「テーマの割に核心がなかなか見えないのがモヤモヤ」はるヲうるひと たいよーさん。さんの映画レビュー(感想・評価)
テーマの割に核心がなかなか見えないのがモヤモヤ
テーマの割にはトーンがイマイチ分からず、明るくも暗くも見えないのが残念だった。ただ、舞台が原作だけあってか複数人が立ち回るシーンのハマり具合は引き立っていたと思う。
あの佐藤二朗さんが監督・脚本となれば、福田雄一監督のせいなのかコメディで行きそうな感じがしてしまう。だが、彼が描いたのは売春宿という暗部。その時点でシリアスな雰囲気とおぞましい感覚が滲み出ているのだが、どうもそれがしっくり来ない。会話劇としてもパンチに欠けているし、個々のキャラクターの痛みが画一的に写る。たぶんそれは、元締めを演じる佐藤二朗さんが統治しているからこそであり、駒のままなんだと感じさせるからである。
一方で、彼がいない所、つまり性交前後のシーンになると、パッと色が付く。人間味が溢れ、救いを感じさせる。それが作品にプラスになっているかは微妙な所だが、生き様を感じさせる点においては良かった。ただ、所詮それも束の間となってしまうからこそ、作品のどこに何を感じたいのか見失ってしまった。
主演は山田孝之さん。他の作品が濃いからかあまりパンチは来なかった。仲里依紗さんも良い味は出してたけど、作品自体のギアにはなっていなかったような気がする。駒林怜さんや笹野鈴々音さんといったキャストの躍動が凄く印象的で、エネルギッシュな雰囲気を作っていたなと感じた。
原発に踏み込むのも弱かったし、全体的にボヤッとしていたのが惜しい。にしても劇団ではこんな重苦しい作風を作っているとは。ある意味こちらが本当に描きたい、見せたいモノなのかもと思った。
コメントする