「ワンカット風長回し演出のライブ感が楽しい。」ドロステのはてで僕ら すっかんさんの映画レビュー(感想・評価)
ワンカット風長回し演出のライブ感が楽しい。
◯作品全体
ワンカット風長回し演出のライブ感を、存分に活かした作品だった。
臨場感とか主観の強調のような目的でこの演出を使う作品が多いけれど、本作はそれに加えて「ドロステ効果」との親和性が際立っていた。
ドロステ効果はイメージの中にイメージがあることを繰り返すものだ。そこには必ず連続性が存在する。イメージをカットしたり、目線を逸らしてしまえば、その連続性のインパクトは薄れてしまう。
現在と二分後の世界を分けてしまえば、イメージ①とイメージ②…というように、それぞれの時間が分けて映されてしまう。そうなってしまうと二秒後の世界とコンタクトが取れている、という作品の魅力が半減してしまう。そこで、ワンカット風の演出だ。
二分後の世界が別の世界ではなく、今映されている画面の地続きであることを強調させる演出は、ドロステ効果をさらに強化しているように感じた。
二分後という小さなSFと、それ相応にスケールの小さな登場人物たちの考えも面白かった。眼の前で起きている事象に対して、「…っていう」で説明しようとする感じとか、ヨーロッパ企画というか、上田脚本感があって楽しい。未来を巻き込む事件は起これど、結果としては人間関係が小さく動くのみ。そのささやかな世界の変化がスケールの小ささとマッチしていて、ちょうどいい。
70分程度の作品だが、だからこそライブ感とスケールの小ささがピッタリとハマる感覚がある。喉越し爽やかなSF作品だった。
◯カメラワークとか
・長回しの臨場感はあれど構図で語る場面がないから、少し物足りなさも感じる。演劇の人だから、会話劇と設定で魅せるっていう発想が先にあるのかも。
◯その他
・ラストでメグミがSF漫画トークするところは、なんというか、演出過多な芝居だったなあ。舞台で見ると違和感ないのかもしれないけど、画面越しに見てると声に抑揚ありすぎるし、身振り手振りが大きいし、なんだか酔っ払ってるみたいに見えた。興奮してるオタク、みたいな表現かもしれないけど…まぁ確かに痛々しさを感じる芝居ではあった。