「この普遍的なテーマを持つ本作が今の中国で作られヒットした意味。」羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来 レントさんの映画レビュー(感想・評価)
この普遍的なテーマを持つ本作が今の中国で作られヒットした意味。
主人公の妖精シャオヘイは故郷の森を人間の開発により奪われ、自らも人間に追われる身となる。そんな彼を救った仲間の妖精たちに誘われ一時の平穏を取り戻すが、すぐさまムゲンという妖精以上の力を持つ人間の襲撃に遭い囚われの身となる。
シャオヘイは故郷を奪い、さらにようやく手に入れた仲間との平穏を奪ったムゲンたち人間を憎む。
だが強大な術を持つムゲンの前ではなすすべもなく、彼との同行を余儀なくされる。ムゲンに反発しながらも次第に彼から術の手ほどきを受けるようになるシャオヘイ。いつしか二人には奇妙な師弟関係が生まれる。そして人間や人間の町で暮らす仲間の妖精たちと触れ合ううちに人間を憎んでいたシャオヘイの中で何かが変わり始める。それは同じく人間に故郷を奪われ憎悪を抱いてるフーシーとの再会でより顕著になる。
人間を憎むのは間違っているのではないか。むしろほかの妖精たちが人間との共存を模索している。フーシー達こそ憎しみの心に囚われているのではないか。結局憎しみの心に囚われたフーシーは共存の道ではなく自滅の道を選ぶことになる。
本作のテーマは実に普遍的である。イデオロギーの違いやら宗教の違いから端を発した争いにより憎しみを増幅させた結果、今も世界中では紛争が絶えない。憎しみの連鎖を断ち切り共生を模索することこそが今の世界で求められている。
そういった普遍的なテーマを持った本作が中国で製作されヒットしたことがなんとも感慨深い。
ちなみに本作の妖精はウイグル族のような少数民族のメタファーであろうか。製作者の意図はわからないがついつい深読みしてしまう。
本作は単純な善対悪の戦いを描いてるのではなく、強いて言うならば人間の心の中の善と悪の戦いを描いてると言えるだろう。
戦いのあと、シャオヘイがムゲンに問う。フーシーは悪い人だったのと。かつて人間を憎んでいたシャオヘイにムゲンは答える。その答えはお前の中にあるだろ。
2021年1月劇場にて鑑賞。先日鑑賞した「ナタ 魔童の大暴れ」が素晴らしかったので本作を思い出して再投稿。