「モヤモヤするイケメン刑事その1」シャドウプレイ 完全版 redirさんの映画レビュー(感想・評価)
モヤモヤするイケメン刑事その1
街とはいえ村として取り残された場所
人と人、人と街、人と都市、人と人、、
あとからみた小さき麦の花という映画の村も腹が立つくらい今の中国の、改革開放以降の時代に取り残された場所の物語だが、ここは目と鼻の先に欲望渦巻く都会があるのだ。ロウイエ監督作品独特の、都市、街の写し方もあるのかもだが、それにしても広州の洗村というロケ地がなんとも秀逸。
なんとなく自分はなにか、どんな存在かということが、変化や発展のスピードの中で特に中国のような特殊な政治経済、世界観のなかで訳がわからなく失いながらなにかを貪欲に得ようとしている様が全体を通底。
パンフレットによると、美男美女の登場人物のなかで一人不細工で強欲で行けてない役人を演じたチャンソンウェンは、配役決まったあと、役人を演じるのは難しいという監督や自身の懸念から役所に一カ月お仕事体験を自らアレンジしてやってきたという。監督のみならず一人一人の努力と熱情を感じる。どの役者さんも、撮影もロケ地も光の加減や音、傾き、着るもの、タバコ、小道具、細かいところまで全て完璧にこの歪んでしまった世界を描いている。ヤン刑事のお父さんの姿がこの街とかさなる。
ヤン刑事が、もちろんイケメンなのだが、なんとももやもやする行動で、これがほんとに途中からすごい気になるのだ。それがまた時代や変化を感じさせるのだが半端ないモヤモヤ感で、ヒーローとか正義とか遠のいていく感じが良い。
結局人と人はどんな場合にも、辛くても死にたくても死にたくなくても計算でも真摯でも繋がりたくなり、簡単ではない繋がりもあり、場合によってはそこに堕ちていくのだ。、
台湾のかた、香港のかた、ぞれぞれに関わり方が違い、中華圏の大団円にもっていくロウイエの企みと実力。
メーキングフィルムも凄く面白い。
しばらく時間をおいてまた見たい作品。