「アナログな心地よさ」失くした体 erimakiさんの映画レビュー(感想・評価)
アナログな心地よさ
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おしゃれでややラフな手描きのタッチ、そして近年の3Dベースのアニメに比べて「滑らか過ぎないコマ送りのような動き」が、むしろアナログな心地よさを感じられて良かった。
とは言え迫力も十二分に感じられるシーンは随所にある。切断された手が傘を持って高所から飛び降り、大通りを走り抜ける車の大軍を縫って舞うシーンは圧巻。ネオンやライトに照らされながら縦横無尽に飛び回る様は美しく、また秀逸なカメラワークも相まって思わず息を飲み、目を奪われる。
ストーリーに関しては解釈が分かれるところだが、私の印象をざっくり。
主人公ナウフェルは幼い頃に失くした両親との記憶をいつまでも忘れられない。そしてピアニストと宇宙飛行士という二つの夢にも未だ大きな未練がある。その想いは「手」のいく先々で伺い知ることができる。
そんな彼はいつもどこかぼーっとしていてふて腐れている。観ているこっちが苛立ってくる。まるで目標を掲げながらそれに向かって行動になかなか移そうとしない自分を見ているようだ。しかし全ては終局へ向けての伏線である。
彼はそれら全てをラストシーンのジャンプで断ち切った。失われた手と共に。
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