すばらしき世界のレビュー・感想・評価
全154件中、61~80件目を表示
改めて、すごいタイトル。
タイトルは最後に出るのだけど、すべて見届けてから改めてタイトルを眺めると、なんでこのタイトルにしたんだろうと…。三上の人生は、外から見ると、とても「すばらしい」と言い切れるようなものではない。刑期を終えて出てきた彼にとって社会は生きづらいし、我慢して順応して生きていこうとする姿は痛々しかった。
それでも、「空が広い」娑婆の世界は生きる価値がある、という宣言なのだろうか…。
役所広司さんはどんな役でもすばらしいけど、本作は特に魅力が詰め込まれている気がした。コミカルさも、真面目さも、何をしでかすかわからないような怖さも。
タイトルなし(ネタバレ)
ラストシーン、虐げられてる不器用で純粋な者から花をもらい、元妻から再会の電話を受け、希望に手を伸ばそうとしてる中、嵐のなか洗濯物一つ取り込みそびれたまま花を握りしめて亡くなるその空は快晴で
そのあと「すばらしき世界」のタイトルがでる
その全てが、この世〜〜〜!!って感じだった
普通の物語だったら小説が仕上がり書店に並ぶ所までは生きてるだろうけど、志半ばで亡くなるなんてこと現実では山ほどある。
この映画はとことん現実だった…
だけど、どうしようもなく理不尽も無関心もある一方で、ここまで手を差しのべてくれるあたたかい場所も必ずあることを示してくれてるから、見終わった後生きようって思える
大事なのはわかりやすいハッピーエンドでも、綺麗に人生を終わらすことでもないのかもしれない
三上が亡くなる前に変われたことは間違いなく希望だった
突然生き方は変えられない
カタギの自分達からはもう少し我慢すれば…とじれじれするけど、これまでの自分の当たり前が通用しない世界はなかなかしんどい
見渡すと周りの人間はみんな働いてて、自分だけが職にすら就けないのはどれだけ劣等感芽生えるだろう
右も左もわからないままに自分の常識が通用せず嗜められたら敵に見えるかもしれない
三上は見てて子供と同じだと思った
人の根源的欲求ってそういうものかもしれない
誰か一人でもいいから自分に心を尽くしてくれる人が欲しい
それが無かったり、みんな他に自分以外に優先する大事な人がいて、焦って上手くいかないときに弾かれたり嗜められたら孤独感がすごいし簡単に手を差しのべてくれる所にすがってしまうし、自暴自棄になる気持ちもわかる
逆に自分のためにそこまでしてくれるんだって自分を気にしてくれる人が一人でもいてくれたら、がんばろうって思えるんだよ
ヤクザの兄弟の元から逃げて施設に行ってから泣きっぱなしだった
歳を重ねるほど、昔の自分の記憶を共有できる相手がいることは貴重だ
施設で歌った歌を一緒に歌うだけで少し救われる
母に会えたら「生まれた時どうだったか聞きたい」っていうのに、うあぁってなった
親と当たり前にいれる人はまず聞こうと思わないささやかな質問すぎて
それすらも叶わなくて
本当はただ一緒にサッカーして笑うような、そんなささやかなものが欲しかっただけなのに
癇癪起こさず運転することも、障害のある同僚に優しく接することも
これまで彼が我慢できなかった描写がしっかりされてるから、小さな事がどれだけ尊いか伝わっていちいち泣いてしまう
人のあいだの感情を描くのがうまい
ヤクザにもカタギにも馴染めない半端な所にいる、どちらにも少し違和感を感じる描写がうまい
真っ直ぐに生きることは苦しいし、そのわりに返ってくるものは少ない
周りの人間は、他人に対して不寛容だし無関心だし、そんな人でも怒った理由は誰かの命のためだったりする
善悪をハッキリわけられない、落とし所を見つけきれないのがこの世だ
それでも、優しさはあって、自分が変わったり信じようとすればそれに気づける瞬間があって、意外と人は人を見捨てないこともある
辛い描写や残酷な現実があっても、やっぱりどこか残るのは優しさだった
役所広司が素晴らしい
身近な人が絶賛していたので見た。
それが少し純粋な感想を持つことを邪魔をしたかもしれない。
役所広司さんがものすごく魅力的で、ひとときも目を離せなかった。
北村有起哉さん、六角精児さんは、本当にそういう人がそこにいるとしか見えなかった。
仲野大河さんの演じるつのだ、彼の最後のふるまいは、自分の成功が夢に終わった残念な気分も、多分に含まれているのかもしれない、と思った。
更生の道は遠い
ヤクザと家族に次いで更生ものかなと思って観るの止めてた
観てみたら割とすんなりと観れたな
一度底辺を味わうとなかなか元には戻れない日本の社会
この物語の主人公である三上も同様で社会復帰に苦労する
運転免許や携帯、仕事などみんなが当たり前に行ってることが
社会復帰をしようとする者にとって障害になっているのが描かれている
我慢ができず暴力を振るってしまったりするのは暴力に明け暮れてきた者のサガか
しかし仕事を見つけ更生出来たことは素晴らしいよね
そして希望に満ちたまま死ねたのだから
最後は悪くない人生だったのかも
何か色々と共感する所のある物語だったが
悪くない出来だと思いました
名優、役所広司さんの名演が味わい深い作品です。
予告編を観た時から気になっていた作品を鑑賞しました。
で、感想はと言うと、切ない。切ないなあ〜。
ヤクザとして足を洗うと決意した男が出所後、懸命に真っ当なカタギとして生きようとする様が描かれていますが、単純に清く正しくと描かれていない所が生々しく、また何処か憎めない感じで、名優役所広司さんの演技が光る作品です。
自身の罪を不当と感じながらも出所後は真っ当に生きようとする三上。それでも世間の風が冷たく、生活保護の申請や就職活動もなかなかままならない。また荒くれ者の気性も変わらす、様々なトラブルを巻き起こす。だがそれでも周囲の人と理解や援助もあり、三上は徐々にカタギとして歩もうとするが…
ヤクザとしての生き方と言うより、現代風に「反社」(反社会勢力)として扱われる不当な感じが見ていても痛々しい。
正直“こりゃカタギになるのは無理じゃね?”と思うぐらいの不当な扱いが様々にのしかかっていく。
自業自得と言ってしまえばそうなんだけど、社会がカタギの道を不本意に閉ざしている様にも感じられるんですよね。
この辺りが先日公開された「ヤクザと家族 The Family」と対を成している感じがして面白い。
ヤクザと家族 The Familyはヤクザとして生きたくとも生きられない悲哀を描いているが、すばらしき世界はヤクザを辞めようとしてもなかなか難しいと言うのを描いている。
描く側のスタンスが違うので一概に比較は出来ないが同時期に描かれたヤクザのその後を描いた作品なので対で観ると面白いです。
三上を助ける様々な人達もいろんな思いがあるが、皆言えるのが不器用で粗暴ながらも真っ直ぐな三上の人柄に惹かれて、様々にフォローしていく。
それをさまざまな名俳優たちが演じていて、安定感もバッチリ。
三上役の役所広司さんはもう言う事無し。
役所さんが名を連ねているだけで安心感が半端無いw
また決して良い人と言う訳でなく粗暴で短気。一見すると付き合いたくない人ではありますが、付き合ってみると実は良いヤツだったと言うのを絶妙で役所広司さんの振り幅の広さと懐の深さが光ります
取材を通して三上と心通わしていく津乃田役の仲野太賀さんも良い感じ。
万引き疑惑の疑いから同郷という事で心通わして行くスーパーの店長・松本役の六角精児さんがいるだけでなんか微笑ましくなるんですよねw
その他にも橋爪功さん、梶芽衣子さん、白竜さん、キムラ緑子さん、長澤まさみさん、安田成美さんと鉄壁の布陣。特に長澤まさみさんの使い方なんて贅沢ですわ。
原作は佐木隆三さんの長編小説で実在の人物をモデルに描かれているとの事ですが、佐木隆三さんは様々な事件・事故を扱った小説やノンフィクションを出されていますが、映画化になった作品も多く、「復讐するは我にあり」や「海燕ジョーの奇跡」「南へ走れ、海の道を!」と言った映画化された作品も多数。
事件・事故を取材した著書は多数で骨太な作品である事のバックボーンも頷けます。
気に入っていると言うか印象的なのは、兄弟分がいる九州から戻ってきて、母親の行方が一応決着した感じはアンニュイな感じではありますが、夕暮れのシーンがとても印象的。
また、介護仕事にパートで入った職場での年下の同僚のイジメを身震いしながらも爆発せずに社会に溶け込もうとする三上の苦悩が印象的。
あそこで“何やってんじゃー!”と制裁していたら、スカッとするけどそれではダメ。この作品の骨太さを表しているシーンです。
難点があるとすると、ラストの終わり方。
三上のアパートに帰るまでならとても爽やかで清々しく、三上の人柄が報われる感じなですが、ああなってしまうとちょっと個人的には?が付いてしまう。
これが悪い訳ではないが、こうでなければいけなかったのか?と言うとそうじゃないと思うんですよね。
なので、あの終わり方は切ない。切な過ぎる。
「ヤクザと家族 The Family」でも、綾野剛さん演じる賢治が非業の死を迎えましたが。反社と言う烙印が押されて、それでも懸命に立ち直ろうとする者に対しての結末はペニミズムと考えても悲しい。また津乃田の慟哭が悲し過ぎる。
往年のヤクザ映画の様なヒロイックさはさほどなく、今の時勢に合わせたヤクザ映画とも言えますが、この辺りはさすが佐木隆三さんの作品なだけあります。
役所広司の演技がとても光り、他の出演者の方々も熱量もすごい作品ですが、それでも最後だけはハッピーエンドで終わって欲しかったなぁw
観る価値は十分にある作品です。お勧めです。
西川組に結集した最高峰の役者たち
障害者の同僚の優しさに涙が溢れそうになり帰宅する三上(役所広司)に、元嫁から電話がかかってくるところで終われたら清々しかったなぁ。
それでも、彼の死を心から嘆いた人たちがいたことに、僅かながら救いがある。
西川監督は、人物を多面的に描き、社会を鋭い目で見つめながらも、どこか優しさがある。
仲野太賀がこの映画の良心だ。『ダークナイト・ライジング』のジョゼフ=ゴードン・レヴィットのように。
嫌味な人物に見えながら、父親の同郷人に対して過剰なまでの優しさを見せるスーパー店長の六角精児。これまたお役所仕事に見えながら、彼なりに助けてくれようとする真っ直ぐな職員の北村有起哉の二人が光ってたなぁ。
役所広司の凄さは計り知れない。毎回どの作品でもホームランをかっ飛ばす。寡黙な正義の人でありながら、キレると何をしでかすかわからない狂気が宿る。でも実在の人物のように見える。今1番好きな日本俳優。
サントラの民族やJAZZYな雰囲気も、独特でよかったな。
これ、好きだな
メンタル面に問題アリの家内に、朝っぱらから、5年位前の出来事を蒸し返され、涙と怒声と人格否定、いわゆる罵詈雑言の雨あられ。こういうときはひたすら堪えるしかないのですが、今日は僕のメンタルまでやられそうで、「これまずいぞ、何とかしないと」という時に思いついたのがこの映画鑑賞でした。結論から言えば大正解。また、妻と向き合いやり直そうという気になれました。いい映画でした。タイトルにある"すばらしい"は皮肉でも何でもなくて、プラスもマイナスもひっくるめた世の中のこと。"嵐が来る前に、刈り取られたコスモス"を心優しき人に手渡されるまで、僕は家族と共に、この生を謳歌しよう。
タイトルなし(ネタバレ)
(原作未読で映画単体の感想です)
■フジテレビ「ザ・ノンフィクション」への強烈な皮肉。
■役所と仲野が素晴らしい。長澤まさみは浮いている。浮いてる存在として描かれているのはわかるが、TVマンとしては綺麗すぎる(笑)
■母親に結局会えなかったのは良かった。現実はそんなもの。
■施設の出来事に対し自分の感情を押し殺した、その直後に命を失ってしまうという切なさ。
■最後のアパート、まさかチンピラ達に待ち伏せされて刺されるようなありがちな結末なのか…と嫌ーな予感がしたけど、違ってましたね
ままならないのが人間
どうしようもなく真っ直ぐな人間を描いていたな。
太賀の演技が良かった。
約束を守るために、生きるために自分を殺して、そして死んじゃう。
自分たちはどうなんだろうかね。
自分を殺してないんだろうか。
空は広いはずなのに、独房で生きてるんじゃなかろうか。
生きるって、大変だね。
88/100
空は広い。
三上が出所したところから始まる。
何となく想像できる範囲だった。塀から外の生きずらい世の中でまっとうに生きたい主人公の三上。何かにカッとする気持ちを抑えられない。元やくざということで働くこともままならないし偏見を持たれる。
でも、偏見はやくざだけではなくて映画に出てきた障害を持った人とか。色々な所で偏見はあるし、それらを乗り越えながら皆生きている。それができる人と出来ない人。がいる。
三上は上手く順応出来ないほうの人間で多分やくざの世界のほうが生きやすかったのかも。でも、やくざの世界もだんだんと肩身が狭くなって生きづらい。見て見ないふりして生きていくことが辛くそれがストレス(心労)になっていった……。三上にとっては生きづらい塀の外(世界)だったのかもしれない。
三上にとっての広い空はあったのか。
生きづらい世界から解き放たれた瞬間。
それこそがすばらしき世界だったのかもしれません。
運転免許を取る場面では可笑しくて笑っちゃいました。役所広司は魅力がありますね。
役所映画。映画好きなら必見。
少しコミカルなところと、凄みのある部分のギャップが
素晴らしい。
三度目の殺人では、三隅だったっけ?
どっちも訳ありの殺人犯。
短気で、攻撃的な、暴力的な性格は、
遺伝子なのか、生活環境なのか?
ただ、同じ環境でも全員ヤクザになるわけでは無い。
つづく
流石の役所広司
役所広司の演技に終始見入ってしまった
刑務所出所後の厳しい現実が突きつけられてもちょっとした小さな幸せを見つけて生きていくハッピーエンドかと思っていたら最後で衝撃を受けた
三上が自殺した後、出所して手に入れたはずの自由な青空に「すばらしき世界」このラストは最高だった
2021/3/4
前科持ちに対して不寛容な社会に対して、『すばらしき世界』という皮肉的なタイトル。考えさせられる映画ではあったのだけれど、その世界の理不尽さを表現するためにラストに持ってきた出来事が短絡的すぎて、シャバイ脚本だなぁと思ってしまった。
純粋で生きるのが下手な三上の人柄に助けたくなる気持ちもわかるけれど、それにしたって周りの人たちが他人に寄り添えるいい人ばっかりなのも気になってしまったし、そんな周りに支えられ社会になじむために障がい者を笑う同僚に同調するのがめちゃくちゃ気持ちが悪かった。
あそこで三上が気付くべきなのは、障がい者の同僚をリンチしたのは「仕事をさぼった事に対して怒った」という理由があったことを知って、自分自身の暴力も理由があったって事と照らし合わせることと、どんな理由があれ暴力はダメだということじゃないのかな…。
後味は「うーむ」って感じにはなってしまったのだけれど、役所広司さん演じる三上の純粋かつ瞬間湯沸かし器的な性格故の緊張感ある感じと、キムラ緑子さんと安田成美さんの凛とした女性感とか、役者さんたちの演技はとっても良かったです。
階層
最後に流れるタイトルコール
「すばらしき世界」
皮肉めいた終幕で、全編通して愚痴のような印象を持った。
「身分帳」という原作から着想を得たらしい。
服役する囚人の経歴をこと細かに記したものだそうな。犯罪を犯した者は区分けされ、その生態を記される。まぁ…それはいい。そういうシステムだ。
異常な事とは思わない。
異常な事をした人なので、本人の為にも周囲の為にも必要なのだろう。
問題なのは「世界」のあり様だ。
鑑賞後、凄く具体的に個人の数だけ世界は存在すると思えた。世界は1つだけれど1つではない。
俺にも、電車で居眠りしてる眼鏡をかけたおじさんにも当たり前のように存在する。
同じ世界に生きてはいるが、同じ世界を見てはいない。
そんな感想を持ったのも、想像だにしない三上の世界に衝撃を受けたからだろう。
役者陣は皆様熱演だった。
役所さんは方言を話しているだけなのに、役所広司ではなく三上に見える程だった。
恫喝する眼差しや、台詞の扱い方…ちょっと今まで見てた役所広司ではないように思える。
素晴らしかった。
彼は出所後、更生の道を模索する。
だが生来の気質がそれを正しいと判断してくれない。メディアにほだされ、その気質を解放した時は水を得た魚のようだった。まさに自分が生きてきた世界に帰ったのであろう。
カメラマンの不在が分かった後は、自分が負かしたチンピラに「おう、立てるかー?飯でも食いにいこやー」と天真爛漫に声をかけてそうだ。
カメラマンは逃げ出す。
違う世界の住人と関わる事を拒絶したのだろうか?
彼を追うディレクター。
彼女にも彼女の住む世界があり、その世界から彼は拒絶されたようにも見えた。
紆余曲折を経て、三上は更生の道を歩き出す。
彼が選んだ世界は、自分を殺す事から始まるようだった。周囲の人間は三上を諭す。
「我慢するのよ」「今までみたいな事しちゃ駄目よ」
至極真っ当な正論である。
だがそれは、ありのままの自分を否定する事と同義で、それを誤魔化す為に「成長」なんて言葉に変換されたりもする。
彼は従い、自らを変革していく。
彼の世界は一変する。
世界自体は変わらない。彼の世界だけが変わるのだ。
そして、遂には自分を殺した。
そうしなければ、三上の選んだ世界は三上を受け入れてはくれないのだ。
同僚に相対し涙したのは、悔しさだろうか?それとも謝罪だろうか?
支援者から就職祝いに貰った自転車をこぐ三上の目はとても穏やかだ。だけど生命力は皆無であった。
かつての溢れんばかりに漲っていた命の荒々しさは、その眼差しに宿る事はない。
そこにかつて愛した女性からの電話。
ささやかな、ホントにささやかな幸せを目前に、三上は死ぬ。
「これからじゃん…三上さん、これからじゃんかよ?」
と、支援者達の声が聞こえてきそうだ。
その直後にタイトルコール
「すばらしき世界」
…絶句。
前科者のヤクザって設定だから、振り幅は多いものの…三上に限った話じゃない。
この世界は、ありのままの自分では生きられないように形成されているのだ。
我慢を根底に、ルールを覚え調和に細心の注意を払う。自分の世界とは、違う世界と折り合いを模索しながら生きていかなくてはならない。
いや、自分の世界を違う世界の価値観に変換し続けなけば生きていけないのだ。
最後に彼は死ぬ。
安堵したような目が印象的だった。
「これでようやく生きていかなくて済む」とか「良かった。死んだようにではなく、ちゃんと死ねる」だろうか?
解き放たれたかのように映し出される空。
三上のようにはなりたくないと思うだろうか?
俺は違うと胸を撫で下ろすのだろうか?
不安に思う事はない。
もう既に、三上の状態にはなってる。
知らず知らずの内に。
自覚が伴わない分だけ幸せなんじゃなかろうか?
これが「すばらしき世界」の詳細なわけだ。
映画館を後にし、個人を鮮明に意識した。
この人にも、あの人にも世界がある。
素晴らしいかどうかは分からないのだけれど、素晴らしいと思いたい世界は、俺と同じような尺度であるんだと考えられた事が、何よりの収穫だった。
この世界は生きづらくあたたかい
.
映画『すばらしき世界』
役所広司の演技が好きなので観てきました。
*・゜゚・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゚・* *・゜゚・*:.。..。.:**:.。. .。.:*
刑期を終えた主人公が、久しぶりに社会に戻って今度こそはと堅気に生きようとするが、そこは偏見や差別に満ちた世の中で…
誠実で不器用ながらも真っ直ぐに生きる主人公の物語。
「社会で生きること=我慢の連続だ」というセリフがあったように、理不尽や間違っていることに対して、目を背けたり自分に嘘をついたり、逆らうことを諦めたり、休憩時間の誰かの悪口にも同調しないと生き残っていけない。
でも大概の人がそうやって我慢して何かを押し殺しながら生きている。それがいわゆる"普通の人"。そんな世界は、本当にすばらしき世界なのか...。
*・゜゚・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゚・* *・゜゚・*:.。..。.:**:.。. .。.:*
物語のラストで、やっと見つけた自分の居場所で起こった障害者に対するいじめ。しかし、自分を押し殺して見て見ぬふりをする主人公。その後、いじめられていた子から貰ったコスモスの花束を握りしめ、そして…
なんか思い出すだけで泣けてくる...
*・゜゚・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゚・* *・゜゚・*:.。..。.:**:.。. .。.:*
見終わってから虚無感でしばらく呆然。。
普通って何だろう、正義って、正しさって何だろう。
まっすぐな人間ほど生きづらい世界って何なのか。
タイトルの「すばらしい」の語源を辿ると「みずぼらしい、肩身が狭い」という意味らしい。
このタイトルがこの映画の全てを物語っている。
なんか今の自分に共感できる所が多くて、良い映画だった。
全ての概念を捨て去った先に「多様性」は存在する
いきなり自分語りになってしまうが、私は物心ついた頃には既に「変わり者」と呼ばれていた。20年以上前の話である。個性を肯定する風潮などなく、その言葉は主に嘲りの意味で用いられた。
抑圧されることが日常であり、その経験から「ただ生きるのではなく善く生きる」ことを高校の倫理の授業で教わったその日から己の信条としている。
だから、鑑賞直後はタイトルの意味がわからなかった。
主人公の三上は強い信念を持つ男で、それははっきり「正義」と呼ぶに相応しく、本来は広く世間から賞賛されるべき人物である。しかし、彼は生まれ育った環境の影響から表現手段に乏しかった。暴力や大声以外の自己主張の方法を知らなかった。すると、善良な市民は当然彼を忌避する。三上の表面的な態度からでは彼の善良性を知るのは難しいだろうから、仕方のないことだ。
護りたいのに護れなかった人物から贈られた花を見つめながら独り静かに生涯を閉じた三上に、生への執着は感じられない。彼が求める「まともな人生」「普通の生活」は、正義感が強く情の深い彼にはあまりに理不尽が多かった。世話になった人々には絶対に迷惑をかけたくない。でも、そうするには己の信念を曲げ続けなければならない。なぜなら、穏便な表現手段を知らないから。
そんな彼の死を描いた直後によりによって「すばらしき世界」などというタイトルコールが映るのだから、こちらとしては納得がいかない。表現からしてどうやら皮肉ではないようだし、では一体誰の視点から「すばらしき」などと謳っているのだろう。しばらく考えた。
結論はこうだ。「世界には様々な人間が存在し、それぞれに受け入れ場所がある。それこそが〝すばらしい〟」。
鑑賞中は終始三上に感情移入し、彼が理不尽にぶつかっては憤りを覚えていたが、思えばそんな一見「悪」に見える者達にも彼らなりの信条は持っているはずなのだ。そして、彼らは自身を受け入れてくれる場所で身を寄せあいながら生きている。そこに三上との違いはない。
振り返れば、「居場所」の描写が多かったように思う。バカ騒ぎする若者が集うアパートの一室、極道の屋敷、チームワークを必要とする職場、後見人やかつての恋人の家庭など。素行の悪い者もいる。倫理観に欠ける行動を取る者もいる。しかし、それを「悪」と切り捨てては三上のような人間も生きやすくなる「多様性の受容」は実現しない。多様性とは「全」だからだ。
この結論に辿り着いた時、私は自身の未熟さを恥じた。そして、ただ広く青いだけの空に浮かんだタイトルコールに制作側から人間への温かな目線を感じた。同じ空の下、とはまさにこのことだ。
前述の通り三上に感情移入しまくっていたので印象深いシーンは数え切れないほどあるのだが、特筆するならば育った児童養護施設で三上がかつての職員と歌を口ずさむシーンを挙げたい。するりと幼少のみぎりに時が巻き戻る彼に、津乃田と同じく驚愕し、目を離すことができず、ただただ涙が溢れて止まらなかった。
全154件中、61~80件目を表示