「TCが広く認知されて、多くの人が自分の感情を取り戻して欲しい。」プリズン・サークル スー(ジェーンじゃない方)さんの映画レビュー(感想・評価)
TCが広く認知されて、多くの人が自分の感情を取り戻して欲しい。
クリックして本文を読む
2回目の鑑賞。
両親からの愛情を受けられず、いわゆる虐待やネグレクトを経験した子どもたちは、自分の感覚や感情を麻痺させることで、どうにか生き延びてきた。
しかしその代償は大きく、「自分の感情がわからない」という。それは、つまり他者の気持ちも理解しにくいということであり、その結果として非合法な加害行為に至ってしまうことがある。
この映画では、収監された服役囚たちが、辛かった幼少期の感情と向き合い、自らの感情を取り戻していく姿が描かれる。そのプロセスの中で、自分自身の心情と向き合い、同時に被害者の気持ちを想像し、振り返っていく。
4万人以上の受刑者のうち、TC(Therapeutic Community=回復共同体)というプログラムを受けられたのは、わずか約40人。これは本当に恵まれた機会である。
たまたま虐待やネグレクトのある家庭に生まれ、生き延びるために必死にもがいてきた。そんな過酷な状況下で、犯罪に至ってしまったことは決して許されるものではないが、同じ環境に置かれて、自分や他者を傷つけずに生きられる人が、一体どれほどいるだろうかと考えさせられる。
なお、冒頭およびその後2〜3回にわたって登場する、服役囚の一人が紡ぐ架空の物語は、彼自身の過去をなぞるような形で展開され、実に豊かな想像力と創造性を感じさせる語りであった。
決して、他人事とは思えないし、広くTCの手法が広まって欲しいと願って止まない。
この企画を考え、実行した監督やスタッフに、敬意を評したい。もっと多くの人に鑑賞して欲しい作品。
コメントする