「大人だってしんどい」私の知らないわたしの素顔 おかずはるさめさんの映画レビュー(感想・評価)
大人だってしんどい
フランスの女性は若い時分には、年配の男性と付き合い『いい男』を理解する。その後、経験を積み重ねた後には、若い男性と付き合い『いい男』を理解させる。塩野七生がそのような趣旨のエッセイを書いていた。恋愛を楽しむのにこんな最適なシステムは無い。
他方、主治医のボーマン先生のように、仕事を積み重ねる過程で恋愛への情熱を失う女性もいる。若さを失うかわりに、経験が成熟へと導く。そのようにして人生は豊かになる。
ミヨー先生は恋愛を積み重ねた後に人生の伴侶を得て、そして失う。誰もが喪失の痛みを昇華できるわけではない。人生の黄昏を迎えた時に襲う無力感をこの映画は、痛々しくそして美しく描いている。
『トクサツガガガ』の仲村さんのように、アイデンティティを破壊しかねない一撃は後を引く。何かに執着することを周りの人間は否定しがちだ。この映画は、そんな責任をとらない第三者の言が人生に何ら寄与しないことを教えてくれるのだ。
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るるさんのコメント
2020年3月24日
「塩野七生がそのような趣旨のエッセイを書いていた。」と言うことですが、もし分かればそのエッセイの掲載された書籍を教えて頂けますか。彼女のエッセイとリンクするコメントに惹かれました。なるほど!と思いました。