もちのレビュー・感想・評価
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ストーリーはフィクションであるがそこに映る気持ちはノンフィクション
主人公の卒業とともに閉校になる本寺中学校の一年間を追ったドキュメンタリーであり、そこに暮らす人々の話からストーリーが生まれ制作された映画で
キャスティングもそこに住む方たちなので暮らしの情景がありありとあった。
主人公の友人宅で夕飯を囲むシーンは帰省した実家感がすごくて
家族を感じるとても良い食卓シーンだった。
お婆さんが嫁いできた時の餅つきは祝の儀式・風習的なものもあったのかもしれないけど
別れの時も餅をつきたかったのはお婆さんへの感謝そのもののように思えた。
文化祭から卒業式にかけての過ぎ行き日々と卒業を迎える生徒に言葉を添える先生のシーンは
胸を締めつけるものがあった。
全員役者経験無しであるが、それが良かったというものがあり、
そう演出し導いた監督の手腕はすごいものだった。
観た後に自分の故郷と家族に会いたくなる映画でした。
「なぜ?」は、あるけど素敵な映画
「雪」「餅つき」「少女」という、この透明感あふれる写真が気になっていて、タイミングが合えば観にいこうと思っていました。
僕が映画館での映画鑑賞を好きな理由は、”映像”や”音”の「エンタメ的刺激」を享受できるからだけではなく、自宅で観ようとしたら最後まで辿り着かない映画であっても、映画館の椅子に拘束されることでエンドロールまで観ることができる”強制性”があるからもあります。
どんな映画にも乗り越えなければならない、没入できないや、中だるみなどあることが多いけど、最後まで観ることができて本当に良かったということは多いですよね。
さて「もち」はどうたったか?
映画館でなければ最後までは辿り着かなかった系映画です。そして最後まで辿り着いたおかげで「ザワザワ」しました!
否定的な意味ではなくで観終わったあと「???」だったのです。
60分という短尺ドキュメンタリーっぽく製作されているのに、岩手県の自然奥深い場所で生活する地元の方々による、「演技」が唐突に始まるのです。
田舎の日常を自然に撮影しているだけなのだと気を許していると、何かへんな演技が始まるのですが、それも悪い印象がないのがとても不思議です。ストーリーはあるようで無いというか、無いようであるというか、全く言語化するのが難しい。
日頃たくさんの映画を観ているので、変化球には慣れているつもりですが、一言で言い表すのが難しいタイプの映画でした。悪い映画では無いですよ。
鑑賞後、監督「小松真弓」さんのインタビュー記事を拝見し、本作の製作意図やエピソードなど拝見し、かなりまじめに攻めている映画なのだと感じました。このインタビュー記事を拝見してから鑑賞していたら、また少し違った印象になったかもしれません。
上映館は少ないですが、少し癒されたいと思う方は「割引デー」などに広い心で鑑賞してください。
命の伝承
活字に例えると、小説やルポルタージュとも違う、一篇の詩のような作品。
60分という小作ではあるが、映像と台詞の間に間に、悠久の時を感じ、想いがめぐる。
正月や彼岸のようなハレの日に食される事が多い「もち」
全国どこでも食されている物が持つ意味と価値が、現在まで、組織的に伝承保存されている事に驚きを覚えた。
意識的に伝承しようとしなければ、その文化的意味と価値は忘れ去られ、「もち」は単なる食べ物の一つになっていくのだろう。
同じような事が、映像の中では「踊り」についても語られている。
一説によれば踊り念仏に起源を持つとされる東北地方の鹿踊りや伝統舞踊も、伝えよう、受け継ごうという意志がなければ、形さえも消えてゆく。
廃校を間近にし、卒業を迎える4名の中学生が中心となって、文化祭に向けて「踊り」を継承せんとし、授業で「もち」のしきたりを学ぶ。
一関は平安時代に藤原三代が栄華を極めた平泉に接し、旧仙台藩の北部に当たる。そこに今も残る豊かな餠文化を捉えたこの作品は、商業映画とは一線を画す文化的意味を感じる映像だ。
「餅つき」を男女の営みになぞらえる翁の話を聴いていると、この作品は「もち」や「踊り」を通して命の伝承について語っているのだと思えてくる。
文化も想いもこうして伝わっていく
子供の頃に学校行事で「何でこんなことをやるんだ?」と思ったことはないだろうか?だが、故郷を離れてみるとそれがその土地独自の風習であることに驚かされることがしばしばある。本作の舞台は岩手県の一関市にある小さな集落。そこに残る“餅文化"を通じて交わる人間模様をその地に住む14歳の女の子・ユナの目線でドキュメンタリー調に綴っていく。
祖母の葬儀のシーンから始まる本作には2つの死の意味が込められている。一つは家族の死、もうひとつは文化の死だ。市町村合併、少子高齢化、そして過疎化などで消えてしまった文化も多いだろう。文化が消えるということは、その土地の死を意味することと等しい。家族の死も同様だ。誰かに恋をし、家庭を築き、家族を残さなければ次世代へ自分の想いは残らない。文化も家族もどちらも人がいてこそ伝わっていくことを優しく観客に教えてくれるのである。
子や孫に幸せに育ち、穏やかな家庭を築いてもらいたいというのは普遍的な価値観であり、地域の文化や想いを残したいというのはその地で終を迎える者の願いであろう。だが、過疎化や少子高齢化が進む地域ではそれさえも難しい。それでも本作に登場する大人たちは決してその気持ちを押し付けがましくは伝えない。故郷の文化やそこに生きた人たちの想いはやがて忘れられていくかもしれないと思いつつも、日常を通じて、その土地に生まれ育った子供たちへ自分たちの文化を伝えていく。祖父との会話、閉校を迎える学校での先生の姿は印象深い。
その想いが子供たちに正しく伝わるのかは分からないし、餅文化の学習のシーンで足が痺れてしまい学習どころでない生徒がいるのも微笑ましい。だが、物語の後半でユナは餅をあることのために使う。それは彼女の人生において一大イベントであると同時に彼女が餅文化を自然に継承したのだと感じさせてくれる。彼女もその土地で大人になり、やがて家庭を築くのだろうか?少しだけ大人になったユナが自転車を漕ぎだすラストシーンにはどこか前向きな力強さが感じられる。文化も想いもこうして伝わっていくのだ。
よく分からなかった。
「もち」のタイトルに誘われて、この映画を見ましたが何を表現したいのかわかりませんでした。
東北の厳しい冬の中で暮らす、家族と自然の詩情豊かな生活、おじいさんの人生に餅つきをからめているのか、あるいは女の子のちょっとした恋心を映画にしたいのだかわかりませんが、内容を盛り込みすぎです。
その結果、映画全体がボケているように感じました。おじいさんがもちをついている時に
幽玄な別の世界に入っているような映像が欲しかったです。
(雪の中で、女の子がもちをつくおじいさんの横で半裸もしくは死んだはずのおばあさんが少女に生まれ変わって舞い踊っているようなシーンはどうでしょうか?)
・・・それから、餅つきのやり方が雑すぎます。餅を搗く前に、まず杵でこねます。そして
女の子の合いの手が映画ではただ餅の上に乗せているだけに見えます。「もち」の映画なんですからしっかりと餅をかえして(少しずつひっくり返す)ください。
餅をつく音も変です。(建設現場の音みたいです。) ぺったん、ぺったんとやさしい音を聞きたいものです。
なんでおばあちゃんのお葬式の時に、あんなに餅搗きたいって言ったの?
ドキュメンタリによせたフィクション。時折見せるユナの大人びた表情がとてもいい。
現代においてどの地方に行っても希薄になっていく地域性を、ここでは「餅」がつないでいる。その粘りのイメージが地域の密着度を連想するし、白は(ユナの肌の色も)純朴さを連想させる。だけど実際はそうでもないのだろう。落ちた橋が、まさにその暗示。過去と現在、都会と鄙は隔絶しているのが現実だ。これはね、しょうがないのだよ。交通機関が発達し、食糧の日持ちもすすみ、通信手段も距離を弊害としなくなって生活圏が拡大した現代、鄙は取り残されていく運命なのだ。人はそうやって手にした文明と引き換えに、先祖伝来受け継いできた文化、アイデンティティを捨てている。そのことに今を生きている幾人の人が理解しているのだろう。残念ながら、この映像のなかの風景も消えていくものだ。それをこうして”記録”することは、かけがえのないこと。まるで戦前全国をくまなく歩いて記録をとどめた宮本常一の功績と同類。
冒頭の餅搗きのシーンで、ぐっとくる。しかし、この映画は現在(現状)は描いていたが、過去(伝承)の描写がなく、この地域にとってどれほど餅食文化が受け継がれてきたのかは、よそ者にはちょっと感じきれなかった。60分は短かった。
リアルな人間模様に魅せられました。
岩手地方の素敵な風習・日常・人間模様が、大事に大事に記録されたドキュメント映像と、それを生かした絶妙な脚色が素晴らしかったです!
主人公ユナやお爺さんの表情や喋り方がリアルでいい。その辺の役者さんの演技より全然素晴らしい。ブエナビスタソシアルクラブのお爺ちゃんミュージシャン達を思い出しました。
もち
いわゆる映画の様な徹底した演出を省き、ある一人の目線でその場の出来事をそっと見守る様に描いたリアリティのあるファンタジー作品。人の感情や想い、場所のにおいや空気がすーっと体に入ってきます。現場にショートトリップした感覚を味わえました。
感受性豊かな映像
とても良かったです。
本当に、実録のような、フィクションのような。決して、俳優では演技できないシーン満載でした❗️あのユナちゃんは、すごい原石発見ですね。他の出演者も感受性豊かで感動しました。
おじいちゃんとユナのシーンはなんとも言えない、素晴らしい映像でした。
あと、とても微笑ましいシーンは、みんなで横一で待っていたバス停のところ。トトロのシーンを思い出しました。
この「もち」が、もっと多くの人に観てもらいたいですね。
美しい自然の中で輝く14歳の少女。清々しい気持ちになれる映画。
気がつくと、映画の中に自分がいるような気がした。
まるで空気になってしまったような感覚。
カメラワークがとても自然で
フィクションとノンフィクションの間が
曖昧になり、見事に引きずり込まれた。
白い世界。餅、雪、おじいちゃんの白髪。
おじいちゃんとユナが餅つきをしている
シーンが美しい。
夏の緑、秋の紅葉、
季節の移ろいの中でストーリーは進んでいき、
私は自分の10代の頃とユナを重ね合わせていた。
「忘れたくない
思い出せない」
どんなことだっけ?
閉校してしまう母校
親友の引っ越し
初恋の歯痒さ
担任の先生の涙、
ユナが直面する現実に
共感したり、やるせない気持ちを
行ったり来たりした。
キャストは全て演技経験がない土地の人。
ときおり、台詞を話しているのかな、という場面もあったが
ほとんどが、無理なく自然なので驚いた。
これも映画に引きずり込まれた理由のひとつだと思う。
映画を観終わった後は、清々しい気持ちになった。
自分がユナと同じくらいの頃、
どんなことを感じていたのか思い出そうとしていた。
全国には、本寺地区みたいな
伝統などの存続危機を抱えているところは
結構多いと思う。
本寺地区は、幸運にも小松監督と出会い
映画にして残すことができた。
この映画が支えとなって
文化や伝統が継承されていくことを願います。
「溜息をつくと幸せが逃げる」←迷信←(^_^;)
2020年映画館鑑賞39作品目
岩手県と宮城県の県境に住んでいる者としては内容はなんであれ地元の作品は映画館で観ないわけにはいかない
楽しみにしていたのにコロナの影響で延期になりヤキモキしていた
一関市は一関市でも本寺地区は一関中心部からかなり遠く離れている
行ったことは一度もない
むしろ近隣の市や町の方があっという間に辿り着く
原爆ドームじゃあるまいし旧祭畤大橋なんてさっさと撤去すれば良いのに今も保存している
映画館で映画を鑑賞することは休日の恒例でありもはや日常ではあるがその日常のなかの小さな非日常である
だからこそ僕は映画に非日常を求める
だがこの作品は極めて日常である
しかも有名な俳優は誰一人出てこない
評価が難しい
作品としては悪くない
だけど僕的には当たり前で平凡な内容だ
一関からかなり遠く離れた他地域の人が観れば感想も違ってくるのかな
スーパーで年がら年中調理された餅がパック詰めされて売っているのはどうやらこの地域だけらしいし
東京ではミニシアター系でひっそりと上映され上から目線の教養が高い人が観るんだろう
岩手の恥東北の恥になるような作品ではない
胸を張って薦めたい
だけど星4とか5は気が引けるので謙虚に星3
インディーズみたいだがマガジンハウスとか絡んでいるのでメジャーなんだろう
ドキュメンタリーみたいだがフィクション
無名なのか素人なのかわからないが素人だとしたら皆さんうまい
演技指導の賜物なのか小松真弓監督は有能
当初は「小野真弓が映画を撮るの!?」と勘違いしたが小松真弓である
ヒロインのユナを演じる佐藤由奈はいまどき珍しいニキビづら
どんなにいけてない中高生男子でもお肌はツルツルできめ細やかであまりの若さに眩しいのが普通なのに
自分らの世代の中高生だ
それがかえって僕にとってはリアルで生々しい
演技なのか演技じゃないのか表情はとても自然だ
餅を二つ並べてオッパイに見立てるなんて平均的な小学生男子っていつの時代も馬鹿
卒業生はたった4人
最後は甘酸っぱい展開
たった60分
ちょっと物足りない
腹八分目で逆に良いかも
見落としたのかもしれないがエビ餅が登場しなかったのが残念だ
東京や大阪の人が初め見たらギョッとするかもしれない
それなりによく噛むのだがそれでも喉越しが悪い
あと「溜息をつくと幸せが逃げる」とおじいちゃんが言ってたけどそれを迷信と切って捨てるのは違うと思う
科学的じゃない!医学的にはむしろ溜息はどんどんした方がいい!
このての言い回しはそういうことではない
疲れた夜にぜひスクリーンで観て欲しい映画
最近、自分の手で、足で、土の感触や川の流れ、紅葉特有の匂いを味わってないなと思う方
最近、大好きだったお爺ちゃんの、あの頃の元気な声も思い出せなくなってきたなと思う方
最近、車の音や音楽、テレビの音ばかりで、自然の音色に耳を傾けてないなと思う方
最近、暑い寒いだけで「四季」を暮らしと重ね合わせられていないなと思う方
最近、家族との食事で笑顔や会話、話の踏み込み方が足りていないなと思う方
そして、映画が大好きな方。この作品こそ、ぜひ劇場のスクリーンで一度観て下さい。
僕もどこかでもう一度必ず観に行きます。疲れた夜にちょうど良いと思うのです。
採点は「4.5」。※0.5減点理由は個人的に「もっとゆっくり観たい」シーンがあったから。
なんだか宝物のような時間
日本人でよかった。と純粋に思えた映画。
別に、共通点が沢山あるわけではない。
田舎もそれほど東京から離れていないし
中学が閉校になったわけでもない。
昔から伝わる踊りがあったわけでも無い場所で
育った私でも何故か懐かしさを感じた。
祖父が生きていれば
逢いに行きたくなる映画。
コロナとか、豪雨とか
普通に暮らしていた生活か
本当は全く普通じゃなくて奇跡の上で成り立っているんだなぁと感じた。
こんな時だからこそ、しっとりと観たい。
そして、この映画を観て良かった。と思えた自分になんだかホッとした。
文化の継承
岩手県一関を舞台に、卒業と同時に閉校となる中学校に通う少女の日常と、そこに関わって来る文化や伝統をみせる話。
時代や状況の変化の中で壊れたり無くなったり薄れていくものと、変わらないものや受け継いでいきたいものや守っていきたいという思いを対比してみせている。
自分はドライなので、そこに掛ける祈りや思いなんかは実際にはどうでも良くて、文化として残し、元々そこにはこういう思いがあったんだよというだけで充分かなと。
一応ちょっと寂しかったり甘酸っぱかったりなストーリーもあるにはあるけれど、そこに大きなウエイトはないし、響く程のものはなかったかな。
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