すばらしき世界のレビュー・感想・評価
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醜悪な世界
タイトルのすばらしき世界という言葉には、裏を返せば残酷で醜悪な世界というものがある、という監督の意図があるのかしらと思いました。
確かに、辛い経験があるから幸せをかみしめたり、普段優しくて穏やかな人ほど笑って人を刺したりするのかなあ、と。
以前西川監督のインタビューを読んだんですが、少数派である人間を描くことで社会の縮図が見えてくる、的なことをおっしゃっていたんですが、まさにこの映画では(これまでの西川監督の映画では?かしら)そこが見え隠れする。
そしてそういう視点を持って一つの作品を仕上げることが、すばらしきことなのでしょうね。
マイノリティってそこに意識集中するのって、私がこれまで意識的にも無意識的にもマジョリティの側に席を確保してきたからかもしれないけれど、ものすごく体力使うし、それが正しいのかスタミナが保たない(結局体力か。)。
撮影の笠松さんの画が安定感あり過ぎて、それがまたすばらしき世界というピンボケした世界で、ほんと世界ってすばらしくって美しくって、って錯覚させられて役所さんの演技に没入することができました。
最後が正直よくわからなかったんですよね。なんで監督はこういう結末にしたんだろう。誰か意味を教えてください。
#14 タイトルと真逆な世界
塀の外に出たかったのに実際出て見たら以前とは全く違う世界になっていて生きづらさを感じる主人公。
反社会勢力を世の中から排除しても、別の意味で他人を傷つける人はいなくならないし、そういう人たちは法律で縛ることもできない。
真っ直ぐな気持ちを持ちながら幼い頃に受けた心の傷のせいでまともな生き方が出来ない主人公は、一見平和で素晴らしく見える世界では生きていけないのだ。
西川監督作品はいつも社会に対する切り口が鋭いなあ。
あと役所広司さんの九州弁、もっと聞きたいなあ。
役所広司の圧倒的存在感
人生の多くの時間を反社会勢力の組織と刑務所で過ごした三上(役所広司)が刑務所を出て再出発する様を実話を参考に描いた作品。
三上が幼い頃に生き別れとなっている母を探している事を知り、面白そうだとテレビディレクターの男(仲野太賀)とプロデューサーの女(長澤まさみ)が近づき、テレビ番組を作ろうとする。
しかし、困っている人を見ると放っておけない性格で、すぐ暴力で片付けようとするためトラブルを起こしてしまう三上は・・・という話。
これも元暴力団員が刑務所から出て、なかなか社会に馴染めず、という先日観た「ヤクザと家族」の様な作品だが、組に戻ったりせず、保護司や役場の生活保護担当の人などの支援で頑張り、その姿に周りの人達も応援していく所が見所。
仲野太賀、橋爪功、梶芽衣子、六角精児、北村有紀哉ら、出演者が良かった。
それにもまして、主演、役所広司の圧倒的存在感が凄い。純真無垢な心を持ち、世間知らずの子どもみたいな主人公を熱演してて素晴らしかった。
ヤクザと家族観た後に観た
この世が〝すばらしき世界〟かどうかを決めるのはあなたです
エンディングに浮かび上がるタイトル。
『すばらしき世界』
あのラストで、そう来るのか❗️という衝撃。
勿論、解釈は受け手側の自由。
嵐の前に花を摘む障害のある青年の純朴さも事実。
その障害の為に、介護でミスが起きたのも事実。
三上が人を助けようとしたのも事実。
そのための手段が行き過ぎた暴力であったのも事実。
三上が娑婆(一般人の社会)に溶け込もうとするあまり、焦り気味であったのも事実。
ソーシャルワーカー(正式名称として正しいかどうか自信ありませんが)が制度利用にあたり、それなりの段階、手続き(時間)を踏まなければならないというのも事実。
生活保護が制度として必須なのも事実。
生活保護の受益者が社会や世間に対して胸を張れない、肩身の狭い思いをしているも事実。
反社会的勢力の構成員と見做された人が金融機関に新規の口座を作れないのも事実。
人それぞれが〝良かれ〟と思ってしていることが、思いもよらないところで、誰かをスポイルしていたり、傷付けているのも事実。
〝世間〟という視点から見れば、前科者が生きづらいのは事実。
一方で、少数派かも知れないが、偏見に惑わされずに、ひとりの人間として、受け入れようと努力している人たちがいるのも事実。
私たち一人ひとりが〝世間〟の構成員として存在しているのも事実。
身元引受人の弁護士や役所の人やスーパーの店長の側のような人間になれるか、それは自信があるかどうかではなくて、我々の覚悟のほどが一体どれほどのものなのかを問うているのだ。
と宣言されたような映画でした。
誰にでも起こりうる日本の現実、だからこそ色んな人に観てほしい
元ヤクザの物語。
でも、鬱になった私からすれば身近に感じられた話でした。
瞬間湯沸かし器みたいな性格の主人公だから。元ヤクザだから、と一言で片付けられない現実が描写されています。
もし病気や事故で、社会的な時間に空白が生まれてしまったら…社会復帰に対する現実があります。
誰にでも起こりうる現実。
この映画の中にあるセリフに
人と関係を持つことの重要さを説く言葉がありますが、本当にその通りだと感じました。
フィクションな部分はありますし、めちゃくちゃ盛り上がる!という映画ではありません。
良い描写ばかりではありません。
でも、この映画を観て良かったと思います。
人は完璧ではなく、それぞれの事情があり、色んな人がいる。
それでもお互いに優しくし合えたら…と考えさせられる映画でした。
タイトルの意味
「出所後のヤクザ」といシュチュエーションは最近観た「ヤクザと家族」と似ているが、どちらかというと、今作はヤクザというより、前科者の更生を中心に社会の不寛容さを、一方で心ある人間の善意を描いていると思う。
強がってるけど、脆さを内包した繊細な三上役を役所さんが演じると妙に説得力がありますね。脇を固める俳優陣も渋くて、確かな仕事っぷり。嫌なやつ代表のような長澤まさみが最高にいいスパイス(笑)
とにかく、みんながいい人過ぎて上手くいってるのに、観ていて破滅の予感しかしない不穏さ。そしてこんな世の中なのに「すばらしき世界」というタイトルにする西川監督はすごいと思った。タイトルバックの出し方も妙に納得してしまった。
役所広司に拍手
映画の内容は、先日観た ヤクザと家族の違う側からのですが、役所広司はじめ、太賀くん、六角さんに安田成美、北村有起哉さんはいたっては、ヤクザと家族でも熱演、しかも全く正反対の役柄やし。
その他の皆さん良かった。
やはり役所広司はすごいわ
人懐っこさもありながら
瞬間湯沸かし器の様にキレてすごみも出したり
この映画はどんな内容か全く知らなかったが役所広司の演技を観たくて。
やっぱりすごい!
満足でした。
ただ、この監督の作品。
永い言い訳も、わたしには刺さらず、今回も内容的にはそんなに、かなぁ
役所広司ありきです!
それでも大満足!
お風呂屋のシーン良かったな
人はなかなか変われないので
三上の成長はあれが限界だったのかな?
知的障害のある同僚を見て見ぬふりじゃなく、暴力を使わない解決方法を出来たら良かったのに。
実際には愛想笑いで心はパンク寸前。
もらったコスモス。
カタギの始まりで病死になるのが運命だったのかな。
コスモスを握りしめて旅立った時は幸せな人生だったと思って欲しい。
施設で泣き崩れるシーン。
お風呂のシーン
最後の号泣シーン
心を揺さぶられました。
映画を観入ったのではなく、三上に魅力されました。
今年鑑賞の映画『プペル』『ヤクザと家族』に共通するテーマ「生きづらい世の中」に偶然とは言い難い揃い踏み。
4歳で親に捨てられた少年が、親の愛情を渇望しながら安逸な生き方をしてきて、ついに前科10犯。人生の半分以上を刑務所で過ごし、出てきた時には浦島太郎になっていたわけです。
最後に刑務所に入ったのは懲役10年ほど。しかし刑務所内でも、何のかんのと問題を起こし、懲罰を喰らい、刑期が延びて延びて結局13年をムショ暮らしして出所する、そんな初老の元暴力団員を演じるのが役所広司です。
彼は左上半身にだけ入れ墨の下絵(筋彫り)を入れていますが、まだほとんど色は入っておらず、中途半端なままで放置されていて、ヤクザにすらなりきれない彼の中途半端な人生を示しています。
ただ、彼の暴力には一定の傾向がありました。
自分の正義感に反することに遭遇した瞬間、決して許せず見逃せずに、後先考えずに暴行に走る、それが彼の一貫した傾向でした。
自分を抑えることを学び、物事には何通りもの見え方があるということを教えてもらうべき幼年期に両親から捨てられてしまったことが、こんなところに深い影響を及ぼしているわけです。
ほとんどの累犯と同様、この初老の元暴力団員にも絶望的に欠けているのは人間関係でした。
だからこそ、自分を捨てた母親に一目会いたいと願い、その気持ちにつけ込んだテレビ局の取材を許してしまうのです。
冷血で嘘つきなディレクターを演じる長澤まさみの登場シーンは、実はほとんどありません。
なので彼女期待で観た人は、ちょっとガッカリするかも知れません。
演技は上手いのですけどね。
この映画の凄いところは、「マスゴミ」側だった仲野太賀が、カメラを投げ捨て、人間として目覚め、成長していく道程にあるのかも知れません。
仲野太賀はまったく一寸の緩みもなく、この役柄を見事に演じており、ほとんど主役に匹敵する活躍で、感心しました。
というわけで、ほぼ満点ペースの作品だったのですか、最後の最後で、映画監督が安易なところに逃げ込んでしまったのが、返す返すも残念でなりませんでした。
あのようなエンディングではなく、もっとキチンと、描きにくい面を、真正面から肝を据えて描き切らないと、本当に胸を打つドラマにはなれないと思うのです。
見上げてごらん夜の星を
男の背中
裸の付き合いから
人と人 ってなるよね
後半は泣けて泣けて…
なんやかんやゆうても
すばらしき世界に。。。
観た後いろいろ考えてまう なぁ、、
圧巻の役所広司やったね!(ファンになった)
エンドロール最後…
あ! 監督さん女性なんやぁー
息苦しいのなら、相手に「自分の想い」を伝える勇気を持とう♪
冒頭からすんなり映画の世界に引き込まれました。
TVディレクターの津乃田さんが、主人公三上に、
「ネグレクトにあった子どもは脳に損傷を受けている。怒りや暴力性をコントロールできない。三上さんは、お母さんと離されて、ずっと傷ついているんじゃないんですか」
と踏み込むシーンからは、涙腺がユルユルに…。
その後、自分が育った児童養護施設で、子どもたちとサッカーに興じている三上が、急に泣き崩れるシーンがありました。
彼の母親の代わりに「つらかったね、頑張ったね」と抱きしめてあげたくなりました。
この世は、とかく息苦しく、生きにくい。
「いやだな」「不当だ」と思ったときに、暴力ではなく言葉で表明できる賢さを持とう。
伝える勇気を持とう。
それによって、その場所を追い出されたら、諦めずに次の居場所を見つけよう。
空気を読んで、愛想笑いをして、自分を欺いてたら、そのストレスで死んでしまうよ。
うつむくのはやめよう。
顔を上げれば、すばらしき世界は広がっている…はず?
自分の持っているたくさんの幸せを大切にしたいと思いました。
今の世界はすばらしいか
2021年2月11日@イオンシネマ大日
公開前からあらすじを読んで気になっていたので公開初日に鑑賞しました。
NHKで西川監督を特集した番組を拝見したせいか期待値が高くなっていました。
感想は、面白かったです。ただ、少し分かりやすすぎるストーリーだったなと思いました。
すこし不満があるのは三上以外の登場人物の描き方。
津乃田はなぜ急に使命感に燃えて、三上を支援するようになったのか見えにくい。(人間の行動はいつも理由があるとは限らない、あいまいで良い加減ということなのかもしれないですが、、、)
六角精児演じる松本も同郷というだけで良い奴すぎませんか笑
長澤まさみ演じる吉澤もチョイ役すぎて、物語に必要だったのかなぁと思いました。
そして三上もなぜ死なないといけなかったのか。原作ものだから仕方ないのですが、このタイミングで死ぬのかぁと残念に思いました。
映画全体を通して、刑務所帰りの人間に対して、社会は不寛容で、生きづらい世界であることが、よく描かれていました。更生とは、言うのは簡単ですが、現実は非常に難しいです。まともな仕事に就けず再犯する確率も高い。
西川監督はそういう現実も描きたくて、2年かけて取材をされたでしょう。
下稲葉の妻が、シャバは生きづらいけども空が広い、と三上に逃げるよう説得しているシーンは刺さるものがありました。
三上が死ぬ直前にコスモスの匂いを嗅いで、なにを思ったのか。
職場でいじめられている知的障害のある同僚は社会から邪魔者扱いされる、まさに三上と同じ境遇。そんな彼を助けられないもどかしさを感じながらも、三上自身も社会に適応するため、見て見ぬふりをする。コスモスは三上の複雑な心情を表すものなのかと思いました。
学生時代に、刑事政策を学び、刑務所の見学や、出所後の方と話す機会を通じて、犯罪者の更生について考えることがありました。
今の日本社会は一度でも罪を犯した人間に対して、非常に不寛容です。統計をとれば、厳罰化を望む国民が大半です。(被害者の人権も大切であることは十分わかっています)
犯罪者は同じ人間ではないと心のどこかで線引きしてしまっているのです。
しかし、犯罪者全員を一生刑務所で飼い殺すことなどできません。出所後の人間もまともな仕事に就いて、お金を稼がないと生きていけない。
にもかかわず、感情的に厳罰化を望み、彼らを社会から除け者にすることは、更生から遠ざけ、再犯のリスクを高めるだけです。
「すばらしき世界」が指すものとはなんなのか。
映画では答えは出ません。観ている側への問いかけなのでしょう。
社会から邪魔者扱いされる者にとって、今の世界は良い社会なのでしょうか。
下稲葉を白竜が演じていたのは笑いました。あの場面だけVシネマでした笑
【"人生のレールを外れた人”も、”真っ当に生きる人”も、この不寛容な世の中は生き難い。だが、それでも”広く青い空”を見上げて、上を向いて生きていこう・・。】
◆西川美和監督の、人間を見る”冷徹な視線”と”温かい視線”のミックス具合が、絶妙な作品である。
ー人生のレールを外れた人ー
・元ヤクザ三上(役所広司)の周囲の人々、
兄弟の契りを交わしたヤクザ(白竜)とその妻(キムラ緑子)が”反社”として、追いつめられている状況描写を絡ませつつ、
この作品が、観る側に”人生の生き難さ”を訴えかけ、イロイロと考えさせられるのは、
1.真っ当に生きる市井の人々の姿
・三上を支える身元引受人の弁護士夫婦(橋爪功・梶芽衣子)
-”趣味だ”と言っていたが、殺人者の身元引受人になるのは、並半端な覚悟ではできないであろう。立派であるし、この夫婦の存在が久しぶりに世間に出てきた三上を支えて居る。夫婦から供されたすき焼きを前にして、涙する三上の姿・・。ー
・非情なジャーナリストに徹しきれない、若者(仲野太賀)
- ”非情”、冷徹”になり切れない青年を好演している。流石である。
そして、彼が三上の身上について、”純粋な思い出で”書き始める姿。三上の姿に触発され、彼自身も成長していくのである。-
・役所の真面目な三上のソーシャルワーカー(北村有起哉)
- 「ヤクザと家族 The Family」に引き続いての”抑制した”熱演である。-
・ひょんなことから知り合った、スーパーの心優しき店長(六角精児)
- 良いなあ。三上を殺人者と知りながらの、あの接し方。彼の人の良さが染み出ている温かい表情、言葉に涙する。 ”今日の三上さんは、虫のいどころが悪かったのかなあ・・” ナカナカ言えないよ。-
今作の魅力の一つは、上記の市井の人々の”日々を懸命に生きる姿””が、キチンと描かれている点であろう。
そして、その人々を演じた、役所広司を始め、仲野太賀、北村有起哉、六角精児の存在感ある見事な演技であろう。
又、非情な女性ジャーナリストを演じた、長澤まさみさんの姿は、「MOTHER マザー」を思い出させてくれた。この方は、新境地を開拓しつつあると思う。
2.三上が、母と会う情報を得るために赴いた、且つていた孤児院で、孤児たちとサッカーを楽しんだ後、泣き崩れるシーン。
- 戸籍が無くても、母は恋しい・・。-
3.三上と別れた妻(安田成美)の”決して裕福そうでない”家を訪れた時に会った聡明な女の子。三上が指折り数え、”自分の娘”ではないか、違うな・・と思うシーン。
・妻と電話で交わす話。妻の優しい言葉・・。
-苦労を掛けたな・・-
4.そして、”真っ当に生きる人々”が、三上の介護施設への就職を祝い、集まるシーンで、”ホロリとし・・”
5.知的弱者を苛める、施設員達に対する三上の態度の”西川監督の描き方”に唸らされ、
6.知的弱者の若者が、台風が近づく中切り取った、三上に渡した花束。
その花束を、”真っ当に生きる人々”から、就職祝いで送られた自転車の籠に入れ、嬉しそうに家へ向かう、三上の笑顔。
<あのインパクトある ”三上が、花束を手に横たわる画” の手のフォーカスシーン。
母に捨てられた三上の人生は、厳しく報われない人生だったのだろうか?
彼は様々な犠牲を払い、罪を償い、”青い空が広がる世界””に、自らの努力で出てきた。
そして、”厳しき毎日”を”真っ当に生きる人々”の温かさに、僅かな時間ではあったが、触れる事が出来た。そして、彼らに対して何らかの影響を与えた。
彼は、確かにこの世で、必死に生きたのだ。
私は、彼の波乱万丈な人生の最後年は、幸せな日々ではなかった・・かと、思うのである。
今作は、西川美和監督が、”人生のレールを外れた人”、”真っ当に生きる人々”を取り巻く社会の厳しさ、不寛容さと、温かさを、見事に描きだした作品であると思う。>
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