劇場公開日 2020年6月5日

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「ヨーロッパ企画の超一級品、時間の魔法に酔いしれる」ドロステのはてで僕ら たいよーさん。さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ヨーロッパ企画の超一級品、時間の魔法に酔いしれる

2024年3月28日
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鑑賞方法:VOD

パリの街並みに鮮やかな世界を描くような洋画より、日本の何処かの片隅で小さくて大きな事件が起きる、こんな映画がやっぱり好き。京都と時間、上田誠氏の真骨頂と爽やかなスパイス。それが何とも快い。

5月に観た作品のレビューも溜める程に忙しくなった、社会人2ヶ月目。少し風邪を拗らせながら、本日初めて1つ結果を出せた。そんな日にはステーキとビール、そして映画。自分を褒めよう。そんな高ぶった感情に細やかなハッピーをくれた。こんな夜は2分後でも知らなくていいけどね。

なんといっても、タイムパラレルとそれを作り出す緻密な世界観。それをヨーロッパ企画の面々で繰り広げてくれるのもまた良い。本多力さんを始めとしたテレビ露出の多い方から、舞台を畑とするキャストが普遍的でありながら可笑しい世界観を巧みに引き出している。それを裏付けるメイキングをエンドロールと共に流してくれるのも良い。

2分後の未来が知れること。それが良くも悪くも作用する。てんやわんやしつつ、冷静に乗り切ろうとする主人公の誠実さが機能。キャラクターのテンションもどこか舞台を感じさせ、作品のテンションを引き上げる。そして何より、どう転ぶか分からないからこそ見えてくるメッセージのしなやかさ、これがグッとくる。

個人的に、朝倉あきさんをお招きしたことで、藤子・F・不二雄氏の作品に通ずるザ・ヒロインの振る舞いを作品に纏わせることが出来たと感じる。ドラえもんのしずかちゃんであり、巻き込まれただけのヒロインでもある。でもそれが良く映るのだから、作品の造詣がまた髄まで行き渡っていることを感じさせる。

ずーっと観ようと温めていたが、サクッと観れてグッと引き込まれる。それでいて軽やかにメッセージを突き刺してくる。本当に面白い作品とは、実は、単純だけど深いモノなのかもしれない。

たいよーさん。