「想定される筋書きからコースアウトしていく疾走感と分厚いドラマに圧倒されるとことん熱いポリスアクション」スピード・スクワッド ひき逃げ専門捜査班 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
想定される筋書きからコースアウトしていく疾走感と分厚いドラマに圧倒されるとことん熱いポリスアクション
元レーサーで実業家のジェチョルと警察庁長官との贈収賄疑惑を捜査していた内務課のシヨン警部補は決定的な証拠を掴むことができず長官の圧力に屈して交通課に左遷されてしまう。配属先はひき逃げ専門捜査班という妊娠中のウ係長と若手巡査のミンジェしかいない部署。しかし早速発生したひき逃げ事件でシヨンが見たのは現場に残された物証からたちどころに犯人像を推理するミンジェの恐るべき洞察力だった。シヨンは家族のようにアットホームな職場にすぐに溶け込むが3ヶ月前に起きた未解決のひき逃げ事件にジェチョルが関与している疑いがあることを知る。
こんなツカミで一気にストーリーに引き込まれてしまうスピーディな展開。正義感が強すぎるあまり疎まれて干された女性捜査官が巨悪に立ち向かうという鉄板のプロットに友情と裏切りと家族愛をコッテリと塗りつけてド派手なカースタントをトッピングした痛快作品。ドラマがとにかく分厚いのですが、特に面白いのがブチ切れると吃音混じりの暴言を吐き散らしながら暴れ回るサイコキャラのジェチョルと、実はワケありの過去を持つミンジェの確執。想定した筋書きから少しずつコースアウトしながら事件の真相へと突き進む物語にはさらに『トラック野郎』や『トランザム7000』に添えられていたのと同じ熱量の薪がくべられ、鮮やかなクライマックスがチェッカーフラッグと共に網膜に焼き付けられました。バッタモン臭い邦題の裏でグツグツと沸騰する熱いポリスアクションを軽々と仕上げる韓流映画陣の気概に胸やけしました。
1ミリの隙もない見事なキャスティングですが、特に光っているのはイ・ソンミン。『目撃者』、『工作〜』、『KCIA〜』といった出演作での役柄と全く異なる人情味溢れる人物であるミンジェの義父を情感たっぷりに演じて強烈な印象を残します。