「この主人公に満ちていたのは「義侠心」。しばしば溢れだしては相手に襲いかかる、善くも悪くも熱き心の持ち主だったように感じます。」すばらしき世界 もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
この主人公に満ちていたのは「義侠心」。しばしば溢れだしては相手に襲いかかる、善くも悪くも熱き心の持ち主だったように感じます。
「ヤクザと家族」は観たのに
この作品は観てないなー、と
ふと思い立って鑑賞してきました。
この作品も多分「重い」のだろうと
予想してはいたのですが、その通り重かったです うん
そして
この作品と「ヤクザと-」では
重さの種類が違うように感じました。
たぶん
この作品では、一般社会に出てきた後の
社会復帰しようと奮闘する主人公を
「一般の社会側から」 描いていて
「ヤクザ社会の側から」 は描いていない
それがそう感じさせる一因なのかなと思いました。
で
この作品の主人公の三上さん
普通にしていれば普通の一般人です。 (に見える)
一見して「ヤクザな人」とは分かりません。
(服を脱げば彫り物は見えてしまいますが…)
そして、この三上さん
何かの拍子に 暴力スイッチがONになります。
そのときの切れ方は、まさにヤクザ… ブルブルガクガク
お近づきにはなりたくないなぁ、と正直に思います
けど
この作品を観てしばらく日数が過ぎ
このように思うに至りました。
三上さんが暴力を振るうのは
「弱い者イジメを見過ごせないため」
からだったのではないのかな …と。
(前科10犯の行為が全てそうなのかは分かりませんが…)
行動は凶悪
動機は純粋
基本的にそういう人間だったのではないでしょうか。
◇
最後の場面で
イジメを見て見ぬふりしてしまった主人公
高血圧が悪化したのか
自分の部屋で帰らぬ人となって終わります。
手に握りしめた花は
苛められていた青年から貰った花だったのでしょうか
イジメを見て見ぬふりした自分を
どれだけ責めた事だろう と
それを思うと、ただただ切なくなります。 合掌。
◇
単純に 「面白い」
といった類の作品ではありませんでしたが
「見逃さなくて良かった」
そう感じた作品です。
◇
三上という男
今の時代なら彼はいわゆる
「発達障害」 なのかもしれないなあ と思います。
我慢すること
協調すること
それが苦手 (というか、出来ない)男だったのかと。
克服しようと
必死に頑張っている姿が、脳裏から消えません。
もう一度 合掌
◇最後に
登場人物の中で一番共感できたのは
シナリオライターの津乃田クン (仲野太賀)。
三上(役所広司)が、男を助けようと
街のチンピラ二人を相手に喧嘩する場面。
義侠心から始まった(であろう)行動が
次第に狂気の色合いが深くなり
倒れた相手に鉄のハシゴを振り下ろす
何度も何度も …笑顔で
(この男はおかしい …!)
カメラでの撮影を忘れ
恐怖に駆られ全力疾走でその場から逃走
ものすごく共感…。
◇最後に その2
タイトルの意味をずっと考えているのですが
やはり 皮肉(逆説的表現)なのでしょうか…
その一点だけ 今一つ すっきりしません…
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
今晩は
私はレビューにも書いた通り、あの花束のシーンは、西川監督ならではの、シニカルな視点も盛り込みながらも「ゆれる」「永い言い訳」でも描かれているような人間性肯定及び、三上の人生は愚直であるがゆえに、拘束されたいた時間が長かったけれども、最後は周囲の人々ともキチンとした関係性を構築し、花束を握って終わるという、意味ある人生であったと解釈しました。
私は、観客に解釈を委ねる映画が好きなのですが、この映画も鑑賞後、イロイロと考えさせられましたね。
分厚いパンフレットも、まるで一冊の本を読むようで、印象深い映画でありました。