羊飼いと風船のレビュー・感想・評価
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一つの無駄もない
とても見応えのある作品だった。ラストシーンも素晴らしい。
途中までは、何の映画なのか、そして、なぜ舞台がチベットなのか分からなかった。
カメラが揺れて、見づらい映画だなあとも思った。
しかし最終的には、確かに、舞台は現代のチベットでなければならないことが理解できた。
また、ストーリーだけでなく、“映像”においても伏線があった。それらがすべて回収される、一つの無駄もない緊密な作りであることに気付くのだ。
すべての登場人物に、しっかりした役割があった。
昔堅気の老人。自分の行為の意味が分かっていない無邪気な少年。種付け羊のようなワイルドな夫。
そして何より、途中まで役割が全く不明だった“尼”となった妹も、実は重要な存在意義をもっていたことが判明する。「私のように、罪に苦しまないで。」
羊の放牧と種付け。
風船とコンドームと産児制限。
性に対する“恥の文化”。
俗世と出家と救済。
生と死と“転生”。
それらすべてが絡み合って、結末に向かっていく。
人々の様々な思いを乗せて、青空に飛んでいった赤い風船のラストシーンは、心にしみた。
それはただの風船
チベットで暮らす羊飼いの家族の家庭事情と信仰心の話。
夫婦、父親、3人の子供たちに、尼である嫁の妹という家族。
ドラマも勿論あるにはあるけれど、彼等の文化や生業をみせる作品という感じる前半から中盤。
風船に纏わる話がついて回りつつ、種羊を返しに行ってから話が動いていくけれど…自分なら信じるのは構わないけど押しつけないで欲しいしと思うし、現実をみないとね。まあ、お国柄ではあるし、渦中の嫁さんもその国の人だけれど。
信仰色を強くしていってのお任せは、ほぼ投げっぱなしに感じてしまい自分にはハマらなかった。
【空が近くにある場所、何もかも身近にある場所】
洗面器の水に青空が映りこむ場面があって、とても美しい。
時々映し出される空はとても近くにあるように感じられる。
風船も何もかも吸い込むようだ。
そして、このチベットの家族には、生も死も、日々の生きるための営みも、全て僕達より身近にあるように思える。
舞台となるチベットも、近代化や中国の社会システムから逃れることは出来ない。
この映画は様々な対比を通じて、チベットの家族を見つめたものだが、現代社会の女性の生き辛さも表しているように感じる。
仏教の転生を信じる夫や家族、そして尼になった妹に対し、常に現実に向き合おうとする妻。
妻は、何も考えずに過ごせるなら、尼にだってなりたいと思ってしまう。
子羊を産めない羊を食肉加工業者に売り払い、妻に子供も産むように迫った夫。
人は羊でないのだ。
近代化や、中国の人口政策など良し悪しではなく、これらを受け入れながら、翻弄され、繰り広げられる家族の葛藤を、優しい視点で捉えた佳作だと思う。
語学の勉強が必要かな。
映画を観る時のホームである柏キネ旬シアターで。いい映画だった。圧倒的な映像美。ストーリーもテンポ良かった。土俗と宗教と時代の価値観のジレンマを表現した映画だけど、細かいところは自分でチベタンの言葉がわかればよかったなあって思う映画。ラストはちょっとハテナだったけどね。
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