しながら生きていかなきゃいけない。少しでも空が広いところに行けるようにこのクソみたいなすばらしき世界を生きていかなきゃね。
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涙腺崩壊でした・・・
主人公の不器用ながらも懸命に生きようとする姿を丁寧になぞりながら、ストーリーが進んでいくので、とても感情移入でき、涙腺崩壊でした。
長いこと社会から隔離された人が、やり直すことが難しい社会構造であることや、児童養護、障がいのある人、虐待の問題、など社会の抱える課題を複合的に考える良い映画でもありました。
最後に、別れた妻との再会を果たし、探してたお母さんに会うことがでるなど、ハッピーエンドで終わることをどこか期待していたが、ハッピーエンドではない悲しく切ない終わり方が、またこの映画の魅力になっているように思えた。
誰もが安心して、ありのまま自分らしく生きられる世の中が良いに決まってると誰もが思うのに、それが難しい現実社会。身近なところから、その人に寄り添っていければと思いました。
親兄弟ですら縁を切る今、本当の意味で懇意にしてくれる奴なんかいない...
親兄弟ですら縁を切る今、本当の意味で懇意にしてくれる奴なんかいない、人間なんて所詮そんなもんと思っていた私の心を溶かしてくれた。
表面だけの付き合いが多いこの世の中、ヤクザの方が人情深いのかもしれない。
出所して、東京で燻っていた三上を優しく迎え入れ、警察が押しかけてきた日には彼を逃してあげる。
みんな本当はカタギとして生きたかったのかもしれないですね。その想いを三上に託したのかもしれない。
役所さんが素晴らしいのは言わずもがな、今回も太賀さんが素晴らしい役所でした。
長澤まさみさんが出ているからと観に来ましたがあまり役ではないのにも関わらず、あの短い出演時間であそこまで印象を残せるのはさすがと言ったところです。
最後は、悲しいけどとても彼らしい美しい最期だった気がします。
介護施設の人間共が憎すぎて、私が手をかけそうなくらいでしたが、心が綺麗な人が1番美しいです。
この世で生きづらい思いをして生きている人々がみんな幸せになれますように。
この世が捨てたもんじゃありませんように。
タイトルに偽りなし
道を外れた元殺人犯三上を演じた役所広司が本物にしか見えず改めてその凄さに圧倒されました。
先日観た『ヤクザと家族』に続き寛容さを無くした今の日本社会で過ちを犯した人間の社会復帰がどれだけ難しいかを痛感させられます。
私達にとってヤクザ=悪です。しかし本作の三上も『ヤクザと家族』の山本も幼少期の家庭環境に大きな問題を抱えています。
彼らは加害者でもあり被害者でもあると言えます。私達が同じ境遇で育ったらどうなっていたか?一概に否定出来たでしょうか?全ては彼らの責任なのでしょうか?
本作では正しさについても考えさせられました。二人がかりで一人の中年男性に執拗に絡みカツアゲする輩を三上は暴力で捩じ伏せます。
三上の暴力は正しいか?間違いか?
身元引受人の奥さんから今の社会では無関心や無視する能力も大切と諭された三上がやっと決まった就職先の介護施設で目撃したスタッフの虐め。三上は見て見ぬフリをします。
三上の行動は正しいか?間違いか?
正しいの尺度は人や状況により変わるし善と悪で明確に区別出来ることなど殆どありません。後悔しない選択をすることがベストですが簡単ではありません。
それでも三上はたくさんの彼を支え社会復帰する為に親身になってくれる人達との出会いがありました。彼の死に駆けつけ涙してくれる大切な人達との出会いが。
それはきっと、すばらしき世界。
それぞれの正義
登場人物の生き方や彼らのセリフにはそれぞれの思いや背景を感じる。誰が正解か誰が正しいかと簡単に言うことはできないなと思った。
いじめていた老人ホームの職員でさえ、彼らなりの事情を考えると頭ごなしに批判はできない。やってることや態度はとても感じ悪いけど、弱いものいじめをしてしまう職場の環境にも原因があるのかもしれない。距離をとってちょっと飛躍して考えるとそう考えることもできるのかなと。
主人公はじめ、役所職員、店長さん、津野田くん、ヤクザ、、、それぞれ、はじめに感じる印象と、話が進んでいくにつれて見えてくる印象が少しずつ変わっていくように、主人公と彼らを取り巻く登場人物の誰が正義かと簡単にいうことはできない。
それぞれの正義が話の流れの中でそっと顔を出していく。ムダなシーンが一つもないなと思った。
見せ方も秀逸だった。
ポスターに騙されて電話をかけるシーンでは、階段を登る女性のシルエット、直後に男性のシルエットが映るから、女の人が怖いお兄さんと一緒に来たと思った。
津野田くんが、主人公のケンカ姿に恐怖して逃げて、叱責された後に気持ちが揺らいでしまう。そのときに、泣いてる子供を見て、勢いのまま主人公のトラウマを直面化させるシーン。この男の子も捨てられてかわいそうと、こっちが思った隙をついてすぐに母親が優しく寄り添ってくる。
店長さんに対して「達に悪い客がきたら俺に任せろ」と主人公が言うシーン。思わずクスリときてしまったが、よくよく考えればその暴力で解決しようという生き方こそ、彼の生き辛さや今まで起こしてきた問題の根底にあるのだと気付かされる。一見ユーモラスなシーンだけど、それがユーモラスであるほどできるこちらの隙を、のちのち効果的に揺さぶってくる。彼の持つ暴力性がいつ問題になるのかと、最後はハラハラせざるをえなくなる。
そんな鑑賞者の想像からできる心の隙をさりげなーく与えながら、それに寄り添うようにその隙をガッチリと突いてくる。そんな見せ方がなんともいえず秀逸だなぁと思った。
皮肉?なのか?
自分なりの正義に従って生きてきたヤクザ者が、"広い空"の下で生きようとする話。
男が目の前の悪意を歯を食いしばって見て見ぬふりをしたその夜に死んで終わります。
西川監督は明確なイメージと練り込んだ脚本で知られるけど、今回ばかりは名優役所広司の演技を撮ることで手一杯だなと思いつつ観てました。
そうしたら空から降る雨に濡れた洗濯物が、取り込まれず残っているショットから続くラストシーン。
"広い空"をバックに表題「すばらしき世界」!!!
全ては監督の掌の上だったのかと。
もう降参ですよ。
ハッピーではないがバッドエンドではない。
役所広司の演じる主人公は決して良い人とは言えない。短気で粗暴で喧嘩っ早く、キレると見境がない。しかし出所後、周りの人に助けられて真面目に生き始める。そこで死んで映画は終わる。悲しい終わり方だけれども主人公が真っ当な人間になってから亡くなるのはバッドエンドではないと思った。中途半端に描かれた線だけの刺青は主人公の辛い半生(親に捨てられヤクザになるしかなかった)を象徴しているようだ。
印象的なシーンが多い。「孤児院で園歌をおばあさんと一緒に口ずさむ」「孤児院でサッカーをして子どもにすがって泣く」「雨に濡れ続けるランニングシャツと風になびくカーテン」
考えてみれば脳卒中(おそらく)で死ぬことは映画の初めから予想できるように伏線がある。物語の中で何度も発作(?)が起こり、病状が悪くなっていることが分かる。最後、花を握ったまま死ぬというのはこの映画のテーマを表しているように思う。役所広司の演技は素晴らしい。実際の三上さんはどんな人だっただろう、役所広司の演じた三上と似ているだろうか。
隣の席のおじさんが声をあげて泣いていた。僕も少し泣いた。エンドロールが終わり、照明が点いてもしばらく誰も立ち上がらなかった。
今日、思い出してまた泣いた。
愛すべき存在、三上正夫
本作は今の社会を炙り出した傑作。
三上正夫、彼は幸せなのか、不幸なのか。。
三上の生い立ちは不幸である。結局母にも会えぬままだった。人生のほとんどを刑務所の中で過ごし、まともに社会で生きたことがない人がやっと、やっとまともに生活できそうになったところのラスト。
ーーシャバは我慢の連続よ
社会は不条理で溢れている。長澤まさみ演じるテレビ局社員、介護施設の職員、あぁいう嫌な奴いるいる、あるある。
劇中の言葉通り、シャバは我慢の連続である。
そしてレールに乗って生きている人もたいして幸せでわない。だから皆んな適当に流して、そこそこ適当に生きているのだ。
私生児として生まれ母親とは生き別れ、施設で育ったという三上。本作では「愛着障害」についても触れられている。
三上正夫は優しくて真っ直ぐでいい奴。なのに暴力性、カッとなっるとすぐに手が出るなどの性質の二面性を持ち合わせている。
この悪い部分は幼い頃の環境が要因であるようなことが劇中でも出てくる。
三上も「愛着障害」によって社会にうまく適応できなかった一人であるのだ。
この世は三上のような男には生きづらすぎる、むしろ刑務所の中の生活の方が性に合っていたのかもしれない。
だけど、世の中悪いことばかりでもなく三上の人懐っこさや憎めない性格に周りの人は気付き、手を差し伸べる。
社会の不条理と矛盾とほんの少しの人々の優しさで成り立っているということを描いた作品である。
それにしてもキャスト陣が実力派ばかりだ。役所広司はもちろんのこと、伊藤太賀の演技が素晴らしかった。お風呂のシーン、あれは泣ける。
そして現在公開中の『ヤクザと家族』にヤクザとして出演中の北村有起哉、今回は反社を拒絶する役所の職員として演じていることにちょっと笑ってしまった。
誰にでも起こりうる日本の現実、だからこそ色んな人に観てほしい
元ヤクザの物語。
でも、鬱になった私からすれば身近に感じられた話でした。
瞬間湯沸かし器みたいな性格の主人公だから。元ヤクザだから、と一言で片付けられない現実が描写されています。
もし病気や事故で、社会的な時間に空白が生まれてしまったら…社会復帰に対する現実があります。
誰にでも起こりうる現実。
この映画の中にあるセリフに
人と関係を持つことの重要さを説く言葉がありますが、本当にその通りだと感じました。
フィクションな部分はありますし、めちゃくちゃ盛り上がる!という映画ではありません。
良い描写ばかりではありません。
でも、この映画を観て良かったと思います。
人は完璧ではなく、それぞれの事情があり、色んな人がいる。
それでもお互いに優しくし合えたら…と考えさせられる映画でした。
見上げてごらん夜の星を
男の背中
裸の付き合いから
人と人 ってなるよね
後半は泣けて泣けて…
なんやかんやゆうても
すばらしき世界に。。。
観た後いろいろ考えてまう なぁ、、
圧巻の役所広司やったね!(ファンになった)
エンドロール最後…
あ! 監督さん女性なんやぁー
【"人生のレールを外れた人”も、”真っ当に生きる人”も、この不寛容な世の中は生き難い。だが、それでも”広く青い空”を見上げて、上を向いて生きていこう・・。】
◆西川美和監督の、人間を見る”冷徹な視線”と”温かい視線”のミックス具合が、絶妙な作品である。
ー人生のレールを外れた人ー
・元ヤクザ三上(役所広司)の周囲の人々、
兄弟の契りを交わしたヤクザ(白竜)とその妻(キムラ緑子)が”反社”として、追いつめられている状況描写を絡ませつつ、
この作品が、観る側に”人生の生き難さ”を訴えかけ、イロイロと考えさせられるのは、
1.真っ当に生きる市井の人々の姿
・三上を支える身元引受人の弁護士夫婦(橋爪功・梶芽衣子)
-”趣味だ”と言っていたが、殺人者の身元引受人になるのは、並半端な覚悟ではできないであろう。立派であるし、この夫婦の存在が久しぶりに世間に出てきた三上を支えて居る。夫婦から供されたすき焼きを前にして、涙する三上の姿・・。ー
・非情なジャーナリストに徹しきれない、若者(仲野太賀)
- ”非情”、冷徹”になり切れない青年を好演している。流石である。
そして、彼が三上の身上について、”純粋な思い出で”書き始める姿。三上の姿に触発され、彼自身も成長していくのである。-
・役所の真面目な三上のソーシャルワーカー(北村有起哉)
- 「ヤクザと家族 The Family」に引き続いての”抑制した”熱演である。-
・ひょんなことから知り合った、スーパーの心優しき店長(六角精児)
- 良いなあ。三上を殺人者と知りながらの、あの接し方。彼の人の良さが染み出ている温かい表情、言葉に涙する。 ”今日の三上さんは、虫のいどころが悪かったのかなあ・・” ナカナカ言えないよ。-
今作の魅力の一つは、上記の市井の人々の”日々を懸命に生きる姿””が、キチンと描かれている点であろう。
そして、その人々を演じた、役所広司を始め、仲野太賀、北村有起哉、六角精児の存在感ある見事な演技であろう。
又、非情な女性ジャーナリストを演じた、長澤まさみさんの姿は、「MOTHER マザー」を思い出させてくれた。この方は、新境地を開拓しつつあると思う。
2.三上が、母と会う情報を得るために赴いた、且つていた孤児院で、孤児たちとサッカーを楽しんだ後、泣き崩れるシーン。
- 戸籍が無くても、母は恋しい・・。-
3.三上と別れた妻(安田成美)の”決して裕福そうでない”家を訪れた時に会った聡明な女の子。三上が指折り数え、”自分の娘”ではないか、違うな・・と思うシーン。
・妻と電話で交わす話。妻の優しい言葉・・。
-苦労を掛けたな・・-
4.そして、”真っ当に生きる人々”が、三上の介護施設への就職を祝い、集まるシーンで、”ホロリとし・・”
5.知的弱者を苛める、施設員達に対する三上の態度の”西川監督の描き方”に唸らされ、
6.知的弱者の若者が、台風が近づく中切り取った、三上に渡した花束。
その花束を、”真っ当に生きる人々”から、就職祝いで送られた自転車の籠に入れ、嬉しそうに家へ向かう、三上の笑顔。
<あのインパクトある ”三上が、花束を手に横たわる画” の手のフォーカスシーン。
母に捨てられた三上の人生は、厳しく報われない人生だったのだろうか?
彼は様々な犠牲を払い、罪を償い、”青い空が広がる世界””に、自らの努力で出てきた。
そして、”厳しき毎日”を”真っ当に生きる人々”の温かさに、僅かな時間ではあったが、触れる事が出来た。そして、彼らに対して何らかの影響を与えた。
彼は、確かにこの世で、必死に生きたのだ。
私は、彼の波乱万丈な人生の最後年は、幸せな日々ではなかった・・かと、思うのである。
今作は、西川美和監督が、”人生のレールを外れた人”、”真っ当に生きる人々”を取り巻く社会の厳しさ、不寛容さと、温かさを、見事に描きだした作品であると思う。>
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