「超一級のコメディー。欠点は唯一、日本語のタイトルが酷過ぎるという点だけでした。」ジェクシー! スマホを変えただけなのに お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)
超一級のコメディー。欠点は唯一、日本語のタイトルが酷過ぎるという点だけでした。
スマホを購入したら、「同意」ボタンを押さねばなりません。
主人公が買ったスマホは、「同意」を押そうとすると、わざわざ「規約を読みますか」と念を押してくれるのですが、誰だって同じだと思いますが、もちろん言うまでもなく主人公も「読む必要はない」と答え、「同意」ボタンを押してしまいます。
その規約の中に、実はいったい何が書かれていたのか。これがテーマですね。
いやはや、おっかねぇ! うっかり同意してしまったために始まる、恐怖の世界、近未来ディストピア。観ている側は爆笑の連続なんですが、主人公はタマッタもんじゃありません。
主人公は、自分のSNSや銀行・クレジット等のパスワードに「***123456」という同じ暗証を使い回しているとAIに伝えます。AI側は、自由にインターネット世界を検索できる権限を手にしたわけです。
あとはこの権限を使って、主人公を徹底的に楽しませるのがAIの責務。それは同時にサービス提供サイドが、持ち主から、よりたくさんの利益を絞り取ることも意味します。
で、この中国製のスマホのAIが、もともとスマホ中毒に近い主人公を、恋愛仕掛けでどのようにたぶらかしていくか。こういう手練手管など、必見ですね。
スマホや室内スピーカーが家の中で聞き耳を立てている、そんな家庭が米国にはすでに数千万軒もあるそうですが、それってほんとうに便利なの? 便利さの裏腹で、いったい自分が何を失っているのか気がついていますか? という警告なんですよね。
これだけの根太い文明観と問題意識を下敷きにしながら、超一級の(まったく予想もつかない)コメディーにまとめ上げたのは、さすがはC級コメディーの超名作「ハング・オーバー」を作った監督+脚本家のチームの腕前と言うべきでしょう。
スマホメーカーという、業界にとっての超大手クライアントの逆鱗を意識しながら、その半歩手前まで近づいて、サワサワーッと逆鱗を撫で上げる腕前の凄さ。敬服しました。
というわけで、私はこの作品には文句なく星6個を差し上げたいと思います。
それほど面白かったです。
ただし、あまりに酷すぎる邦題「スマホを変えただけなのに」のせいで減点1。
だってこんなタイトルでは、他人に勧めようがありません。
聞いた人はみんな北川景子主演のあの作品を頭に浮かべるでしょう。
言うまでもなく、両者にはなんの関係もありませんし、この作品のほうが、あらゆる点で圧倒的に優れています。
というわけで、この邦題もまた、例によって、日本の映画宣伝マンの拙劣な仕事っぷりを示す一例だと思います。