「命の伝承」もち 森のエテコウさんの映画レビュー(感想・評価)
命の伝承
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活字に例えると、小説やルポルタージュとも違う、一篇の詩のような作品。
60分という小作ではあるが、映像と台詞の間に間に、悠久の時を感じ、想いがめぐる。
正月や彼岸のようなハレの日に食される事が多い「もち」
全国どこでも食されている物が持つ意味と価値が、現在まで、組織的に伝承保存されている事に驚きを覚えた。
意識的に伝承しようとしなければ、その文化的意味と価値は忘れ去られ、「もち」は単なる食べ物の一つになっていくのだろう。
同じような事が、映像の中では「踊り」についても語られている。
一説によれば踊り念仏に起源を持つとされる東北地方の鹿踊りや伝統舞踊も、伝えよう、受け継ごうという意志がなければ、形さえも消えてゆく。
廃校を間近にし、卒業を迎える4名の中学生が中心となって、文化祭に向けて「踊り」を継承せんとし、授業で「もち」のしきたりを学ぶ。
一関は平安時代に藤原三代が栄華を極めた平泉に接し、旧仙台藩の北部に当たる。そこに今も残る豊かな餠文化を捉えたこの作品は、商業映画とは一線を画す文化的意味を感じる映像だ。
「餅つき」を男女の営みになぞらえる翁の話を聴いていると、この作品は「もち」や「踊り」を通して命の伝承について語っているのだと思えてくる。
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