「【空が近くにある場所、何もかも身近にある場所】」羊飼いと風船 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【空が近くにある場所、何もかも身近にある場所】
洗面器の水に青空が映りこむ場面があって、とても美しい。
時々映し出される空はとても近くにあるように感じられる。
風船も何もかも吸い込むようだ。
そして、このチベットの家族には、生も死も、日々の生きるための営みも、全て僕達より身近にあるように思える。
舞台となるチベットも、近代化や中国の社会システムから逃れることは出来ない。
この映画は様々な対比を通じて、チベットの家族を見つめたものだが、現代社会の女性の生き辛さも表しているように感じる。
仏教の転生を信じる夫や家族、そして尼になった妹に対し、常に現実に向き合おうとする妻。
妻は、何も考えずに過ごせるなら、尼にだってなりたいと思ってしまう。
子羊を産めない羊を食肉加工業者に売り払い、妻に子供も産むように迫った夫。
人は羊でないのだ。
近代化や、中国の人口政策など良し悪しではなく、これらを受け入れながら、翻弄され、繰り広げられる家族の葛藤を、優しい視点で捉えた佳作だと思う。
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