「穏やかだが、どこか死の気配を感じさせる世界観に引き込まれる一作」Away yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
穏やかだが、どこか死の気配を感じさせる世界観に引き込まれる一作
第97回アカデミー賞において長編アニメーション賞を受賞した『Flow』(2024)の監督、ギンツ・ジルバロディス監督が2019年に発表した作品。
本作は単体でも十分映像作品として感銘を受けることは間違いないのですが、現行ではジルバロディス監督の作品はこの二作しか鑑賞できないことを踏まえると、『Flow』の予習としても、または鑑賞後にさらにジルバロディス監督の世界観を理解する上でも、大変貴重な作品といえます。
ほとんど台詞がない作劇、ファンタジックかつ不思議な美しさに満ちた世界観など、本作からは様々なアニメーション作品の影響を見出すことができるんだけど、監督が意識しているかどうかは別にして、『風ノ旅人』や『Sky』といったアドベンチャーゲームも想起させるものがあります。
ふとしたことで世界に迷い込んできた主人公が様々な手がかりを解き明かして(インタラクトして)世界の謎の一端に触れていく、という物語の筋立てなど、類似点はさまざまに挙げることができますが、どこか「死」の雰囲気を漂わせている点に、とりわけ強い共通項を感じました。
これだけ確立した世界観とそれを表現する確固たる技術に裏付けされた映像を、ほぼ単独で作り上げた手腕には驚かざるを得ません。本作の経験があったからこそ、『Flow』につながっていったことを強く実感させてくれる一作です!
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