「七つめの好きなものは」水曜日が消えた つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
七つめの好きなものは
水曜日が消えたことを他の曜日が協力しながら探るミステリーかサスペンスだとばかり思っていたが全くそんな作品ではなかった。どちらかといえばハートフル系でヒューマンドラマだ。
それで何がそんなに面白いのかというと、大体のこの手の作品の場合、主人格を奪いあったりと人格同士が争うものがほとんどだが、多少争うような展開があるものの基本的には協力、共生のストーリーだったことだ。
水曜日が消えたことで水曜日の生活を覗き見することになる火曜日の僕。始めこそ倍に増えた自分の人生に歓喜するのだが次第に水曜日には水曜日の人生があり体が同一だからといって奪ってはいけないと気付く。
一時は危うかった月曜日でさえ同じ結論に達するのは、あくまで同一だった僕から枝分かれしただけの存在で元々の僕は失われていないのだから当然なのだ。
分かれてしまっても僕は僕。それぞれの人格を一人の人間として扱いつつ、根っこは同じとする、本当に全く違う人格の多重人格ものが発現ならば、あくまで分裂なのだ。この辺りがちょいと斬新で面白い。
主人公の火曜日は好きなこともなく退屈だと日々感じているのだがそれはなぜかというと、事故の前の僕が持っている箱の中身からもわかるように元々好きだった6つのものが分かれてそれぞれの曜日になっていて、火曜日には何も残らなかったからなのだ。音楽、釣り、植物、絵、あとは運動とゲームかな?
それが事故の前の記憶を取り戻すことで七つめの好きなものを思い出すこととなり退屈な日々から抜け出す。
最後の七つめとはもちろん一ノ瀬のことで、一ノ瀬と火曜日の僕が自分の気持ちに気付き一歩踏み出すロマンス作品だったともいえる。
趣味になるようなことではなく感情が残った火曜日がやっぱり主人格なんだろうな。面倒ごとを押し付けられるのは主人格ゆえか。
それぞれがそれぞれを個として認め尊重し合うラスト、格段に増えた付箋の数がそれを雄弁に語っていて、不便でも明るい未来があるようで良かった。
あとちょっと気になったので付け足すと、何度か出てくる事故の日のフラッシュバックは、壊れたサイドミラーに映る鳥が僕を表していて、最初は七つに、次に六つ、二つ、一つ、最後に七つと、分かれた人格の数を教えてくれている。
なので、ああ6つになったなとか、え?2つ!?とか、一つになっちまったとか、驚きポンイトで面白ポンイトでもある。
意味なく何度も使われているわけではない。