劇場公開日 2021年6月4日

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「“まっとう”とは市町村合併する前の白山市。ちなみに今でも松任駅。」はるヲうるひと kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0“まっとう”とは市町村合併する前の白山市。ちなみに今でも松任駅。

2021年6月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 “嘘”という漢字は虚ろな口・・・などと漢字の成り立ちを語る癖は『肉子ちゃん』にも通ずるものがあった。違いは肉子ちゃんは明るく、哲雄は怖い・・・まぁ、普段の彼の演技を知ってるからかもしれないが。

 最初にタコの映像が出てくるけど、これをビニール袋に入れた様子はまるで得太が哲雄から逃げ出せないでいるメタファーなのだと思わせる序盤。パシリの得太とイブキ。兄妹でなぜ逃げ出せない?などと考えながら見ていたけど、相当なトラウマを抱え続けてきた得太と病弱な妹じゃ無理があったんだろう。

 ストーリーは陰鬱でしょっぱいハナクソのようなものかもしれないが、山田孝之の演技力が凄すぎて、他の誰もがそれを超えられないほどだった。坂井真紀だって凄い演技なのだが、彼には敵わなかった。そうした個性的な面々が佐藤二朗から逃れられない鳥籠の鳥。そして、個性的な売春婦たち。

 そんな中でも客の一人、薬局店主に搾取されているミャンマー人男性がひときわ目立っていた。「愛のあるセックス」を求めていた童貞くんだったのに、リリーという小柄な女性に恋するようになる様子が笑いとともに描かれていました。塗り薬のネタや、キスするときに何故目を開けているのか?ということが伏線として生かされていたことにほっこりさせられます。

 原発反対運動なんてのが余計なサブストーリー。誰も真剣に反対していないところが痛すぎた。でも彼女たちだけは嫌がっていたよね。

 洋邦問わず古くからある売春宿物語。ほとんどが女性たちが蔑まれても、たくましく強かに生きていく姿を描いているけど、この作品も違わず生きる希望を見いだせるものでした。また、差別や貧困といったテーマとともに最後には同性愛の問題まで提起するなんてのはちょっと詰め込み過ぎ感もあったけど、佐藤二朗の熱量を感じられる作風には驚かされる。今後もクリエイター側としての彼に期待します。

kossy
カールⅢ世さんのコメント
2021年6月17日

たこめしはうまそうでした。ここのところ坂井真紀の出演映画がすごく多い。若い時よりきれいな印象。演技もすごい。遅咲きの名バイプレイヤーを堪能させてもらっています。山田孝之は熱演でしたが、なんだかお気の毒でした。

カールⅢ世