すばらしき世界のレビュー・感想・評価
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見応えのある邦画
秀作を送り出している西川美和監督の最新作であり、予告を見て興味を惹かれたので鑑賞。
俳優陣は上手い方々ばかりで撮影も編集も素晴らしかった。
物語としては長い間獄中にいたヤクザが現代社会に馴染もうとするも馴染めないというこれまでも何度か見たような物語だった。
良くも悪くもすぐカッとなる性格で喧嘩っ早い、真っ直ぐだけど融通が効かない主人公を役所広司が演じている。
この手の物語は客観的に見ると、要領良く出来ず自分で自分の首を絞めていくのがこれまでよく見た展開だ。
この作品もやはり大筋は同じ展開で節目節目で問題を起こしそうになるが、周りの人達がどこか優しく元殺人犯の三上を支えて力になってくれる。
そこが今までの作品とは少し違うが、難しいのは周りの人達が優しいと三上の行動が愚かに見えてしまう所である。
教習所の受付で怒鳴ったり試験で無茶な運転をしてしまったり、彼を想ってアドバイスしても凄んだりするのは、立ち直りたいのか、ただ頑固なだけなのか、途中感情移入出来ずにイライラしてしまった。
ラストの自分を殺して社会に適応出来たあと死んでしまうのはなるほどと思った反面急だなと思ってしまった。
総評としては良かったが、少し残念な所も散見された。
やくざ=反社会的勢力ですよ。これでいいの?
生きづらいこの世界にやくざという受け皿が必要なようにしかこの映画は見えないがそれでいいのか??やくざって今でいう反社会的勢力ですよね。そもそものお話としてこれで良かったのだろうか??
前半、彼の価値観が見えない30万円の金時計を捨ててくれという意味のわからない記号的なくだりからやばい匂いがした。捨てないでしょうやくざっていう人種は。昔の時間を捨てるという記号的なことなの??
なぜ、防具を縫うとか訳わからないことを言っている主人公にこそこそ話ではなくて本人に今はもう無いからやる気がある人を受け入れてくれる会社を探しましょうと言わないのだろうか??
テレビくらいしか情報源がない我々でも出所した人を受け入れてくれる施設や職場があることは知っている、橋爪功、梶芽衣子夫婦はどういうひとたちなんだろうか??馬鹿なのか?悪い人なのか?
運転免許が必要と強引に物語を縛るが??免許無くてもできる仕事をなんで誰も探さないの?
主人公はその考えで進んでもいいだろうが、周りの人間をそこで縛るのはあまりに無理があるのでは無いだろうか??スーパーの店員??市役所職員??
そもそもこの年代のやくざは車屋関係の知り合いが多い、一発で免許とること難しいと知らないのだろうか??免許センターの大きくてを降っての行進は本気か?やくざの頃の主人公がただの馬鹿以外背景は何も見えない。
取ってつけた下りはあったが。
結局は堅気の世界にお金を持たして帰れと言ってくれるやくざの嫁のキムラ緑子以外は全員悪人に見えた。そういう映画なのだろうか??
時代に置いていかれているであろう表現が随所にあるが、、、
熟女のバイト募集のポスターに電話するが、あんた昔貼っていた方でしょうがと突っ込んでしまう。
あんなところに貼ってないし。。。
「身分帳」あまりこの映画では意味を成していない、母親を探すだけなら誰でもいつでもいいしテレビマンと繋げることも居酒屋でも万引き未遂でも最初の下の階の住民との喧嘩でもいいだろうし。
うまく生きて行けない人を描きたいのなら主人公がやくざである意味がこの映画には見えない。
この映画に浅はかな作り手の恐怖を覚えた。
「すばらしき世界」で生きる人間側から主人公を見てしまうと…
しかし、まあ、なんというか、みんなこんな感じの問題定義するような、社会への皮肉を込めた人間ドラマ好きですね。
いや、役所広司はすごかったし、他の演者もよかったし、映画としては悪くないと思うよ。
ただ、同時に三上のことはずっと好きになれなかったし、三上のような人間を美化して肯定している感じがして気分が悪くもあった。
犯罪を犯した人にも更生の機会を与える社会であるべき。経歴などで評価せず、人物を見るべき。そうでないと再犯してしまう状況に追い込んでしまう。わかりますよ。
でも、犯罪者に傷つけられた人や遺族の心や体の傷は、服役を終えたからと言って癒えることはないですよね。どんなに反省しても後悔しても、更生しても、犯した罪を取り消すことはできないですよね。犯罪者によって傷つけられ、今もまだ苦しんでいる人がいるのだから。
被害者でなくても、自分が六角精児だったらあんなに優しくなれない。テレビの取材について忠告するシーンなんて自分だったら深く傷ついたと思う。人間不信になるわ。
三上って悪いヤツだけに鉄拳制裁!とか同じはぐれもの同士の抗争!という感じではなく、普通の人へも容赦なく暴力・恫喝ってタイプですよね?
すぐに声を荒げて暴力や恐怖で人を支配しようとする。たとえ幼少期の傷がそうさせていたとしても、そんな人が善意の人間を傷つけてよい道理なんてあるのだろうか?
ラスト前の介護施設の話も、現実的には他にやり方あるよね?暴力か見て見ぬふりかの二択って!
信念を曲げて、見て見ぬふりをして、周りに媚びながら生きていく素晴らしい世界への皮肉もわかりますが、彼の正義は彼が気に入らなければ他人は傷つけてもよいという価値観が根底にあるため、共感できませんでした。
そんなこんなで感情移入できずに終わってしまった。この手の映画は自分には合わないのだろうなと、改めて感じた映画でした。
バランスの良さ◎
脚本は社会への問いかけでありながら、ハートフルに展開。登場人物は不足がなく無駄もありません。豪華な俳優陣の最高な演技は、このバランス取れた2時間を最大限に輝かせており、包み込んでもいます。
映画館はほぼ満席だったので、久しぶりに最前列のチケットしか取れず、画面が大きすぎて観にくいな、、、と思いましたが
空や海や雪景色や都会の夜景色などが大きく綺麗に、まるで自分がそこにいるかのように観られたので良かったです。
短いけれど景色の美しさを感じるカットは、やっと娑婆に出た三上さんへ感情移入するのに十分でした。
娑婆の開放感といえば、すき焼きや卵かけご飯が、とても美味しそうに写っていたのも印象的です。
ほとんどの人が同じかもしれませんが、背中を洗うシーンで思わず涙。津乃田くんの表情が素晴らしかったです。
そこからは「素晴らしき世界」へ向かう怒涛の展開。
映画をほとんど見ない旦那は「最後、突然死んじゃったね。映画ってそういうものなの?笑」と言っていましたが笑、
「人は人に助けられて必ず幸せになる」という断言的なメッセージを作らないためにも、また、「良い人だったのに死んじゃったっていう悲しい話」にしないためにも、必ずなければならないそっとした死、だったのだと思います。
とにかくわたしはチョロいので、この映画で中野太賀くんを好きになってしまったのでした。(チョロ……)
リアルな描写に溢れていた。
誰かが特別優しいということはなく、多くの登場人物が等身大に優しくて、そして精一杯生きていた。
そんな人間らしさを緻密に描写した作品だった。
悲しい結果にはなってしまったが、必死に生きる主人公に対して色々な人が優しさを向けていた。そういう意味では「すばらしき世界」だったのかもしれない。
役所広司の笑顔で人を殺しそうな怖さ全開
何を言っても話の通じない人っているじゃない?
冒頭の三上は自己中心的で自分以外の人間には興味がなかった。
自分本位な考え方からくる行動で空回り。
相手が思うように従わないと逆ギレ。
思考回路はまさに中学生だった。
物語が進むにつれ、自分に力を貸してくれる人間が増え、信頼してくれる人間がいることから理性をコントロールして社会に順応していこうとする。
ただ、その世界は自分の思うような価値観の通用しない世界。
自分が今まで否定してきた世界で、自分が息をしていることに気付かされる。
いったい、誰にとってのすばらしき世界なのか?
世界から三上と言う男がいなくなって、犯罪者が一人死んで、社会的な秩序が一つ正常になったすばらしき世界。
自分がしたくない同調から外れて、他者を蔑んだりしなくてすむ世界に旅立つことのできた三上にとっての、すばらしき世界。
タイトルが最後に映し出されることによって、このタイトルは本当は誰にとってのタイトルなんだ?
と考えてしまう。
社会の中で生きるとはどう言うことだろう。
自分の生き方や考え方は他人と比べて、少しはまともだろうか?
自分の生き方や価値観を他人と較べる必要性なんてあるんだろうか?
などなど、見終わった後に自分の生き方を問いたくなる作品でした。
今回の話では死んで綺麗に終われたけど、現実ではあんなに都合よく死ぬなんてことはまずありえない。
三上が生きていたら、いつかまた人を殺すかもしれないし、殺さないかもしれない。
人との繋がりが三上を人間の大人にするかも知れないし、そのために自分の中の何かを変化させていくかもしれない。
これから、人生の風向きが変わるかもしれない。と言うところでのラストだったので、なんとも後味が悪い。
後味というよりも、綺麗にまとまりすぎてしまった感はあった。
ともあれ、劇場でこの居心地の悪さや何か起こるのでは?と言う緊張感を味わえたのは面白い。
Whats a W〇nderful W〇rld!!!!!????
内容は、まあ若干、昭和な感じで。(笑)
ザ 映画って感じで。
懐かしい映画。
ナツムビ!!!???(笑)なのかどうなのか。(笑)
脚本的にはもっとギャグを入れて、ノリ的には、お金がないのように
あそこから、立ち直り、成功して、また、そこそこ落ちて、静かになるような
そんなストーリーがいいようなどうなのか。(笑)
途中の、うるさい民家にいったときなども。(笑)
メンドクサイから、110番して、警察を利用するような、したたかさみたいなギャグ感が
欲しかったり。(笑)(笑)
生活保護をとりつつ。トントンの居酒屋を開店して。
ネットワークで、いろいろ借りたりして、サクセス感の場面がほしかったり。
続編に期待??しておりまする。△(笑)(笑)
役所広司の役のみせ所
ベタなレビュータイトルですいません。
しかし、それ程までに脱帽した。役所広司以外に誰ができるのか。
気が短くて正義感もつよくそれでいて真面目な主人公を見事に演じきった!
私が一番好きなシーンは高齢者施設でイジメをしている若いスタッフがやる同僚障害者のモノマネに対して、葛藤がありながらも放つ一言、「似てますね」この表情。この顔できる役者さん他にいますかね。
あと、原作が事実に基づいたものなのでしょうがないですが、最後は亡くならないで欲しかったですね。幸せになって欲しかったな。
役所広司が強すぎたかな〜。
13年の刑期を終えて出所した元ヤクザの主人公(役所広司)が、元受刑者への風当たりの強さに苛立ち、ぶつかりながら、生きる様を描いた人間ドラマ。
役所広司のまくしたてる九州弁に勢いがあって良いですよね。実年齢は65歳と初老なのですが、それを感じさせない体のキレと精気。こういう中年ヤクザの役はピッタリ。
物語としては、主人公の「生きづらさ」がテーマ。でも、この作品が本来伝えたかったには、この元受刑者を通して、もっと世間一般的な生きづらさ、だったのかな〜、と。役所広司の真っ直ぐな生き方に対して、ケースワーカーは上司が、ルポライターは長澤まさみの演じるテレビ局、という「カセ」がある。そこで、役所広司に感化され、生き方を再発見する、って作品だったのでは?と思います。
そんなところが見え隠れするのですが、役所広司の存在が大きすぎて、映画としては「はみ出しものに厳しい世間」でまとまってしまったのが、少し残念。
Whats a Wonderful World〇!!!!????
演技が生々しくて。(笑)
不器用さに、イライラしながら。(笑)
その演技力が凄い!!!!???(笑)(笑)
内容は単純で。(笑)
お金がなくて、プライドが高くて。
自立心は旺盛だけれども、それが若干あだに。(笑)(笑)
年末に観たいかも。(笑)(笑)
今夜は三上正夫のお通夜です
この映画には全部ある。
しかし、少しも欲張り感が感じられない。
最近の「ヤクザと家族」、「ニューヨーク親切なロシア料理店」や「私はダニエル・ブレイク」などにも通じる隣人同士の助け合い、社会福祉制度の弱者救済の矛盾、暴対法の影響、元受刑者の雇用問題、養護施設内のいじめや虐待、特別養子縁組など、さまざまな問題を複合的に絡ませていたのにもかかわらずだ。
30年前の佐木隆三のノンフィクション小説を現代に合わせた脚本にすることにみごと成功したと思う。
役所広司の人間味に溢れたオーラは見ごたえあって、お見事だった。
橋爪功と梶芽衣子の取り合わせ。白竜とキムラ緑子。元妻の安田成美。運転免許試験場の警官役の山田真歩。それに宮城県出身のソープ嬢など女性陣が実にいい。長澤まさみも持ち前のキャラが立っていて、津乃田龍太郎(仲野大賀)の弱さを際立たせる。
「三上さん、フイにしたらいけんよ」と出所祝いを握らせて、逃がすキムラ緑子姐さん。「裟婆は面白いことはなか。だけど、見上げる空は広かいいますけん」
白竜が出かけた後、徳利の酒をあおり、三上に言った「元気のでるクスリ入れますか?」は本気だった気もする。変な空気の後、三上は「今じゃ、降圧剤が一番のご馳走ですけん」と返す。実に味のあるセリフだなぁと感心しきり。
ヤクザと家族では男を磨くための任侠道を声高に唱える若頭役で出ていた北村有起哉が福祉課のケースワーカー役。 三上がパンフレットの隅々まで逃さず読んでいて、知事への不服申し立てについて言及した時、私はこの件をまだ私の上司にも報告してない。それなのに、今、申し立てされたら。私の立場ってものがありません。の場面。極めて冷静だったのが、必死にやっているんですよと本気度が伝った。
スーパーの店長役の六角精児(町会の役員でもあるらしい)。レジで支払いを終えて店を出ようとする三上正夫が万引きしたと従業員から上申され、スーパーの事務室で応対することに。手提げ袋をひっくり返し、「この中にあんたの店のもんが一つもなかったら、とげんしてくれるかね」と啖呵を切る三上。憤慨のあまり、買ったものものまで置いて出てゆく三上を追いかける。自身の父親のはなしをするうちに、同郷であることが判明。三上のアパートに上がりこんでの会話。免許がとれたら、知り合いの配送業者を紹介するという店長の松本。打ち解けて、陽気になった三上が言う、「昔はホステスの送迎なんかもしとりました。体が覚えちょるけん、取れたら、楽勝ばい。店でトラブルおこす客がおったら、いつでも呼んでください。警察は民事不介入やけん。手癖の悪かモンがおったら、オレに任しとかんね」には、大爆笑。
運転免許実地試験(仮免)の場面は昔の悪夢を蘇らせてくれた。アルバイトをしながらで、春休み中に仮免に受からなかったわたしは、夏休みになっていきなり仮免実地試験を受けた。初っぱなから、ガックン、ガックンで、玉砕。その日の午後、もう一度受けたら、受かってしまった。度々、判子をくれなかった最もソリの会わなかった意地悪教官がわざわざ「お前、奇蹟だな」と言ってきたぐらいだ。40年前の話。仮免は多くの人にとって共通する試練だった。あの頃は教習所に通う男に人権なんてなかった。バイクの教官が生徒に蹴りを入れるのなんて当たり前だった。
「すばらしき世界」は現代社会に対する強烈な皮肉でありながら、それでも人間に対する慈愛と肯定に満ち溢れている。
映画の最後に持ってきた題名。やられた。カッコよすぎる。
監督によほど自信がなきゃできないんじゃないかな~
星6つにしたいぐらい。
消えゆくものへのシンパシーを胸に抱いて、亡くしてしまった日本人をこの目に焼き付けておきたいと思った良作でした。
間違いなく傑作だと思う、が…。
賞を取りそうな感じの作品。
役所広司の演技がすごい。本当にそんな人物が存在するかのよう。
後半、仕事も見つかって、感情も抑えることができて、元妻からも連絡があって、ハッピーエンドが見えて来て、私も「明日から仕事がんばろう!」と思った矢先、「えっおいそれはないだろう」というエンディング。
『私はダニエル・ブレイク』も、最後主人公は死んじゃったけど、それに倣う必要はあったのかなあ。
シンプルに伝わる心情
上手く表現することができないが、それぞれの役の心情はシンプルに表現されているように思える。それはおそらく見る人がスッと納得できるように計算されたものなのでしょう。
この映画は現実的で、違和感なく見ることができた。登場人物同士の心からの接近は、とても時間のかかるものと思いますが、それを上映時間中にまとめられているところから最後の津乃田の悔しさは非常に良く伝わる。
最後によくこの映画を考えたところ、死刑制度について考えさせられた。それについては何も言わないが、現実的な映画であったことから新しい心情を得たと思う。
悲し過ぎる現実、そして結末
昭和に書かれた原作を二時代超えても今なお変わっていない現実。もちろん反社会に入り込み抜け出せない主人公の自業自得的なところは否めないものの、そうじゃなくても社会に馴染めない人たちに手を差し伸べることで光が見えるエンディング、例えば『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』のように、書いた本の出版シーンに被って津乃田が走るところが観たかったと期待してしまった私自身あまちゃんでした。
三上(役所広司さん)の身許引受人、庄司弁護士夫妻(橋爪功さん、梶芽衣子さん)、ライターの津乃田(仲野大賀さん)、スーパーの松本店長(六角精児さん)、役所の井口(北村有起哉さん)5人の素晴らしき人たちに支えられ、元妻(安田成美さん)との再会の約束を心から喜ぶ姿になんとかならなかったかな、というのが正直な気持ちです。自分の中で何かが開いた津乃田がある意味純粋な三上の背中を流しながら言った台詞が重く心に響きました。
支えてくれた人たちに報いるため介護施設内で三上が必死に耐え、無理して笑うシーンは苦々しく思ってしまいました。いい役者さん揃いでしたがその中でも役所広司さんの圧倒的な存在感に改めて感動しました。
あと味はよくありませんが今の日本人、特に政(まつりごと)に携わるお偉き方々に是非観てほしいと思う、本当に考えさせられる映画でした。
何のために生きるのか
役所広司演じる元ヤクザものには正直言って共感できないところも多い。
一般社会からリジェクトされても仕方のない面もあるだろう。
いや、そうされて然るべきとすら感じる。
そうしてしまうことによって生じる悪循環がこの映画のメインテーマなのだろう。
序盤はそれが延々と描かれ、間延びした感じがした。
後半は一転して急展開。
個人的にはこの部分に時間を割いて欲しかった。
この「すばらしき世界」では正しいことをしても社会からはじかれかねない。
特に脛に傷を持つ身ではそうなる。
恩ある方々に報いるために自らの信念を曲げて、
自らと同じく「すばらしき世界」では生きにくい心優しき仲間を見殺しにする。
そして、その仲間からもらった花を握りしめて逝く。
さぞ無念だったことだろう。
その心情を思うと涙なしにはいられなかった。
自らの正しい信念を曲げて生きなくてはならない「すばらしき世界」、
こんな「すばらしき世界」に生きる意義はあるのか。
何のために生きるのか。
くずどもを殴り倒してはいけない「すばらしき世界」に嘆息した。
私もある意味反社なのだ。
牙を抜けきれない男との出逢い
牙を抜けきれない男が社会に出て感じるジレンマや葛藤、喜びを淡々と描くことで、社会で生きることの難しさを描いた良い作品だと思います。
彼の想い(人生)は最後に叶った(満足)のか分からないけど、大切な思い出とする人が多くいることが彼の人生を満たしてる気がします。
この男を演じる役所広司さんの凄みも感じられる作品です。
すばらしき世界って本当は、、、
2021年、初の映画館での鑑賞作品。
お見事!ナイスチョイスわたし!と大満足。
原作は30年も前の実際に存在した男をモデルにした
小説だそうで。うまく現代に置き換えて作品は作ら
れており、最初から最後まで飽きることなく鑑賞。
主人公の三上を演じた役所広司さんは、たくさんの
作品に出演している日本を代表する役者だが、まだ
まだこんなにも観客を満足させてくれるのかと、そ
の存在感と演技力に驚かされる。
主人公に関わる、周りの役者もとても素敵で、仲野
太賀さんは、名演。私的には、三上の昔の繋がりの
あるヤクザの兄貴(白竜)の奥さん役のキムラ緑子さんがこれまた最高。
彼女が三上に伝えた言葉、
「シャバは我慢の連続。我慢したって大して良いこ
とはないけれど、空は広いって聞くよ」
この言葉がとても印象的だった。
我慢の連続である世の中だが、広い世界の中で生き
ていれば、いろんな可能性と出逢えるのだと。
三上の周りに少しずつ人と人の繋がりができていく
前のシーンだった。
就職先が決まった三上を、みんながお祝いするシー
ンは気持ち悪いと感じたが、それが今自分が暮らし
ている社会のあるあるだなと。正直者が馬鹿を見る。
そんな気がして、とても悲しい気持ちになった。
三上のように、実直で正義感にあふれた人間にとっ
てこの世の中は生きにくい。彼がもう少し当たり前
の愛情をかけて育ててもらっていれば、生き方は違っ
たのかもしれない。
もう一つ印象に残ったシーン。
福岡の昔の仲間に連絡した後、風俗嬢のリリーさん
とベットで横になって話をする。
三上がリリーさんの子供の話を聞いて「お母さんや
ね」と声をかけるシーン。その表情があまりにも穏
やかで優しくて。
三上にとって母親という存在がどれほど大切な存在
かその表情から伝わり、心が締め付けられた。
タイトルの「すばらしき」がわざわざひらがなであ
ることが気になり、「すばらしい」の語源を調べて
みた。
「素晴らしい」は、漢字を見ると、「晴れやかな気
分にさせられる」といった意味が浮かぶが、これは
後世の当て字だそうだ。「すばらしい」は、縮んで
小さくなるという意の「窄む(すぼむ)」や、「み
すぼらしい」などと使う、すぼまって狭いという意
の「窄し(すぼし)」と同源であり、もとは「あき
れた」とか「ひどい」という意味で使われていたの
だという。
↑ネットで検索。
これを見て、納得。
西川監督の意図はこれにひっかけているのかどうか
はよく知らないけれど、タイトルは皮肉のように使
われていて、現代社会に生きる私達に問いかけてい
るのでは?と感じた。
我慢の連続。それでもこの世はすばらしき世界な
のか?
三上の最後のシーンが答えなのか。
とにかくまた面白い映画に出会えてよかった。
どれだけ世界とつながっていられるか
前半は少しコミカルなタッチで、しかし後半にかけてどんどん引き込まれるシーンの連続だった。介護施設でのシーン、介護士の服部と障害を持っているであろう阿部のやり取りを、主人公三上が見つめる。そのあとのシーンも含めて最高のシークエンスだと感じた。
パンフレットに付属する脚本には上記シーンで「社会に適応するために、人間性を、捻じ曲げた」と書かれている。それまでの三上は自分の目から見た世界、主観的な世界だけを世界と認識して生きてきたのだと思う。彼の正義は一方通行で、ある意味身勝手なものである。「お前らみたいな卑怯な連中に混じるくらいなら死んで結構たい。」三上の言葉にはなぜ「お前ら」が「卑怯な」行動をとるのかに対する思慮がない。それは「お前ら(=我々)」が「弱い」からであるが、「強い」人間である三上はその弱さに対する配慮がない。彼は強くなるために、生きるために、弱い人間、つまり過去の自分を否定し続けなければならなかった。彼が歩んできた人生が、彼の視野をより狭く、より強固にしてしまったことが、一つ一つのカットから読み取れる。三上を「強くならざるを得ない存在」に育て、かつ、「弱い者」への配慮を徹底的に欠く存在に仕立てたのは、まぎれもなく彼の幼少期の環境だろう。津乃田の目に映る、母を求めて泣き叫ぶしかない男の子はまさに三上自身だった。男の子は母親によって見つけられたが、三上は母に迎えに来てもらえなかった。そんな男の子が、三上のような強く悲しい男にるしかなかった人生を想像させる、秀逸なカットだった。
原作のタイトルである『身分帳』も、我々、つまり三上にとっての世界が一方的に彼を見たものの象徴である。彼がなぜそうなったか、なぜそのような行動をとるのかへの思慮はない。表面的に切り取られた殺人犯三上という人間がそこには描かれている。それは一方的で、身勝手な見方である。観客の目線を代表する津乃田も、始めはその見方しかできない。彼もまた三上を一方的に切り取り、はじめはその存在に恐怖し逃げ出す。しかし「あんたみたいなのがいっちばん何にも救わないのよ」と言われながらも、結局は逃げずに三上に寄り添う。それは彼が「何も救えない弱い人間」だからであり、だからこそ三上の弱さに寄り添えたのだろう。三上は津乃田という「弱い人間」に寄り添われて、自身の弱さと向き合っていく。彼がシュートを決めた男の子を抱きしめ嗚咽するシーンは「弱さを受けいれる」シーンだと、私は解釈した。
そして介護施設でのあのシーン彼の人間性は、イメージの中で服部を殴りつけたように変わっていない部分もある。だから「人間性を捻じ曲げる」という表現は正しい。しかし私にはあのシーンは、人の弱さに気づき、本当に強い人間となった三上の、弱い人間たちへの配慮のように見えた。服部もまた弱く、阿部もまた弱い。障害を持つ阿部を嘲笑する服部の「似てるでしょ」に、「……似てますかね」と頬を震わせながらひきつった笑顔を見せる。一方的に身勝手に押し付けるのではなく、相手に問いかける。真に強い人間の態度だと感じた。
登場する登場人物が、どれも強さと弱さを抱えたキャラクターとして描かれている。その人々作り出す良いも悪いもないまぜになったこの現実こそ「すばらしき世界」なのだろう。このすばらしき世界で私も懸命に生きなければならない。
西川監督もおっしゃっていたが、切り札役所広司のあまりのジョーカーっぷりにマイナス0.5させていただきます。
すばらしきまま彼は旅立つ
緊急事態宣言で20時で終わる映画館は
やっぱり行きづらいもんでなかなか時間作れませんでしたが
やっと観賞
殺人罪で13年服役して社会に放り出された元ヤクザ
三上正夫が自分の立場から娑婆の生きづらさに
直面しながらも生きる意味や生きる誇りを
探しながら覚悟を見つけていく物語
まず役所広司の手のうちに入れた演技が絶妙
シナリオ自体はそんなにややこしくなく
序盤から描写される三上の異常な高血圧と
いった描写からああ最後は死ぬんだなと
想像できますが三上のそれなりに社交性もあり
整理整頓や細かな仕事も刑務所で身に着けては
いるものの曲がったことが嫌いで
短気な性格とどこか暴力に対する意識が
希薄なままのキャラクターがすぐ
理解できるので移入度はなかなかのもの
そんな彼の周りには最初は色眼鏡で見たりした
ものの徐々に三上の屈託のなさに絆されて
彼を支援していく人々が増えていく様子が
さながらファンタジーに見えてしまいますが
娑婆の我々も見ている世界がそんなに奇麗なわけでは
ないことに気が付きます
そんな三上に目を付けたテレビマンが
しがない小説家志望の津乃田に彼の生い立ちを
記した身分帳の写しを送り付け取材させ
ドキュメントに仕立てようとします
しかし津乃田はその書類から三上に興味を持ち
その性格の問題点にも触れていき
三上を糾弾してしまいます
…この津乃田のキャラクターがちょっと弱い?
彼が身分帳から三上の複雑な生い立ちに
興味を持った感じはわかりますが
津乃田自身の生い立ちなどと
どう相関があるのかという描写が
ないため突然三上に協力的になったように
見えるご都合的展開にも感じる部分がありました
印象的だったのは一時的に頼った福岡の
旧友ヤクザの姐さん
もうヤクザではやっていけないことや
三上のもう堅気になる道を選ぶよう進めて
警察沙汰から逃がす場面は涙を誘います
こんな優しい人たちが本当にいるのかは
わかりませんが他人でもより良い内面を知る
機会があればこれくらい優しくすることは
出来るのかもしれませんね
なかなか他人の内面をそこまで理解する
機会やスキルが失われている現実が
あまり関わろうとしない社会を生んでいる
のかもしれません
少しでもいいことをしようとする人がいると
偽善問う言葉が口を突いて出てきてしまう人
けっこういますよね
友人にも生活保護課の公務員やってる人が
いますがなんでも申請を断りたいわけではなく
今は仕方がないが仕事に復帰したいという意欲を
持った人が来ると全力で応援してあげる気持ちは
持っている(けどなかなかそういう人がいない)
と言っていました
結局自分の持っているやさしさを食い物にされる
のが怖いという部分もありますよね
でもそういう気持ちを前面に出せたら
この映画のような人々がすばらしき世界を
作ることができるかもしれません
三上は幸せの最高潮で逝きましたがそれが
幸せなのかかわいそうだったのか
観る人で色々と変化のある映画だったと思います
観てよかったです
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