「変わることのない自然と束の間を生きる人々」春江水暖 しゅんこうすいだん エロくそチキンさんの映画レビュー(感想・評価)
変わることのない自然と束の間を生きる人々
これは文字通りの傑作。今年の外国映画のベストワン候補に一番乗りした。
悠々と流れる富春江、そして雄大な山々。美しい自然を山水画の如き構図で切りとった映像に目を奪われる。
そこには再開発が進み変わりゆく街・富陽があった。古い住居が取り壊され高層マンションの建築が進む。そこで暮らす四兄弟とその母、そして子供たちの生活をリアルにとらえた。
長男は飲食店を営むがやり繰りは厳しく、漁師の次男への支払いが滞っていた。
次男は結婚前の息子に家を買うため住む家を売り、妻と船上で暮らしていた。
ダウン症の息子を男手ひとつで育てる三男は、医療費を手に入れるため借金を重ねイカサマ賭博に手を染めた。
多くを語られることのない四男は所帯を持たず気ままに暮らしていた。
認知症が進む母親は長男が介護するしかなかった。
長男の一人娘には留学から帰り教師となった彼氏がいたが、両親は家を持たず収入が少ない彼との交際に反対した。
変わりゆく中国の地方都市。決して豊かではなかった。厳しい社会だった。だが決して悲劇だけではなくポジティブな空気を感じた。彼らはそこで生きていた。
何千年、何万年と変わることのない自然と束の間を生きる人間の対比。実にちっぽけで滑稽な生き様ながら負けていなかったなぁ。十分魅力的で素晴らしい人間賛歌となった。
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