「共存と旅と成長と師匠と弟子と」羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
共存と旅と成長と師匠と弟子と
基は中国で2011年から配信されていたWEBアニメ。
口コミで人気に火が点き、2019年に劇場版が公開されるや、中国で大ヒット。同年日本でも中国語版で一部の劇場で公開され話題を呼び、昨2020年、日本語吹替版が製作され、ヒットを記録。理想的と言うか、面白い人気の拡がり。
尚、この劇場版は前日譚に当り、WEBアニメは現在も続いているという。
…とは言え、見始めは設定やキャラや説明ナシに進む展開にちと置いてきぼり感。
日本のTVアニメ劇場版を、TVシリーズ未見のまま見たあの感じ。
まあでも、全くの一見さんお断りではなく、それも見始めだけ。
森で楽しく平和に暮らしていた黒猫の妖精、シャオヘイ。
が、人間の自然破壊によって住む場所を奪われ、人間社会をさ迷う。
猫の姿で人間に襲われていた時、植物を操る妖精フーシーに助けられ、人里離れた彼らの島で暮らす事に。
ようやく仲間と幸せを見つけたかと思った時、人間ムゲンが現れ、捕らわれてしまう…。
一旦物語が始まると、なかなか面白いもの。一見子供向けのようだが、大人も楽しめる。
小難しかったのは、用語や設定。
まず、ムゲンのキャラ設定である“執行人”。はぐれ妖精たちを取り締まる。ちなみにムゲンは人間ながら、不思議な術や力を使い、最強の執行人。
“館”。多くの妖精たちが暮らしている。世界各地にあり。フーシーたちは暮らしていない。
“霊域”。生き物が持つ生命と能力の源。その空間内では主がなんでも支配出来る。
“領界”。その霊域を巨大化させ、空間内では何でも意のままに出来る、言わば霊域の“最強版”。限られた者しか持っていない能力のようで…。
他にもキャラそれぞれ霊域に応じて細かく能力や属性あり。
でも、いちいち説明していたら楽しめるものも楽しめない。
ここまでにして、話や感想に。
フーシーたちとの暮らしを奪い、自分を“誘拐”したムゲン。
当然何かと反発したり、何度も何度も逃げ出そうとしたり。
無表情、無口。でも、悪人ではなさそうだ。
どうやら目的は、自分を“館”に連れて行く事。
また、同じ金属を操る属性の持ち主。
よし、力を習って逃げてやる!
シャオヘイとムゲンの波乱ありまくりの旅。
アニメとは言え、中国映画。
修行シーンなんて、まさにそう。
冒険はその影響を多大に受けた初期の『ドラゴンボール』のよう。
てっきり古い時代のファンタジーかと思ったら、現代が舞台。ムゲンはスマホを持ってるし、人間たちが暮らす大都会へ。
圧倒されるシャオヘイ。
そこでは、人間たちに混じって妖精たちも暮らしている。
人間たちに正体を隠しているが、人間と妖精の共存世界。
住む場所を奪った人間を憎むシャオヘイ。
“館”の他の妖精たちと出会う。彼らの中にも、人間を嫌う者、人間を好きな者。
人間たちだって全員が悪い者たちじゃない。
いい人間だっている。妖精が思い付かない技術や発明もする。
人間と妖精は真に共存出来るのではないのか…?
ムゲンはそれはシャオヘイに見せたかったのではなかろうか…?
旅を通じて、それを見て、それに触れて、シャオヘイは…。
しかし、分からぬ者もいる。
フーシーがシャオヘイを助けに来た。
しかしその本当の目的は…。
フーシーは他人の能力を奪う事が出来る能力の持ち主。
シャオヘイは自分でも知らぬ“領界”の持ち主。
その両者の能力が合わされば、人間世界を意のままどころか、破壊すら。
人間たちへの憎悪。その理由は分からんでもない。
ショックを受けたのは、シャオヘイ。
フーシーが自分を助けてくれたのは、仲間として暮らす為ではなく、能力狙い。
彼の手に落ち、野望が始まる。
人間たちの危機。
そんな人間たちを守る為に、“館”の妖精たちが力を合わせる。
シャオヘイを助ける為、たった一人、フーシーの霊域に入っていったのは、ムゲン。
情が無いように見えたこの男だが、そうではなかった。シャオヘイと旅を続けた中で…。
各々能力を駆使しながら闘うアクション・シーンはなかなかの迫力や躍動感。
助け出し、覚醒したシャオヘイが、ムゲンと共にフーシーに立ち向かう。
フーシーは人間の傲慢を訴えるが…、選ぶのは自分。人間か、妖精か、まだ程遠いが共存か。
冒険ファンタジーを軸に、アクション、ユーモア、メッセージ性。
異なる種族同士の共存を訴えているが、本作は、シャオヘイがラストにムゲンに掛けた一言こそ全て。
「師匠!」
師匠と弟子。
二人の旅と物語は始まったばかり。