すばらしき世界のレビュー・感想・評価
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タイトルなし(ネタバレ)
殺人の罪で13年間、旭川刑務所に服役してきた三上正夫(役所広司)。
懲役10年の判決だったが、刑務所内での問題行動により、服役期間が延びたのだった。
身元引受人は東京の弁護士の庄司(橋爪功)。
幼い頃、生き別れた母親の行方を知りたかった三上は、その捜索を助けてもらいたく、刑務所内で書き写した「身分帳」をテレビ局に送付していた。
それに目をとめたのが女性プロデューサーの吉澤(長澤まさみ)で、彼女は「身分帳」を、映像ディレクターの津乃田(仲野太賀)に渡して、三上の取材をすることを企画する。
小説家に転向を考えていた津乃田だったが、元殺人犯への取材ということで乗り気になり、三上に向けてカメラを回すことになった・・・
というところからはじまる物語で、このように書くと、なんともヘヴィな社会派映画を連想するが、映画自体から受ける印象はそれほど重くはない。
(といって、かなり重いテーマが含まれているのですが)
映画自体を重苦しさから救っているのが、役所広司演じる三上のキャラクター。
4歳で母親に捨てられ、14歳でヤクザの組に出入りするようになり、すぐさま少年院に収監。
その後、何度も塀の中で過ごし、人生の大半がムショ暮らしだった三上は、
「真っ直ぐ」で「曲がったことが嫌い」、「思いやりもある」が「癇癪持ち」、つまり、裏表のない性格。
たしかに、怖いことは怖いが、どことなく人好きのする憎めない性格でもある。
このキャラクター、かつて観たような・・・
そう、車寅次郎、寅さんだ。
そうみると、周囲の人物配置も『男はつらいよ』に似ている。
身元引受人の弁護士夫婦(妻役は梶芽衣子)は、団子屋・くるまやのオイちゃん、オバちゃん。
映像ディレクターとしての正念場のいざという時に逃げてしまう津乃田は、甥の満男(彼は、寅さんとは表裏の関係で、その内面は実はよく似ている)。
口喧嘩のような言い争いまでして親身になってくれるスーパー店長(六角精児)は、タコ社長。
役所のソーシャルワーカー(北村有起哉)は、公的立場であるので御前様。
そして結ばれることのない永遠のヒロイン妹・さくらは、別れた妻(安田成美)といった具合。
(念の入ったことに、寅さんの母親と同様、三上を棄てた母親も、元芸者!)
三上をとりまくひとびとは親身になって、彼が堅気になることを願っている。
しかしながら、世間はそれほどやさしくない。
元ヤクザ、元殺人犯を簡単に認め、赦すようにはできていない。
まさに、三上はつらいよ、である。
そんな優しいひとびとがいても、生きづらい三上は、世間から逃げ出してしまう。
もと居た世界、兄弟分(白竜)を頼って九州へ逃げてしまう。
(とらやで喧嘩した寅さんが、旅の空へ戻っていくのと似ている)
けれども、元の世界はもっと生きづらい。
姐さん(キムラ緑子)が言う台詞が、この映画の肝だろう。
「世間で生きていくのは我慢の連続だ。けど、空は広く見えるっていうよ。それを、ふいにするのかい」と。
ここで、三上は、生きづらい世間へ戻っていく。
我慢の連続、逃げるのも恥ずかしいことじゃない、自分のいちばん大事なところだけを曲げなければいいんだ、と諭されて。
介護施設でのパートタイム仕事を得た三上は、その現場で嫌なものをみてしまう。
施設で働く知的障がいの若者を、施設の正職員が詰っているのを。
若者に非はあるが、若者の行為をなじるのではなく、彼の存在を哂う世間を・・・
その哂いの底では、自分と同じ立場の者をわらっているのを知りながら、黙ってこらえ、自分自身を欺いてしまう・・・
自分を欺いてまで、この世間で生きているのだろうか?
自分を欺て生きているこの世界は、「すばらしき世界」なのだろうか?
その言葉を掲げるように、映画は「広く見える空」を写して出して終わります。
「すばらしき世界」、映画のタイトルは願いなのだろう、と感じました。
”普通”って何だろう?と考えさせられました
映画らしい映画だと思いました。こういう作品をもっと見たいな〜って。
僕は歌にせよ絵画にせよ映画にせよ、芸術とかアートとかに分類されるものは社会批判や政治批判、問題提起などと親和性が高いと思っています。
ジョン・レノンは国境のない世界を歌いましたし、パブロ・ピカソは戦争の悲惨さを描きました。映画でも、アメリカン・ニューシネマは“ベトナム戦争に邁進する政治に対する(中略)反体制的な人間の心情を綴った映画作品群、およびその反戦ムーブメント”(Wikipediaより抜粋)で、『真夜中のカーボーイ』『ダーティハリー』『時計仕掛けのオレンジ』などたくさんの名作が生まれました。日本なら大島渚監督などが作品を通して社会や政治を痛烈に批判しました。
僕はこれらの作品が好きなので、何らかの思想や問題提起のある映画こそ映画らしいと感じます。写真とか絵画とかでもそうなんですが、美しいものを美しいと描くのではなく、美しさの中にある狂気を描くとか、ドブネズミのもつ美しさを見出すとか、そういう気づきがもらえたり考えさせられたりするような作品が大好物です。
で、この『すばらしき世界』は、前科者が社会復帰をすることやヤクザが足を洗うことの難しさや、“普通”の人の正義への疑問が、批判的な目で描かれています。こういう映画がちゃんと作られて(制作費がついて)もっとたくさんの人に観られ評価されるようになると良いですね。
この物語の主人公は、元ヤクザの三上という男です。殺人による13年の刑期を終えて塀の外に出てきます。彼の望みはカタギになること。普通の仕事をして普通の生活がしたい。ただそれだけです。
ですが社会はそれを許してはくれません。
まず仕事が見つかりません。健康状態が悪い上に、刑務所で習った剣道の防具を作る技術は需要がありません。そこで運転手の仕事をしようとしますが、13年の間に免許証は失効しており、ブランクが長いので運転免許試験に合格することもできません。
それに彼には大きな欠点があります。本当は優しい男なのですが、曲がったことが嫌いで放っておけず、すぐにケンカを始めてしまいます。彼にできることはケンカだけなのです。しかも一度スイッチが入ると自分で歯止めがかけられず、やりすぎてしまいます。
そのため徐々に打ち手がなくなっていき、ついには応援してくれている人たちとも口論になったりして、孤立してしまいます。
そして追い詰められた三上は、とうとう九州の兄弟分に連絡をします。やはり元ヤクザはヤクザに戻るしかないのでしょうか。
しかし九州に行って目にしたのはヤクザの現実です。本当はカタギになりたいと思っているのになれなくて、仕方なくヤクザをやっている人間が、たくさんいるのだと分かります。
兄弟分のピンチに駆けつけようとしたところを、兄弟分の妻に止められ、何とかヤクザに戻らずに済んで、三上は東京に戻ります。
東京に戻ると、ケースワーカーが介護施設の仕事を紹介してくれます。パートタイムですが、ようやく働き口が見つかり、友人たちがパーティーで祝福してくれます。
その場で三上は揉め事を起こさないことを誓うのですが、友人たちのアドバイスが「私たちもっといい加減に生きてるのよ」「逃げることは敗北ではない」「逃げてこそ、また次に挑めるんだ」といったものです。
そして三上が働きだした介護施設で、健常者の職員が障害を持つ職員を差別している現場に居合わせますが、三上は怒りを抑えて何とかこらえます。
果たして三上がこらえたのは正しかったのでしょうか。”普通”の人たちが三上にした「逃げろ」「いい加減になれ」というアドバイスは正しいのでしょうか。
それが正しいのだとしたら、何か嫌だなと僕は思いました。
最後は、仕事も見つかり、友人たちには祝ってもらえて、元妻からも連絡があり──三上は世の中捨てたもんじゃないと実感することができたことでしょう。多くの観客たちもそう思ったと思います。「だから『すばらしき世界』っていうタイトルなんだ」って。
しかし何か嫌だなという気持ちも残っています。「世の中捨てたもんじゃない」と思える一面もありながら、同時に「世の中これでいいのか?」と思ってしまう二面性があるのがこの映画の魅力じゃないかと思います。
人生の免許試験は一発勝負。
議論そのものの映画でした。
原作は古いみたいだけど今時こそ映画として蘇る意味があると感じた...色々考えさせられた、監督に感謝。
最初は、単純に刑期を終えた男が社会のマイノリティとして受け入れられない話だと思ったが、
それ以上だった。
色んな人が男に手を差し伸べた。
その中、焦点はテレビ関係者の人に当てられた。
長澤まさみの演じる吉澤さんは言った。
今の社会は生きづらい。
レールから外れた人はもちろん、レールの上にいる人も同じだ。
...
と。
彼女は結局は「口だけが上手い」と後ほど分かったが、
彼女の口によって出された課題は嘘ではない。
むしろもう一人の、津野田くんの行為がモノを言う。
彼はあの血まみれの決闘場から逃げた。
これこそレールにいる人間の正しい反応かもしれない。
三上の就職祝いの時も、レールの上の人たちが、「我慢」、「逃げる」ことはレールを踏み外さない生き方だと三上に伝授したのだ。
だが、この映画はここまで止まらなくて良かった。
これで終わったら単純な平凡作だとさえ思った。
レールから外れないよう、よく我慢できたが、
三上は死んだ。
彼は介護施設の虐められた男の子を助けなかった。
我慢我慢の挙句、彼は男の子からもらったコスモスを手に、嵐の夜で死んだ。
この悲劇をもって作者は最大の議題を観客に投げたのだ。
三上のような、素直で感情にムレがある人間はどうやって生きていけばよかっただろう。
どうすればレールから外れることなく、幸せに生きていけるだろう。
そもそも、吉澤の言ってたレールは一体何?
福岡のヤクザたちは結局警察に捕まったが、その人たちが三上を逃してお金まで渡したことから、完全な悪い人間でもない。
介護施設のスタッフにいじめ事件があった。病人に優しいのに、本当は心が腐ってる男の子がいた。彼はその一面を隠しただけだ。
けど、世の中は、レールを「外れた人間」と「外れてない人間」しかいない。
刑務所、福祉課、コミュニティ、他人の救い手さえ、結局完全な「正」の味方にならない。むしろその二分法に拍車をかけたかもしれない。
それに反して、特には、三上はアイデンティティなしのヒーローに見えた。
彼は十何年も変わらず古い社会のやり方を引き継いだ。
彼はは犯罪者だったが、
正義感で暴力を振るいながら、裁縫や片付けが得意で人付き合いが不器用というギャップを持ってる。
途中の生活シーンも可愛かった。
(この辺監督がとてもうまく...
繊細な表現が人間味のある主人公を作り上げた。こんな主人公こそ、観客の目を惹きつけ、さらに大きな批判的な議題と繋いだ気がする。
免許試験場のシーンも笑えた。
彼が刑務所にいる間、免許の期限が切れた。
人生で行き詰まったため、もう一度撮ろうとした。
それで再び勉強して、暖かい友人達の見守りの下で、試験官の目の下で、何回ものの試行錯誤をへて、「ルール」を勉強し守り、ようやく合格した。
この「免許を撮る道」が最大のメタファーであれば、
私たちの勉強力、賢明に生きる力、もう最高なんじゃないか?...互いに助け合い、共に生きていくための暖かい片隅を持ち....この片隅から見上げた空がもう十分広くて素晴らしいじゃないか?
と言いつつ、最後まで見て、何故か寂しい気持ちになった。この社会に...負けたような気持ちにもなった。
人との距離感
人との関係の結び方、距離感は正解などない。みんな悩む。ましてや、一般社会に組み込まれないハンディを背負った人にとっては、普通の人間関係を作ることや社会に参加することが、越えられそうもない高い壁に見えるだろう。
社会で生きていく事の厳しさを、人と人の間に流れる優しさを、強烈に感じた映画だった。最後の方は、本当に心からこのまま静かに終わって欲しいと思いながら観ていた。
あっという間の2時間
映画の主人公。
カッとなるとみさかいつかなくなる主人公。
その人間らしさにグッときました。
主人公に心配して助言しても、キレられ。
でも、主人公は自分のためをおもって発言してくれる人の想いを吸収する素直さ。
今の世の中に、相手の言う事をきちんと理解してくれる人っているんだろうか?考えさせられる映画でした。
世の中は、無関心の人が多すぎて。生きているのも辛い毎日だったけど少しだけ希望がもてる映画だとおもいます。
ただ最後は、生きていてほしかったな。
みんな適当に生きている
当時者でもない限り気にもされない社会の問題を
三上という男を通して笑いも入れつつ温かみも感じる
素敵な作品になっていました
いや社会問題って気にされないから解決しないんですよね
みんなが本気になってくれたら問題になるまでもないんですよね
素直で真面目な人間には生きづらい世界
みんな適当に生きているというありふれた言葉が重かったです
嘘がなく不器用で生い立ちが複雑で
おまけに前科持ちの三上にとって
この世界で生きていくには圧倒的弱者になる
それでも腐らず自立するため諦めない姿に
応援してくれる温かい人間がいるのもまたこの世界
最後に施設員として働き始め、
弱きものを助けるという三上の絶対的正義を
押し殺して感情を殺して社会に順応しようとする姿に
やり場のない怒り悲しみがこみ上げてきました
世界が適当に回っているだけなのに
三上のような人間がいちいち正義をみせるから
すばらしき世界が存在するんだと思いました。
あと役所広司さんが三上でよかった、、
タイトルの意味
素晴らしき…この映画で、この世の中、捨てたものではないと気持ちが温かくなりました。
六角さん演じる店長(町内会長)がキレた三上に対し、今日は機嫌が悪いんだと言うところ、北村有起哉さん演じる定期訪問に来た役所の人が失礼な物言いをしたことを詫びること、そうした小さな事が三上を包んでいる。
丁寧なストーリーでした。
仲野くんの演技も良かったなぁ…。
とてもいい映画でした、観てよかった。
見応えのある邦画
秀作を送り出している西川美和監督の最新作であり、予告を見て興味を惹かれたので鑑賞。
俳優陣は上手い方々ばかりで撮影も編集も素晴らしかった。
物語としては長い間獄中にいたヤクザが現代社会に馴染もうとするも馴染めないというこれまでも何度か見たような物語だった。
良くも悪くもすぐカッとなる性格で喧嘩っ早い、真っ直ぐだけど融通が効かない主人公を役所広司が演じている。
この手の物語は客観的に見ると、要領良く出来ず自分で自分の首を絞めていくのがこれまでよく見た展開だ。
この作品もやはり大筋は同じ展開で節目節目で問題を起こしそうになるが、周りの人達がどこか優しく元殺人犯の三上を支えて力になってくれる。
そこが今までの作品とは少し違うが、難しいのは周りの人達が優しいと三上の行動が愚かに見えてしまう所である。
教習所の受付で怒鳴ったり試験で無茶な運転をしてしまったり、彼を想ってアドバイスしても凄んだりするのは、立ち直りたいのか、ただ頑固なだけなのか、途中感情移入出来ずにイライラしてしまった。
ラストの自分を殺して社会に適応出来たあと死んでしまうのはなるほどと思った反面急だなと思ってしまった。
総評としては良かったが、少し残念な所も散見された。
やくざ=反社会的勢力ですよ。これでいいの?
生きづらいこの世界にやくざという受け皿が必要なようにしかこの映画は見えないがそれでいいのか??やくざって今でいう反社会的勢力ですよね。そもそものお話としてこれで良かったのだろうか??
前半、彼の価値観が見えない30万円の金時計を捨ててくれという意味のわからない記号的なくだりからやばい匂いがした。捨てないでしょうやくざっていう人種は。昔の時間を捨てるという記号的なことなの??
なぜ、防具を縫うとか訳わからないことを言っている主人公にこそこそ話ではなくて本人に今はもう無いからやる気がある人を受け入れてくれる会社を探しましょうと言わないのだろうか??
テレビくらいしか情報源がない我々でも出所した人を受け入れてくれる施設や職場があることは知っている、橋爪功、梶芽衣子夫婦はどういうひとたちなんだろうか??馬鹿なのか?悪い人なのか?
運転免許が必要と強引に物語を縛るが??免許無くてもできる仕事をなんで誰も探さないの?
主人公はその考えで進んでもいいだろうが、周りの人間をそこで縛るのはあまりに無理があるのでは無いだろうか??スーパーの店員??市役所職員??
そもそもこの年代のやくざは車屋関係の知り合いが多い、一発で免許とること難しいと知らないのだろうか??免許センターの大きくてを降っての行進は本気か?やくざの頃の主人公がただの馬鹿以外背景は何も見えない。
取ってつけた下りはあったが。
結局は堅気の世界にお金を持たして帰れと言ってくれるやくざの嫁のキムラ緑子以外は全員悪人に見えた。そういう映画なのだろうか??
時代に置いていかれているであろう表現が随所にあるが、、、
熟女のバイト募集のポスターに電話するが、あんた昔貼っていた方でしょうがと突っ込んでしまう。
あんなところに貼ってないし。。。
「身分帳」あまりこの映画では意味を成していない、母親を探すだけなら誰でもいつでもいいしテレビマンと繋げることも居酒屋でも万引き未遂でも最初の下の階の住民との喧嘩でもいいだろうし。
うまく生きて行けない人を描きたいのなら主人公がやくざである意味がこの映画には見えない。
この映画に浅はかな作り手の恐怖を覚えた。
「すばらしき世界」で生きる人間側から主人公を見てしまうと…
しかし、まあ、なんというか、みんなこんな感じの問題定義するような、社会への皮肉を込めた人間ドラマ好きですね。
いや、役所広司はすごかったし、他の演者もよかったし、映画としては悪くないと思うよ。
ただ、同時に三上のことはずっと好きになれなかったし、三上のような人間を美化して肯定している感じがして気分が悪くもあった。
犯罪を犯した人にも更生の機会を与える社会であるべき。経歴などで評価せず、人物を見るべき。そうでないと再犯してしまう状況に追い込んでしまう。わかりますよ。
でも、犯罪者に傷つけられた人や遺族の心や体の傷は、服役を終えたからと言って癒えることはないですよね。どんなに反省しても後悔しても、更生しても、犯した罪を取り消すことはできないですよね。犯罪者によって傷つけられ、今もまだ苦しんでいる人がいるのだから。
被害者でなくても、自分が六角精児だったらあんなに優しくなれない。テレビの取材について忠告するシーンなんて自分だったら深く傷ついたと思う。人間不信になるわ。
三上って悪いヤツだけに鉄拳制裁!とか同じはぐれもの同士の抗争!という感じではなく、普通の人へも容赦なく暴力・恫喝ってタイプですよね?
すぐに声を荒げて暴力や恐怖で人を支配しようとする。たとえ幼少期の傷がそうさせていたとしても、そんな人が善意の人間を傷つけてよい道理なんてあるのだろうか?
ラスト前の介護施設の話も、現実的には他にやり方あるよね?暴力か見て見ぬふりかの二択って!
信念を曲げて、見て見ぬふりをして、周りに媚びながら生きていく素晴らしい世界への皮肉もわかりますが、彼の正義は彼が気に入らなければ他人は傷つけてもよいという価値観が根底にあるため、共感できませんでした。
そんなこんなで感情移入できずに終わってしまった。この手の映画は自分には合わないのだろうなと、改めて感じた映画でした。
バランスの良さ◎
脚本は社会への問いかけでありながら、ハートフルに展開。登場人物は不足がなく無駄もありません。豪華な俳優陣の最高な演技は、このバランス取れた2時間を最大限に輝かせており、包み込んでもいます。
映画館はほぼ満席だったので、久しぶりに最前列のチケットしか取れず、画面が大きすぎて観にくいな、、、と思いましたが
空や海や雪景色や都会の夜景色などが大きく綺麗に、まるで自分がそこにいるかのように観られたので良かったです。
短いけれど景色の美しさを感じるカットは、やっと娑婆に出た三上さんへ感情移入するのに十分でした。
娑婆の開放感といえば、すき焼きや卵かけご飯が、とても美味しそうに写っていたのも印象的です。
ほとんどの人が同じかもしれませんが、背中を洗うシーンで思わず涙。津乃田くんの表情が素晴らしかったです。
そこからは「素晴らしき世界」へ向かう怒涛の展開。
映画をほとんど見ない旦那は「最後、突然死んじゃったね。映画ってそういうものなの?笑」と言っていましたが笑、
「人は人に助けられて必ず幸せになる」という断言的なメッセージを作らないためにも、また、「良い人だったのに死んじゃったっていう悲しい話」にしないためにも、必ずなければならないそっとした死、だったのだと思います。
とにかくわたしはチョロいので、この映画で中野太賀くんを好きになってしまったのでした。(チョロ……)
リアルな描写に溢れていた。
誰かが特別優しいということはなく、多くの登場人物が等身大に優しくて、そして精一杯生きていた。
そんな人間らしさを緻密に描写した作品だった。
悲しい結果にはなってしまったが、必死に生きる主人公に対して色々な人が優しさを向けていた。そういう意味では「すばらしき世界」だったのかもしれない。
役所広司の笑顔で人を殺しそうな怖さ全開
何を言っても話の通じない人っているじゃない?
冒頭の三上は自己中心的で自分以外の人間には興味がなかった。
自分本位な考え方からくる行動で空回り。
相手が思うように従わないと逆ギレ。
思考回路はまさに中学生だった。
物語が進むにつれ、自分に力を貸してくれる人間が増え、信頼してくれる人間がいることから理性をコントロールして社会に順応していこうとする。
ただ、その世界は自分の思うような価値観の通用しない世界。
自分が今まで否定してきた世界で、自分が息をしていることに気付かされる。
いったい、誰にとってのすばらしき世界なのか?
世界から三上と言う男がいなくなって、犯罪者が一人死んで、社会的な秩序が一つ正常になったすばらしき世界。
自分がしたくない同調から外れて、他者を蔑んだりしなくてすむ世界に旅立つことのできた三上にとっての、すばらしき世界。
タイトルが最後に映し出されることによって、このタイトルは本当は誰にとってのタイトルなんだ?
と考えてしまう。
社会の中で生きるとはどう言うことだろう。
自分の生き方や考え方は他人と比べて、少しはまともだろうか?
自分の生き方や価値観を他人と較べる必要性なんてあるんだろうか?
などなど、見終わった後に自分の生き方を問いたくなる作品でした。
今回の話では死んで綺麗に終われたけど、現実ではあんなに都合よく死ぬなんてことはまずありえない。
三上が生きていたら、いつかまた人を殺すかもしれないし、殺さないかもしれない。
人との繋がりが三上を人間の大人にするかも知れないし、そのために自分の中の何かを変化させていくかもしれない。
これから、人生の風向きが変わるかもしれない。と言うところでのラストだったので、なんとも後味が悪い。
後味というよりも、綺麗にまとまりすぎてしまった感はあった。
ともあれ、劇場でこの居心地の悪さや何か起こるのでは?と言う緊張感を味わえたのは面白い。
Whats a W〇nderful W〇rld!!!!!????
内容は、まあ若干、昭和な感じで。(笑)
ザ 映画って感じで。
懐かしい映画。
ナツムビ!!!???(笑)なのかどうなのか。(笑)
脚本的にはもっとギャグを入れて、ノリ的には、お金がないのように
あそこから、立ち直り、成功して、また、そこそこ落ちて、静かになるような
そんなストーリーがいいようなどうなのか。(笑)
途中の、うるさい民家にいったときなども。(笑)
メンドクサイから、110番して、警察を利用するような、したたかさみたいなギャグ感が
欲しかったり。(笑)(笑)
生活保護をとりつつ。トントンの居酒屋を開店して。
ネットワークで、いろいろ借りたりして、サクセス感の場面がほしかったり。
続編に期待??しておりまする。△(笑)(笑)
役所広司の役のみせ所
ベタなレビュータイトルですいません。
しかし、それ程までに脱帽した。役所広司以外に誰ができるのか。
気が短くて正義感もつよくそれでいて真面目な主人公を見事に演じきった!
私が一番好きなシーンは高齢者施設でイジメをしている若いスタッフがやる同僚障害者のモノマネに対して、葛藤がありながらも放つ一言、「似てますね」この表情。この顔できる役者さん他にいますかね。
あと、原作が事実に基づいたものなのでしょうがないですが、最後は亡くならないで欲しかったですね。幸せになって欲しかったな。
役所広司が強すぎたかな〜。
13年の刑期を終えて出所した元ヤクザの主人公(役所広司)が、元受刑者への風当たりの強さに苛立ち、ぶつかりながら、生きる様を描いた人間ドラマ。
役所広司のまくしたてる九州弁に勢いがあって良いですよね。実年齢は65歳と初老なのですが、それを感じさせない体のキレと精気。こういう中年ヤクザの役はピッタリ。
物語としては、主人公の「生きづらさ」がテーマ。でも、この作品が本来伝えたかったには、この元受刑者を通して、もっと世間一般的な生きづらさ、だったのかな〜、と。役所広司の真っ直ぐな生き方に対して、ケースワーカーは上司が、ルポライターは長澤まさみの演じるテレビ局、という「カセ」がある。そこで、役所広司に感化され、生き方を再発見する、って作品だったのでは?と思います。
そんなところが見え隠れするのですが、役所広司の存在が大きすぎて、映画としては「はみ出しものに厳しい世間」でまとまってしまったのが、少し残念。
Whats a Wonderful World〇!!!!????
演技が生々しくて。(笑)
不器用さに、イライラしながら。(笑)
その演技力が凄い!!!!???(笑)(笑)
内容は単純で。(笑)
お金がなくて、プライドが高くて。
自立心は旺盛だけれども、それが若干あだに。(笑)(笑)
年末に観たいかも。(笑)(笑)
今夜は三上正夫のお通夜です
この映画には全部ある。
しかし、少しも欲張り感が感じられない。
最近の「ヤクザと家族」、「ニューヨーク親切なロシア料理店」や「私はダニエル・ブレイク」などにも通じる隣人同士の助け合い、社会福祉制度の弱者救済の矛盾、暴対法の影響、元受刑者の雇用問題、養護施設内のいじめや虐待、特別養子縁組など、さまざまな問題を複合的に絡ませていたのにもかかわらずだ。
30年前の佐木隆三のノンフィクション小説を現代に合わせた脚本にすることにみごと成功したと思う。
役所広司の人間味に溢れたオーラは見ごたえあって、お見事だった。
橋爪功と梶芽衣子の取り合わせ。白竜とキムラ緑子。元妻の安田成美。運転免許試験場の警官役の山田真歩。それに宮城県出身のソープ嬢など女性陣が実にいい。長澤まさみも持ち前のキャラが立っていて、津乃田龍太郎(仲野大賀)の弱さを際立たせる。
「三上さん、フイにしたらいけんよ」と出所祝いを握らせて、逃がすキムラ緑子姐さん。「裟婆は面白いことはなか。だけど、見上げる空は広かいいますけん」
白竜が出かけた後、徳利の酒をあおり、三上に言った「元気のでるクスリ入れますか?」は本気だった気もする。変な空気の後、三上は「今じゃ、降圧剤が一番のご馳走ですけん」と返す。実に味のあるセリフだなぁと感心しきり。
ヤクザと家族では男を磨くための任侠道を声高に唱える若頭役で出ていた北村有起哉が福祉課のケースワーカー役。 三上がパンフレットの隅々まで逃さず読んでいて、知事への不服申し立てについて言及した時、私はこの件をまだ私の上司にも報告してない。それなのに、今、申し立てされたら。私の立場ってものがありません。の場面。極めて冷静だったのが、必死にやっているんですよと本気度が伝った。
スーパーの店長役の六角精児(町会の役員でもあるらしい)。レジで支払いを終えて店を出ようとする三上正夫が万引きしたと従業員から上申され、スーパーの事務室で応対することに。手提げ袋をひっくり返し、「この中にあんたの店のもんが一つもなかったら、とげんしてくれるかね」と啖呵を切る三上。憤慨のあまり、買ったものものまで置いて出てゆく三上を追いかける。自身の父親のはなしをするうちに、同郷であることが判明。三上のアパートに上がりこんでの会話。免許がとれたら、知り合いの配送業者を紹介するという店長の松本。打ち解けて、陽気になった三上が言う、「昔はホステスの送迎なんかもしとりました。体が覚えちょるけん、取れたら、楽勝ばい。店でトラブルおこす客がおったら、いつでも呼んでください。警察は民事不介入やけん。手癖の悪かモンがおったら、オレに任しとかんね」には、大爆笑。
運転免許実地試験(仮免)の場面は昔の悪夢を蘇らせてくれた。アルバイトをしながらで、春休み中に仮免に受からなかったわたしは、夏休みになっていきなり仮免実地試験を受けた。初っぱなから、ガックン、ガックンで、玉砕。その日の午後、もう一度受けたら、受かってしまった。度々、判子をくれなかった最もソリの会わなかった意地悪教官がわざわざ「お前、奇蹟だな」と言ってきたぐらいだ。40年前の話。仮免は多くの人にとって共通する試練だった。あの頃は教習所に通う男に人権なんてなかった。バイクの教官が生徒に蹴りを入れるのなんて当たり前だった。
「すばらしき世界」は現代社会に対する強烈な皮肉でありながら、それでも人間に対する慈愛と肯定に満ち溢れている。
映画の最後に持ってきた題名。やられた。カッコよすぎる。
監督によほど自信がなきゃできないんじゃないかな~
星6つにしたいぐらい。
消えゆくものへのシンパシーを胸に抱いて、亡くしてしまった日本人をこの目に焼き付けておきたいと思った良作でした。
間違いなく傑作だと思う、が…。
賞を取りそうな感じの作品。
役所広司の演技がすごい。本当にそんな人物が存在するかのよう。
後半、仕事も見つかって、感情も抑えることができて、元妻からも連絡があって、ハッピーエンドが見えて来て、私も「明日から仕事がんばろう!」と思った矢先、「えっおいそれはないだろう」というエンディング。
『私はダニエル・ブレイク』も、最後主人公は死んじゃったけど、それに倣う必要はあったのかなあ。
シンプルに伝わる心情
上手く表現することができないが、それぞれの役の心情はシンプルに表現されているように思える。それはおそらく見る人がスッと納得できるように計算されたものなのでしょう。
この映画は現実的で、違和感なく見ることができた。登場人物同士の心からの接近は、とても時間のかかるものと思いますが、それを上映時間中にまとめられているところから最後の津乃田の悔しさは非常に良く伝わる。
最後によくこの映画を考えたところ、死刑制度について考えさせられた。それについては何も言わないが、現実的な映画であったことから新しい心情を得たと思う。
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