「中年世代の魂を癒すヒーリングムービー」ソウルフル・ワールド 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
中年世代の魂を癒すヒーリングムービー
人には生まれながらに与えられた使命がある。人生に於いて目的を達成することは素晴らしい。人生とは目的探しの旅だ。。。。。そんな風に描き尽くされてきた人生に関する考察(または意味付け)を一旦リセットし、そもそも、目的を達成できなくても、目的そのものを持ちえなくても、平凡な日常に感謝し、身を委ねることこそが、生きるという行為なのだ。と、ピクサーの最新アニメは我々に問いかける。長いハリウッド映画の歴史でこのような提案は実写でも珍しいと思う。ある日突然、マンホールから落っこった先にある、この世に生まれる以前のソウル(魂)の世界へ飛んでしまったしがないジャズピアニストの体験談は、瞬間瞬間が示唆に富み、同時に大胆な空間転換で楽しませる。死にたくないともがく主人公と、彼がソウルの世界で出会う、逆に生まれたいとも思ってない22番との冒険が、やがて、互いの中に欠けていたものを発見することになるバディムービーの形式を借りて。ビジュアル的には、深い色彩に溢れる現世ニューヨークの風景と、徹底して無機質かつミニマムを追求したソウル界の対比が明確だ。これは、いい歳をしていまだ人生に目的を見出そうとする、若い世代にとってはけっこう傍迷惑な、迷える中年世代の魂を癒すヒーリングムービーだと、筆者は解釈した。正義、友情、女性の自立、死生観、感情の視覚化と来て、ディズニー&ピクサーは遂にこんな領域に侵入したのである。で、次は何?
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