「単なるサイコパスだったというだけ?」テッド・バンディ もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
単なるサイコパスだったというだけ?
演出は淀みがなくラストまで緊張感を保って引っ張っていく。出演者も皆好演。一個の映画としては上手く出来ていると思う。しかしデッド・バンティの人生・事件をなぞっているだけという印象が拭い去れない。デッド・バンティの内面が描かれていない、というか描こうという姿勢が余り感じ取れない。勿論、「サイコパスの内面なんて描けない、私達とは違うし、共感など出来ない」という声もあるだろう。しかし、単なる精神病質者としてモンスターとして描くだけで良いのだろうか。100人に一人はサイコパスだと言われている(もちろん皆が皆殺人者というわけではない)。しかもそういう人ほど外面は善き市民、善き社会人として振る舞っているという。逆に人より魅力的だったり良い人と思われているかも知れない(残虐な事件の犯人について、回りの人が「何であの人が」「良いお父さん/あ母さんだと思っていたのに」とかよく言われるのはそういうことだろう)。また、皮肉なことにテッドを追い詰めていく検察・警察にサイコパスは多いともいう。そう、自分たちの回りにいるかも知れないのだ。そういう怖さ(映画では最後のテロップの一行で示されるだけ)を描いたり、サイコパスといった精神的疾患(欠損?)を持って生まれてきた人間の内面(テッドには実際に罪悪感すらなかったかも知れない)に迫ろうという姿勢があればもっと奥深い映画になっただろうと思う。ザック・エプロンは熱演だが、汚れ役として演ずるのではなく、いつものハンサムな好青年路線で行った方がより効果的だったかも。追記:リリー・コリンズがフィル・コリンズの娘だとは!